水田の均平化でジャンボタニシ被害はどれくらい減る? 作業委託で実現した均平化の成果 【千葉県長生村・木島さんの事例・前編】

水田の均平化は、ただ田んぼを平らにするだけの作業にとどまりません。

田面に高低差があると、水の深さが場所によって変わり、水管理が難しくなります。生育ムラや作業性の低下につながるだけでなく、昨今蔓延しているジャンボタニシ(スクミリンゴガイ)被害が広がりやすい地域の圃場などでは、浅水管理をしにくいことも課題になります。ジャンボタニシ対策では浅水管理が方法のひとつですが、田面に高低差があると水深にばらつきが生じます。均平化によって田面を整えることは、浅水管理をしやすくするための手段にもなります。

とはいえ、均平化に必要な作業機を個人で持っている生産者は限られます。自分で土を動かすことはできても、作業時間や仕上がりに限界を感じている方も少なくないでしょう。

そんなジャンボタニシの被害が拡大している千葉県長生郡長生村(ちょうせいむら)で、水稲を栽培する木島さんは、2026年2月、農作業委託サービス「アグリポン」を通じて、管理する水田の一部で均平化作業を委託。6月の時点で近隣の水田と比較してもその被害はかなり軽減され、効果を実感できたといいます。

今回は、木島さんが均平化を考えるようになった背景、自力での作業に感じていた限界、均平化作業の委託に向けた準備、そして均平化の成果についてうかがいました。

千葉県長生郡長生村で米農家を営む木島浩之さん(写真:SMART AGRI編集部)

きっかけは借り受けた田んぼのジャンボタニシ被害


木島さんが今回、均平化を考える大きなきっかけになったのは、新たに管理を引き受けることになった圃場の状態でした。

「2024年まで耕作されていた方が規模縮小で切り上げられた圃場を、地主さんから依頼されたのですが、ジャンボタニシがとても多い状態で……。5反(約50a)の半分くらいまで食害が目立っていたため、これはそのままにしておくのは良くないなと思いました」

それまでの圃場の状態もよくわからないまま、2025年の田植えを行ったのですが、すぐに被害は見え始めました。

「植えて2、3日目から、ジャンボタニシの食害が目で見てわかる程度にまで広がっていました。水路の末端にある圃場なので、水をすぐに抜くこともできず、みるみるうちにただの池のようになってしまいました」

木島さんの圃場につながる水路。6月の取材時点でジャンボタニシの卵(写真のピンクの部分)がそこかしこに見えていた。この水路は他の圃場も共用しており、大小の差はあるものの被害は避けられない状態となっている(写真:SMART AGRI編集部)
中干しを行う頃には苗が抜けた部分が目立ち、ゴルフ場のバンカーのような状態になっていたといいます。

ただし、この圃場そのものの地力がないわけではなく、残った苗は力強く育っていたのは好材料でした。水管理の難しさとジャンボタニシ被害によって、本来の状態で作れていないだけ──木島さんはそこをどうにかしたいと考えました。

木島さんの圃場に隣接する、ジャンボタニシの被害が大きい圃場。水たまりの中にはジャンボタニシとピンク色の卵がたくさん残っている(写真:SMART AGRI編集部)

自力で均平化に挑戦してみたものの……


こうしたジャンボタニシの対策として、専用の薬剤を使用する方法もあります。しかし、「2〜3週間に一度撒かなければならずコストもかかってしまいます」と木島さん。そこまでコストをかけるのは現実的ではありません。

それ以外の根本的な対策として、田面の高低差を小さくし、浅水管理を行いやすくするための方法として『均平化』という方法もあります。

参考記事:薬剤に頼らないジャンボタニシ対策──「均平化」で初期生育を守ろう

実は木島さんも2〜3年前、自力で田んぼの高低差を直そうと挑戦したことがありました。専用のレーザーレベラーなどを持っていたわけではなかったため、手元にあるプラウとバケットを使って、盛り上がった場所の土を削り、低い場所へ運ぶという基礎的な方法でした。ですが……

「高いところの土を削って低いところにひたすら運ぶ、の繰り返し。あとは、代かきの時にも土を低いところに引っ張っていく。それくらいしかできることはありませんでした。土を動かすといっても、簡単な作業ではありませんし、なにより、圃場の中のどこが高くどこが低い地点なのか、目視でははっきりわからない部分もありました。

バケットで平らになるように土を動かしても、水を入れてみてようやく高いところと低いところが見えて、そこからまた代かきの時にハローで引くしかないんです。それに、以前バケットで実践した時には、6反の田んぼで8時間もかかりました」

木島さんが所有する大型トラクターと農業用ドローン稲作に必要な機材はそろえているが、均平化のためだけにレベラーを購入するまでには至っていなかった(写真:SMART AGRI編集部)
木島さんは、合計で約20haの水田をひとりで管理しています。そのため、1枚の田んぼに丸1日近くかかるこうした均平化の作業は、かなり大きな負担でした。

「ひとり作業の中で、1日も取られてしまうのは、時間的に大きなロスです。かといって、かけられるコストにも限界はありました」

そうこうしているうちにジャンボタニシの被害は広がるばかり。均平化は必要だとわかっている。けれど、自分でやるには時間がかかる──これが、木島さんが感じていた壁でした。


専用レベラーを使った均平化ができなかった理由


木島さんは、今回初めて均平化に関心を持ったわけではありません。以前から同じ地域でレベラーを使って均平化を受託している先輩農家の圃場を見て、「自分の田んぼも平らな圃場にしたい」という思いはあったといいます。

