JAにしうわ、ふらの、おきなわが連携する繁忙期の人材確保方法とは?

農家数が減り続ける中、より深刻と言えるかもしれないのが、繁忙期の助っ人不足だ。特に収穫期に人を集められるかどうかは、農家にとっても産地にとっても死活問題である。

JAも各地で人材派遣の仕組みを構築。愛媛のJAにしうわは、北海道のJAふらの、沖縄のJAおきなわと連携し、列島を跨いだ広域連携をしている。

愛媛県のJAにしうわ(本所・八幡浜市)は同県産温州ミカンの過半を生産する一大産地だ。日の丸、真穴(まあな)、川上という三つの地域ブランドは、全国のみかんのプライスリーダーにもなっている。

しかし、管内の高齢化は深刻で、60代と70代の農家が7割を超える。2006年に約2950戸あったJAに出荷する農家は、2019年は約2100戸まで減った。

JAにしうわの管内は傾斜地が多い。日射量が多く柑橘栽培に適している


全国から「みかんアルバイター」募集

農家の減少以上に深刻といえるかもしれないのが、繁忙期の人手不足だ。収穫は手作業で行う。そのため、かつては周辺地域から、親戚や知人をはじめとした労働力をかき集め、収穫期を乗り切ってきた。

ところが、過疎と高齢化で「地元ではアルバイトが集まらなくなった」と農家支援課の大杉充さんは言う。そこで、関東や関西をはじめとする全国からのアルバイト「みかんアルバイター」の募集に力を入れてきた。

JAにしうわ農家支援課の大杉充さん

はじまりは1994年にさかのぼる。真穴みかんで知られる真穴地区で、アルバイトをJAの職員が事務局になって全国から募集した。農家宅でホームステイで受け入れ、初年度は32人が集まった。

その後、順調に増え、2019年度は352人に達する。農業の求人情報サイトでの掲載に加え、連携先のJAからの紹介があり(これについては後ほど説明する)、真穴の成功例を水平展開する形で、管内の他地域でもアルバイトの募集を始めており、2019年度、最終的に管内に集まったアルバイトは381人だ。


ホームステイから専用の宿泊施設、シェアハウスまで受け皿整備

「5、6割はリピーター。リピーターには、決まった農家のところでホームステイする人が多いですね」

何年も通い続け、農家にとってなくてはならないパートナーになっているアルバイトも多い。また、リピーターが新しいアルバイトを呼んでくれることも少なくない。アルバイトの働く農家には、労災保険に加入してもらい、万が一のケガや病気に備える。

農家のホームステイだけでは受け入れきれない人数になったため、2015年に八幡浜市が廃校を改修して宿泊・合宿施設「マンダリン」を整備した。ここは、JAで管理・運営する。それでも足りず、各地域でシェアハウスとして使える物件を、空き家も活用しながら用意している。

八幡浜市が整備し、JAが管理・運営する宿泊施設「マンダリン」

のぼりに書かれた「西宇和みかん支援隊」は、農繁期の労働力確保と担い手の確保・育成・定着を目的に、関係機関が連携してつくった組織。JAにしうわのほか、愛媛県南予地方局八幡浜支局、八幡浜市、西予市、伊方町、八幡浜市農業委員会、西予市農業委員会、伊方町農業委員会で構成する。


JAふらの&おきなわと連携し、年間通して働き手を確保

都市部から人を呼ぶ産地は珍しくない。そんな中、JAにしうわが特別なのは、JAふらの(本所・北海道富良野市)、JAおきなわ(本所・那覇市)とアルバイトの安定的な確保のために広域連携をしたことだ。

三地域では農繁期が異なる。JAふらのは4~10月に園芸作物の定植や収穫、JAにしうわは11、12月に柑橘の収穫、JAおきなわは12~3月にサトウキビの収穫や製糖工場の稼働という具合だ。

三つの地域を回れば、切れ目なく働けることに着目した。他のJAに勧誘に行ったり、アルバイトに次の働き先として他のJAを紹介したりしている。

2019年度は、管内で受け入れた人数(381人)に働いた日を掛けると、1万5160人役にもなる。2つのJAから紹介を受けてやってきたのは43人で、ミカンの収穫を終えてからJAおきなわに移った人は25人いる。実際は、連携協定を結ぶに至らなくても、他のJAや産地で人の融通をし合っているところがいくつもある。人を奪い合うのではなく、協調することでウィン・ウィンの関係を目指しているのだ。


増えるアルバイト経験からの就農

「アルバイトでここに来て、それがきっかけで就農する人が多いですよ。今、埼玉、千葉、福岡からIターンの人が来ています」

大杉さんのこの言葉に驚かされた。アルバイトのつもりが、農家や農業関係者と触れ合ううちに、土地や農家の暮らしが気に入り、住もうと決意する人が多いのだ。管内の新規就農者は、Iターンの増加で増える傾向にあり、農協もその後押しをしている。

2014年から、保存すべき園地の確保をしているのだ。農家で管理できない園地が出た場合、JAに相談し、JAが残すべき園地だと判断すれば、そこをしばらく管理する。

マンダリンの食堂。11、12月の繁忙期はここで食事が提供される。館内は清潔感があり、特に風呂が個室になっているのが評判だそうだ。

就農前の研修を受けている5人が今、園地を使っている。独立就農した際、その管理を委ねるつもりだ。「みかんアルバイター」の募集を通じて、好循環の輪が回り始めている。


西宇和みかん支援隊
http://n-mikan-shientai.jp/
JAにしうわ
http://www.ja-nishiuwa.jp/
JAふらの
https://www.ja-furano.or.jp/
JAおきなわ
http://www.ja-okinawa.or.jp/


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WRITER LIST

  1. 堀口泰子
    栄養士、食アスリートシニアインストラクター、健康・食育シニアマスター。フィットネスクラブ専属栄養士を経て独立。アスリートの食事指導や栄養サポートの他、離乳食から介護予防まで食を通じて様々な食育活動を行う。料理家としても活動し、レシピ提案、商品開発も担う。食事は楽しく、気負わず継続できる食生活を伝えることを信条とする。スポーツの現場ではジュニアの育成、競技に向き合うための心と体の成長に注力している。HP:https://eiyoushiyakko.jimdofree.com/
  2. 大槻万須美
    管理栄養士・フードスタイリスト。楽しく食べて健康に。食の大切さを伝えるため、料理教室、バレエダンサーやアスリートのパーソナル栄養サポート、レシピ・コラムの提供など幅広く活動。子どもの頃の毎年の米作り経験から、身近な食体験の重要性についても実感し、おとなと子どもの食育サポートにも力を注いでいる。
  3. 田牧一郎
    たまきいちろう。68歳。日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
  4. 田中克樹
    たなかかつき。32年間の農業出版社勤務を経て、2020年末、故郷の八ヶ岳南麓に帰郷。仲間と共に農業・福祉系NPOを立ち上げ、遊休農地・耕作放棄地を再生し、心身の癒しや健康づくりにつながる有機無農薬の体験型農園づくりに取り組む。NPOでは田んぼ除草にホバークラフトを活用したスマート技術を開発中。農と風土(フード)を愛する人たち向けのブックカフェ・居酒屋を開くのが夢。
  5. 山田正美
    大阪工業大学大学院修了。福井県職員として、農業試験場研究員、専門技術員、農業技術経営課長、農林水産部技幹を経て退職。現在、日本生産者GAP協会常務理事、日本農業サポート研究所主席コンサルタント。
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