中干し後から穂肥前に確認したいこと|6〜7月に行う水稲管理

中干しを終えたあと、「すぐに水を戻してよいのか」「穂肥(ほごえ)は予定通りでよいのか」と迷う場面は少なくありません。6〜7月の水稲は、分げつを確保する段階から、出穂前の稲姿を整える段階へ移っていきます。

この時期は、水を入れる、落とすという作業だけでなく、根の状態や葉色、茎数、幼穂の生育状況を合わせて見ることが大切です。中干し後の水管理は、穂肥前の生育確認にもつながります。

この記事では、中干し後から穂肥前までに確認したいポイントを整理します。


中干し後から穂肥前までに気をつけたい作業とは?



中干し後の作業は、単なる「水を落とした後の後処理」ではありません。水をどう戻すか、溝切りが機能しているか、穂肥前の稲姿をどう見るかを確認しながら、出穂前の状態を整えていく期間です。

まずは、乾いた田面にいきなり深く水を張るのではなく、根への負担を見ながら水を戻します。続いて、溝切り後の溝が排水口までつながっているか、入水・排水が滞っていないかをチェック。そのうえで、葉色や草丈、茎数、幼穂の状態を見ながら、穂肥を予定通り行うか、量や時期を調整するかを判断します。

また、近年のように高温が続く年は、生育のスピードや水の減り方も変わるため、水管理と穂肥判断を切り離さずに見ることが大切です。

ここから、それぞれの工程で確認したいことや注意すべきポイントを詳しく紹介していきます。


①水の戻し方は「間断かん水」から「飽水管理」へ


中干し後は、乾いた田面に水を戻していきます。ただし、いきなり深水に戻すのではなく、根への負担を見ながら水を入れることが大切です。

まず浅水で入水し、自然落水後に再び入水する「間断かん水」から始めるのが一般的です。その後、幼穂形成期が近づくにつれて「飽水管理」へ移していきます。

飽水管理とは、常に水を張った状態ではなく、土壌中に十分な水分を保ちながら管理する方法。圃場に入水した後、自然減水していき、足跡や溝に水が残っているうちに入水、を繰り返します。

中干し直後の根は、乾燥による負荷を受けています。土中に適度な水分を保つことで、根の活力を維持しながら、穂肥前の生育を安定させるねらいがあります。

ただし、用水事情や土質、気温、圃場の乾きやすさによって、適した水の動かし方は異なります。砂質の圃場では水が抜けやすく、重粘土の圃場では水が残りやすいため、同じ地域でも圃場ごとに見方を変える必要があります。


②溝切りが機能しているか



溝切りは中干しと同時期に行われる、水管理の効率化やメタンなどの有毒ガスを逃すための作業ですが、その役割は中干し期間だけで終わりません。切った溝がきちんと機能しているか確認しておきたいところです。

また、6〜7月は、梅雨の雨、急な高温、地域の用水スケジュールが重なりやすい時期です。水を落としたいときに排水できるか、水を入れたいときに圃場全体へ回せるかによって、その後の調整のしやすさが変わります。

確認したいのは、溝が排水口までつながっているか、途中で崩れたり詰まったりしていないか、圃場内に水がたまりやすい場所が残っていないか。大雨の後などは、泥や稲わらなどで溝がふさがることもあるため、必要に応じて手直しします。

もし溝がうまく機能していない場合は、まず排水口との接続部分や、泥で埋まっている箇所を確認します。水が流れにくい場所は、無理のない範囲で溝をさらう、排水口まわりを開ける、水がたまりやすい場所だけ補助的に溝をつなぐ、といった対応が考えられます。

ただし、田面が軟らかい状態で機械を入れると、かえって田面を荒らしたり、稲を傷めたりするおそれもあります。作業できる状態かどうかを見ながら、手直しする範囲を判断することが大切です。

また、入水時に水が一部だけに偏っていないかも見ておきたい点です。水が回りにくい場所や、逆に水が抜けにくい場所があると、田面の乾湿ムラにつながります。穂肥前は葉色や草丈の揃いも確認したい時期なので、こうした水ムラが生育ムラとして見えてくることもあります。

なお、圃場の高低差や排水口の位置、土質によって水の動きは異なります。圃場ごとの癖を見ながら、必要な範囲で確認するとよいでしょう。


③穂肥は「いつ・どれだけ施すか」を稲姿で判断



穂肥とは、穂ができ始める時期に施す追肥のことです。出穂後の登熟を支える養分を補い、収量や品質の確保につなげる目的で行われます。一般的に穂肥は幼穂形成期前後から出穂前を目安に検討されますが、品種や地域、田植え時期によって適期は変わります。