ただ、実際に依頼するとなると、田植えまでのスケジュールや作業できる日程などが、同じ地域にいる先輩と重なってしまい、なかなか実施できませんでした。特に木島さんの圃場がある地域は、乾くまでに時間がかかる土質である点も重なり、均平化などの作業時期が春先まで遅れがちという部分も、委託を難しくしていました。

関心はある。効果も見ている。けれど、機械もないし、頼むタイミングも合わない──。

均平化は「やった方がいい」と思っていても、実際に実現するまでのハードルが高い作業だったのです。


役場の会議で知った均平化の委託サービス


そんなふうに水田の均平化作業を模索していた木島さんが知ったのが、株式会社オプティムが「アグリポン」という農作業代行サービスによる均平化でした。

「2025年秋頃の役場の会議で初めてその話を聞きました。地域の田んぼの集積化、地域計画として田んぼをまとめましょうという会議の席で、均平化が委託できると知ったんです」

もともと均平化への関心があり、さらにジャンボタニシ被害を体験していた木島さんにとっては、まさにいいタイミングでした。「アグリポン」による具体的な準備や作業内容について聞いた上で、均平化作業を委託することにしました。

自分でやるには難しい。地域の先輩に頼むにも時期が合いにくい。そんな中で、均平化という選択肢が現実的に見えてきました。


均平化のために不可欠な事前準備とは?


今回、令和8年(2026年)の作で木島さんが均平化を依頼したのは、管理している水田のうちの5反(50a)と6反(60a)の2筆です。どちらも借り受けて管理している圃場で、6反の方は前述した前年に被害を実感していた圃場、そして5反の方は今年初めて引き受けた圃場でした。

委託するといっても、生産者側の準備がまったく不要になるわけではありません。作業に入る前に、均平化作業の邪魔になるとされている2番穂の刈り取りをしておく必要はあります。

「田んぼが乾くまで入るのを我慢して、秋過ぎ〜冬頃にモアで刈り取り、その後プラウで天地返しを行い、完全に乾くまで待ちます。ここまで来て初めて、均平化の作業に取り掛かれる状態になります。

オプティムさんも一回圃場を見に来てくれたのですが、プラウの後でだいぶ乾いていたので、『これだったらすぐ作業に入れますよ』という仕上がりにできました」

こうした事前準備を行ったのは、2番穂がしっかり分解されないままだとレベラーに穂が引っかかってしまい、均平化の成果がうまく出ないという事例を聞いたことがあったため。同時に、圃場をしっかり乾燥させないと、思うような成果が出ないとも言われていました。

均平化を委託できるからといって丸投げでいいわけではなく、生産者側が事前に圃場を整える必要もあります。しかし、それらを実施したことで、今回均平化を委託した2つの圃場のいずれも、ジャンボタニシの影響がかなり抑えられ、稲も元気に育っていました。


6月の取材時点の均平化を施した木島さんの圃場の様子。ジャンボタニシ自体は田んぼにいるものの、苗の食害の影響はほとんどなく、均等に生育していた(写真:SMART AGRI編集部)

均平化は新たな圃場を引き受ける際の“最初の整備”に


前年にジャンボタニシの被害を経験した木島さんは、前の耕作者の管理状態がわからない圃場を借り受ける時に、最初に田面を整えることで、その後の水管理や作業のしやすさにつながったといいます。

農地の集積や引き受け手の交代が進む中で、以前の栽培管理の履歴が詳細に残っているケースはまだまだ稀です。そのため、こうした“圃場のクセ”があることを前提として、どう引き受け、どう整えていくかも、これからの水稲経営にとって重要な課題になります。

規模を拡大していきたい生産者にとって、管理しやすい圃場かどうかが運任せというのは、かえってリスクが大きくなってしまいます。そういう時に、作付けに入る前にいったん均平化で圃場を整備することで、一定の水準の環境を整えることができれば、栽培面積をもっと容易に拡大できる可能性も広がります。

後編では、専用レベラーによる水田の均平化作業の流れや、均平化された圃場への田植え前後の作業性、生育ムラや水管理、ジャンボタニシ対策としての実際の効果、そして木島さんが感じた「均平化を委託する価値」について紹介していきます。


レベラーがないなら「均平化委託」という選択肢も
水田の高低差が気になっていて水管理がしにくい、
ジャンボタニシ被害が深刻という方には
「均平化」という選択肢が効果的です。
実際の効果が気になる方も、まずはお気軽にご相談ください。
▶「アグリポン」水田の均平化作業委託サービスの詳細はこちら相談・問い合わせ(フォーム)


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  1. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  2. 北島芙有子
    北島芙有子
    トマトが大好きなトマト農家。大学時代の農業アルバイトをきっかけに、非農家から新規就農しました。ハウス栽培の夏秋トマトをメインに、季節の野菜を栽培しています。最近はWeb関連の仕事も始め、半農半Xの生活。
  3. 柏木智帆
    柏木智帆
    米・食味鑑定士/お米ライター/ごはんソムリエ神奈川新聞の記者を経て、福島県の米農家と結婚。年間400種以上の米を試食しながら「お米の消費アップ」をライフワークに、執筆やイベント、講演活動など、お米の魅力を伝える活動を行っている。また、4歳の娘の食事やお弁当づくりを通して、食育にも目を向けている。プロフィール写真 ©杉山晃造
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    鈴木かゆ
    1993年生まれ、お粥研究家。「おかゆ好き?嫌い?」の問いを「どのおかゆが好き?」に変えるべく活動中。お粥の研究サイト「おかゆワールド.com」運営。各種SNS、メディアにてお粥レシピ/レポ/歴史/文化などを発信中。JAPAN MENSA会員。
  5. 田牧一郎
    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。