【SMART AGRI×AGRI PICK連携企画】農家と消費者をつなぐネット通販サービス 3選

農家と消費者を結ぶ、ネット時代の新たな販路

農産物は日々の暮らしの中でなくてはならない食材だが、その鮮度や消費期限も限定される。せっかくいい農産物が作れたとしても、おいしく食べられるうちに消費者に届けられなければもったいない。

これまでは農産物が食卓に届くまでに、JAや流通業者、卸売市場など、多くの人の力を借りてきた。しかし、現在はインターネットの発展と個人での輸送手段の多様化により、農家と消費者が直接やりとりをする、いわゆるネットによる直接販売のサービスが増えてきている。

これらのネット通販サービスは、農家にとっては引き取り手がないが味や分量はそれほど変わらない規格外野菜や、まだまだ売り場が少なく流通が難しい有機野菜自然栽培野菜、地域ごとに大切に育てられてきた地元野菜などを消費者に届ける手段として有効だ。一方、消費者にとっても、通常の流通に乗らないようなそれらの野菜と出会い、思いを持って栽培している農家と出会う機会にもなる。

今回は、そんな農家と消費者を直接結ぶ、いま話題のネット通販サービスをご紹介しよう。

旬の食材を新鮮なうちにお届け「ポケットマルシェ」

ポケットマルシェ」は、農家と会話しながら食材を買えるネット通販サービスだ。スマートフォンアプリも用意されており、なんと農家もスマホアプリだけで出品手続きが 完了する。農家が出品した野菜を消費者が購入すると、ポケマルから配送伝票が届く。農家はそれに沿って出荷を行うだけで配送完了となる。出店者は100%農家、つまり中間業者がいない分、価格のマージンが付加されることがない。基本的には農家がオススメする食材を直接配送するという仕組みになっている。

出典:ポケットマルシェ

スーパーなどと異なるのは、決まった野菜が常に並んでいるわけではないという点。それは裏を返せば、最も新鮮で旬の野菜に触れる機会とも言える。

サイト上では、実際に購入した消費者と農家のコメントのやりとりも見ることができ、どんな人が作っているのか、どんな味なのかを調べてから購入できるところもポイントだ。肉類や魚介類も取り扱っており、さまざまな〜様々な食材がポケマルだけで揃うようになってきている。


 CSAサービスの第一人者「Ragri」

楽天が運営する「Ragri」は、新しい農業ビジネスの構築を目指してスタートした、会員制のネット通販サービスだ。

Ragriでは、契約農家というかたちで農家がRagriと契約。Ragriを利用する消費者から月額のかたちで安定的に収入を得られる仕組みになっている。このような仕組みを「CSA」(地域支援型農業)と呼び、農家と消費者がリスクをともに分け合う仕組みになっていうr。もちろん、消費者が契約農家とその農産物を選ぶわけだが、情報発信や価格設定などもサービスを通して農家が行うことが可能だ。

出典:Ragri

Ragri契約農家になるためには、ネット上で申し込んだのち、Ragriから直接農場の視察や面談を行い、さらにRagriの研修も経験したのち本契約となる。しっかりとした手続きが必要になるものの、Ragriというシステム上で販売するメリットは大きい。

農家にとっては、農産物の相場や収穫量に左右されず、農家自身で料金を設定できる。また、栽培中の様子を発信することで、農家としての思いを伝え、消費者とコミュニケーションできる。消費者にとっても、農家が適切なタイミングで収穫してくれるため、常に新鮮な野菜が手に入るほか、産地直送であることや、農家の顔が見えるといった安心感もある。

販売形態としては、有機JAS認定を受けた野菜のみを扱う「100%オーガニック定期便」と、一般的な野菜を取り扱う「契約栽培」の2種類を用意。アレルギーが気になる人にとっても便利なサービスだ。

こだわり農家のオーナーになる「OWNERS」


最後に紹介する「OWNERS」は、おいしい野菜を追求していたり、古来からの品種を大切に育て続けるといった、こだわりの農業を行っている農家と消費者を結ぶマッチングサービスだ。

名前のとおり、消費者は農家の「1口オーナー」として事前に登録。最高のタイミングでできた食材を食すことができる。「募集中のプラン」に登録されているのは、全国各地のこだわりの農家たち。農産物はもちろん、加工品なども販売されている。

出典:OWNERS

一方、農家側は価格決定権をもって直接販売ができ、収穫よりも入金が先になる。収穫前の作業になるため、販売作業は農閑期となり、時間効率もよくなる。あとはいい野菜をじっくり栽培するだけ。農家の登録料なども一切かからない。

まとめ

農業の大きな課題として、天候によって収量や野菜の品質が安定せず、それがそのまま収入減に結びついてしまうという点がある。このような状況は誰にも予測できないし、それによる損失は誰も保証してくれない。

そういった意味では、不安定な生産体制が強いられる農業にこそ、CSAのような仕組みはこれからさらに重要になっていく。安全で美味しい、ただし時には収量や形のばらつきがあるかもしれない野菜を、ありのままに受け入れる消費者側のマインドの変化も必要だ。こうしたことは、スーパーの店頭ではなかなか難しいが、農家自身と直接つながっているネット通販であれば可能になる。

農家にとっても消費者にとっても、大きなメリットがあるネット通販サービスは、今後さらに盛り上がっていくだろう。

<参考URL>
ポケットマルシェ(ポケマル)
Ragri(ラグリ)
OWNERS(オーナーズ)

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WRITER LIST

  1. よないつかさ
    1994年生まれ、神奈川県横浜市出身。恵泉女学園大学では主に有機栽培について学び、生活園芸士の資格を持つ。農協に窓口担当として5年勤め、夫の転勤を機に退職。アメリカで第一子を出産し、子育てをしながらフリーライターとして活動。一番好きな野菜はトマト(アイコ)。
  2. syonaitaro
    1994年生まれ、山形県出身、東京農業大学卒業。大学卒業後は関東で数年間修業。現在はUターン就農。通常の栽培よりも農薬を減らして栽培する特別栽培に取り組み、圃場の生産管理を行っている。農業の魅力を伝えるべく、兼業ライターとしても活動中。
  3. 槇 紗加
    1998年生まれ。日本女子大卒。レモン農家になるため、大学卒業直前に小田原に移住し修行を始める。在学中は、食べチョクなど数社でマーケティングや営業を経験。その経験を活かして、農園のHPを作ったりオンライン販売を強化したりしています。将来は、レモンサワー農園を開きたい。
  4. 沖貴雄
    1991年広島県安芸太田町生まれ。広島県立農業技術大学校卒業後、県内外の農家にて研修を受ける。2014年に安芸太田町で就農し2018年から合同会社穴ファームOKIを経営。ほうれんそうを主軸にスイートコーン、白菜、キャベツを生産。記録を分析し効率の良い経営を模索中。食卓にわくわくを地域にウハウハを目指し明るい農園をつくりたい。
  5. 田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。