また、穂肥は「時期が来たら必ず同じ量を施す」ものではありません。葉色や草丈、茎数、幼穂の状態を見ながら、予定通り施すか、量を抑えるか、時期をずらすか、場合によっては見送るかを判断します。

見る場所は、圃場の中でも生育がよい場所だけでなく、水がたまりやすい場所、乾きやすい場所、葉色に差が出ている場所などです。

葉色が濃い場合は、穂肥をそのまま施すことで過繁茂や倒伏につながることがあります。反対に、葉色が薄く生育が弱い場合は、登熟期の栄養不足も考えられます。ただし、生育の弱さが肥料不足だけでなく、根傷みや水不足、生育ムラから来ている場合もあるため、幼穂の進み方と圃場全体の状態を合わせて見ます。

穂肥前に見たい圃場の様子と、判断の考え方を下表にまとめました。


実際の穂肥量や施用時期は、地域の栽培暦やJA、普及指導センターなどの資料と照らし合わせて確認してください。

大切なのは、「穂肥をするか、しないか」だけでなく、「今の稲姿に対して、予定通りでよいか」を見直すことです。


高温年に注意したいこと


近年は、6〜7月から高温が続くことも増えてきました。このような年は、稲の生育が前倒しになり、幼穂形成や出穂が例年より早まることも。そのため、穂肥の時期も、例年の日付だけでなく、幼穂長や葉色を見て判断することが大切です。

また、台風通過後のフェーン現象などで、急に高温・乾燥にさらされる場合があります。田面が急に乾くと、根に負担がかかり、葉色の低下や生育ムラにつながります。葉色が薄いからといってすぐに肥料不足と見るのではなく、水不足や根傷みの影響が出ていないかも確認しましょう。

中干し後の水管理においては、事前に湛水して稲体を守る対応が必要になることもあります。用水事情や圃場条件によって対応は異なるため、気象予報や地域の栽培指導情報を確認しながら、水管理をこまめに、柔軟に調整することが重要です。


6〜7月は圃場ごとの状態確認を大切に


中干し後は、水を戻すタイミングや入れ方だけでなく、溝切りの状態や圃場内の水ムラも確認しておきたいポイント。穂肥も日付だけで判断せず、葉色や草丈、茎数、幼穂の状態を見ながら、量や時期を調整することが大切です。

近年は異常気象が続いており、例年通りの対応では合わない場合もあります。水管理と穂肥判断を切り離さず、圃場ごとの状態をこまめに見ることで、出穂前の稲姿を整えやすくなります。迷う場合は、地域の栽培暦や指導情報も確認しながら、次の作業を組み立てていきましょう。

中干し後の作業で迷ったら、プロに相談してみませんか?
中干し後の水管理や穂肥前の判断は、品種、圃場の水持ち、地域の用水条件によって変わります。
「水を戻すタイミングに迷う」「葉色や茎数の見方に不安がある」
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専門家による相談サービスの活用もご検討ください。
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※対応エリア・料金・作業条件は、地域や圃場状況等により異なる場合があります。


参考資料
JAえちご上越 令和7年産「上越地域米」栽培技術情報 No.4」
JA兵庫みらい「あぐり通信 2025.7月号」
JAえちご中越「営農かわらばん6月号」
千葉県農林水産部「令和7年6月27日水稲の生育状況と当面の対策」
千葉県農林水産部「令和6年6月27日水稲の生育状況と当面の対策」
新潟県「稲作情報 連日高温! こまめな水管理で稲体活力維持!」
JAあおば「水稲情報(第4号)」
JAあおば「水稲情報(第6号)」

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  1. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  2. 北島芙有子
    北島芙有子
    トマトが大好きなトマト農家。大学時代の農業アルバイトをきっかけに、非農家から新規就農しました。ハウス栽培の夏秋トマトをメインに、季節の野菜を栽培しています。最近はWeb関連の仕事も始め、半農半Xの生活。
  3. 柏木智帆
    柏木智帆
    米・食味鑑定士/お米ライター/ごはんソムリエ神奈川新聞の記者を経て、福島県の米農家と結婚。年間400種以上の米を試食しながら「お米の消費アップ」をライフワークに、執筆やイベント、講演活動など、お米の魅力を伝える活動を行っている。また、4歳の娘の食事やお弁当づくりを通して、食育にも目を向けている。プロフィール写真 ©杉山晃造
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    鈴木かゆ
    1993年生まれ、お粥研究家。「おかゆ好き?嫌い?」の問いを「どのおかゆが好き?」に変えるべく活動中。お粥の研究サイト「おかゆワールド.com」運営。各種SNS、メディアにてお粥レシピ/レポ/歴史/文化などを発信中。JAPAN MENSA会員。
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    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
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