農家との直販契約の新しいかたち「Ragri」の可能性

農協を中心に間接販売がメインだった日本の農業。しかし、その流れが少しずつ変化しようとしている。インターネットの普及、そしてスマートフォンの活用が進む中、農家と消費者がダイレクトにつながり、相互に情報を発信し合うことが可能となった。

このようなやり取りを可能にしているのが、楽天が運営している契約栽培システム「Ragri」だ。このRagriの存在は、日本の農業に大きな影響を与えるかもしれない。


楽天が展開する「Ragri」とは

Ragriは「農家さんと育てる、二人三脚の契約栽培」をコンセプトに、消費者と農家を直接結びつけて農作物の栽培を進めるサービスだ。特徴は、契約栽培という方式をとっている点。これについては後ほど詳細をお伝えしたい。

利用の仕方は大きく分けて4つのステップに分かれている。


STEP1では、消費者が育てたい作物を選択する。選択できるのは、その時期に育てることができる作物のみで、そこから選ぶこととなる。

STEP2では、作物を育てる農家を選ぶ。Ragriのサイトで農家の情報が公開されており、生産に対するこだわりも見ることができる。

ここで農家の選択が完了すると、STEP3で利用料の支払いを行う。この利用料は作物や農家、栽培時期によって変動するようになっている。

そしてSTEP4では、消費者が「作物を育てる」フェーズになる。育てるといっても、実際に畑で育てるわけではない。バーチャル畑で水や肥料をあげたり、雑草や虫を除去したりといったお世話をするのである。そして、この畑のお世話における貢献度に応じて実際に届けられる野菜の量が変動する。消費者にインセンティブを与えることで、Ragriに意欲的に参加してもらう図式を作り上げたのだ。

Ragriが農家と消費者にもたらすメリットとは

それでは、実際にRagriを使うメリットはどのようなものがあるのだろうか。ここでは、消費者と農家の両面から見ていきたい。


消費者側のメリットとしては、まず高品質な野菜が手に入るということが挙げられるだろう。農家が適切なタイミングで収穫して、すぐに発送するため、新鮮な野菜や果物を食べることが可能だ。また、高品質な農産物を月々の分割払いで、少ない負担で購入できるのもメリットの一つだ。Ragriを通じて農家から直接情報が届くなど「生産者の顔」が見えるため、安心してサービスを利用することもできる。

一方、農家にとっても消費者と直接交流したり、栽培状況や情報を発信したりすることで生産に対するモチベーションを上げることができる。さらに、Ragriによって、これまで不安定と言われていた農業収入を安定化することも可能となる。

農家に安定収入をもたらす従来の販路との違い

Ragriでは、農作物を生産するにあたりその費用を前払いで得ることができる契約栽培方式を取っている。これは、CSA(Community Supported Agriculture)と呼ばれ、会員制の定型農業として従来からあった手法だ。

RagriはこのCSAをITの力によってさらに進化させた。従来のCSAは地域の人々だけで行うケースが多く、一人ひとりの負担額が大きくなりがちだった。しかしRagriの場合、インターネットによって広く会員を募ることができるため、消費者の負担が従来のCSAより軽くなる。これにより、参加者が増え、結果として農家を支える人々が増えることになる。農家にとってもこれまで以上に安定収入が得やすくなる可能性が高まるのだ。

また、販路についてもこれまでの農業と大きな違いがある。農協などが中心だった販路が、楽天市場という日本最大級のECサイトに広がることで、より多くの消費者の手に届きやすくなる。これにより、農家が収益を上げる機会が増え、これまで以上の成果が期待される。

販売だけではない! Ragriのもう一つの可能性

このように、Ragriは農家の販路を広げ、これまで以上に収益を確保しやすい環境を整えようとしている。また、消費者にとっても、新鮮かつ安全な野菜を手に入れることができる。「食の安全」が叫ばれる中、子供に良い野菜を食べさせたいという家庭には受け入れられる可能性が高いのではないだろうか。

そして、Ragriの可能性はこれだけに止まらない。農家の収益機会を増やすことで、就農の促進を図るという目標もある。次世代の担い手に承継を進める「Ragriブリッジ」や就農支援を行う「Ragriリクルート」なども展開。日本の農業を盛り上げることで生産を活性化し、より高品質な野菜が手に入る機会が増えるかもしれない。

Ragriが成功を収めれば、IT企業の農業分野への参入も促進されるだろう。これにより、スマート農業がさらに広まる可能性もある。農業×ITには、まだまだ大きなポテンシャルが秘められている。今後農業界の流通にどのような旋風が巻き起こるのか、期待も大きい。

<参考URL>
RAKUTEN Ragri
https://agriculture.rakuten.co.jp/
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WRITER LIST

  1. 三好かやの
    みよしかやの。しがないかーちゃんライター。「農耕と園芸」「全国農業新聞」等に記事を執筆。八王子市ユギムラ牧場でかぼちゃの「いいたて雪っ娘」栽培中。共著『私、農家になりました。』(誠文堂新光社)、『東北のすごい生産者に会いに行く』(柴田書店)等がある。http://r.goope.jp/mkayanooo
  2. 山口亮子
    やまぐちりょうこ。フリージャーナリスト。京都大学卒、北京大学修士課程修了。時事通信社を経てフリーに。主に農業と地域活性化、中国を取材。
  3. r-lib(アールリブ)
    これからのかっこいいライフスタイルには「社会のための何か」が入っている、をコンセプトにインタビュー記事やコラムなどを発信するメディア。r-lib編集長は奈良の大峯山で修行するために、毎年夏に1週間は精進潔斎で野菜しか食べない生活をしている。
  4. 水尾学
    みずおまなぶ。滋賀県高島市出身。大学卒業後、電子機器関連業務に従事。2016年に自家の柿農園を継ぐと同時に、IoT農業の実現を目指す会社、株式会社パーシテックを設立(京都市)。実家の柿農場を実験場に、ITを駆使した新しい農業にチャレンジしています。
  5. 窪田新之助
    くぼたしんのすけ。農業ジャーナリスト。福岡県生まれ。日本経済新聞社が主催する農業とテクノロジーをテーマにしたグローバルイベント「AG/SUM(アグサム)」プロジェクトアドバイザー、ロボットビジネスを支援するNPO法人Robizyアドバイザー。著書に『日本発「ロボットAI農業」の凄い未来』『GDP 4%の日本農業は自動車産業を超える』(いずれも講談社)など。 2015年11月に発表される「農業センサス」で明らかになる衝撃の事実! 日本の農地は急速な勢いで大規模化され、生産効率も急上昇……輸出産業となる!! 日本経済団体連合会(経団連)も2015年1月1日、発表した政策提言『「豊かで活力ある日本」の再生』で、農業と食のGDPを合わせて20兆円増やせるとした。これは12兆円の輸送用機械(自動車製造業)よりも大きく、インターネット産業や金融・保険業に肩を並べる規模──日本のGDPは500兆円なので、農業が全体の4%を占める計算になる。「コメ農家は儲けてない振りをしているだけですよ」「本気でやっている専業農家はきちんと儲かっている」など、日本中の農業の現場を取材した渾身のレポートは、我々に勇気を与える。日本の農業は基幹産業だ!日本発「ロボットAI農業」の凄い未来 2020年に激変する国土・GDP・生活自民党農林水産部会長の小泉進次郎氏は語る。「夜間に人工知能が搭載された収穫ロボットが働いて、朝になると収穫された農作物が積み上がっている未来がある」と──。21世紀の農業はAIやビッグデータやIoT、そしてロボットを活用したハイテク産業、すなわち日本の得意分野だ。その途轍もないパワーは、地方都市を変貌させて国土全体を豊かにし、自動車産業以上のGDPを稼ぎ出し、日本人の美味しい生活を進化させる。大好評『GDP4%の日本農業は自動車産業を超える』に続く第2弾!

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