20代で家業の米農家を継いだ話【農業はもっしぇぜの! 20代米農家の勉強日誌 第1回】

「どうして農業はベテランさんはたくさんいるのに、若者が少ないんだろう?」

私が農業をやり始めて感じた率直な感想です。

現代の農業は、農業従事者の減少、高齢化、他産業に比べ若者が少ないなど、問題点がいくつかあります。すでに農業をやっている方やこれから農業をしたいと考えている若い方にとって、不安要素がたくさんあるのも現実です。そのような問題点はすべて本当のことだし、改善が難しいのも事実だと思います。

そんな状況なので、今後農業は担い手が少なくなり、どんどん衰退していく一方と思われがちですが、実際はそんなことはありません。農業は昔に比べ確実に進化し続けていて、今現在農業をやっている人達の志も非常に高いです。それこそ昔は馬や人力で田畑を耕していましたが、今ではGPS制御による自動走行トラクタードローンなどといった、最先端の機械と技術が導入されています。

そして、現場で働く多くのベテランの方々は「どうにかして日本の土地と農業を守らなければ!」その一心で、日々前向きに農業という仕事に打ち込んでいます。

私は農業が今後衰退していくとは決して思っていません。むしろ、これからは農業の時代だと確信しています。

今回のコラムを通して、「農業って魅力的な夢のある職業なんだ!」そう思って頂けるように、農業の現場で日々起こっているリアルな体験談をお話ししていきたいと思います!

幼少期から感じていた、米づくりへの憧れ


初めまして! 自己紹介が遅れましたが、今回からコラム記事を書かせて頂くことになりました、「syonaitaro」と申します。

現在私は28歳で、山形県の庄内地方というところで稲作を基盤とした農業を行っています。経営形態は法人として行っており、現在社長は父親、私は2代目ということになります。その傍らでウェブライターとして活動もしており、現代の農業を明るく楽しくできるような、そんな記事を目指して執筆しています!


私がお米をなりわいにしようと思った一番の理由は、「自分も米どころで最高のお米を作りたい!」そう思ったからです。

私は子どもの頃から農家の方々と触れ合う機会が多く、触れ合った皆さんがお米を作ることをとても楽しそうにしていました。その印象が強く、自分も将来はこの人達みたいに楽しく仕事がしたいと思うようになったのです。

幼い頃に抱いた農業への前向きな気持ちは、大きくなっても変わることはありませんでした。農業についてしっかりと学びたいと思い、高校は農業高校へ進学しました。その後、関東の大学へと進学し、経済や農業を行う上で重要な経営などについても学びながら農業についてさらに知識を深めました。卒業後はおよそ5年間、関東の農業法人や物流系の企業で働き、地元以外の外の世界で働きいろいろなことを経験してきました。

5年間で学んだことや刺激になったことはたくさんありました。その中でも、私の地元山形県の庄内地方は、日本でも有名なお米の産地であるということを肌で感じられた時、「自分も米を作りたい!」と思いました。

関東の街を歩いていると、「米どころ山形の~」などという看板を至るところで見かけ、「俺はここの出身なんだよな」と思うことがかなりありました。山形で作ったお米を関東でも食べることができ、とても美味しかったんです。次第に私は、「自分もこんな美味しいお米を作りたい」と強く思うようになり、地元へのUターンを決意しました。

家族や地域の方々からの歓迎ムード


私が地元へUターンすると、家族や地域の方々はみんなとても喜んでいました。Uターンしてきたのが26歳の頃で、正直とてもかわいがられました。

私の住んでいる集落は若者が少なく年配の方々ばかりで、会うたびに自分の孫のように接してくれたのを覚えています。そして、実際に農作業をしに田んぼに行くと、声をかけてくれる方が多くいました。

「〇〇の息子か! 帰ってきたんだな! これやるから頑張れよ!」なんて言いながらジュースなんかをくれるんです。しかも、2人で作業しているのに明らかに10人分はあるであろう量のジュースを。笑ってしまいましたがとてもありがたいことです。向こうから優しく話しかけてくれるんですから。


よく「田舎は閉鎖的だ」なんて言われることがありますが、そんなことはないと思います。地元のみんなは、私のような若者を見ると興味を示してくれるし、農作業をしていると丁寧に教えてくれました。

確かに、話しかけづらい人も中にはいます。ですが、そんな人にこそこちらから挨拶をしたり声をかけることで、向こうも笑顔で挨拶を返してくれることがほとんどでした。

農業をするには、地域の方々とのコミュニケーションが必須になってきます。自分から話しかけに行けば、必ず相手も心を開いて笑顔で返答してくれる。簡単なように思えますが、農業を続ける上で一番大切なことだと私は思います。

就農3年目、28歳で営農管理に携わる



私はUターンしてきて今年で3年目になります。現在、主な担当業務は稲の作付計画から収穫までの一連の管理業務です。具体的には以下のような内容になります。

  1. 作付計画(どこの田んぼに何の品種を植えるか)
  2. 耕起作業(耕起→代掻きの順で田んぼを耕す)
  3. 施肥(稲の栄養分となる肥料を散布)
  4. 田植え(田んぼに苗を植える)
  5. 水管理(適切な水位になるように水量を調節)
  6. 草刈り(田んぼの周りに生える雑草を刈る)
  7. 防除(ドローンでカメムシなどの害虫を防除)
  8. 生育調査(常に稲の状態をチェック)
  9. 収穫(コンバインで収穫)

トラクターなどの機械を使っての作業は、主に私が担当しています。その田んぼの状態によって、耕す深さも変わって来るので非常に神経を使う作業になるからです。機械作業は極端な力仕事はしませんが、丁寧にやらないと田んぼが荒れてしまいます。耕す人が変わると、田んぼの癖も変わります。そのため、なるべく田んぼの状態が変化しないように責任を持って作業しています。

農作業は春から始まり、秋の収穫で一段落しますが、加工なども行っているので仕事自体は通年で行っています。春夏秋で稲の栽培の管理などを行い、冬場は主に加工関係の仕事になってきます。

日々、自分たちは何のために今農業をしているんだろうと自問自答しながら農業をしています。自分たちのような食品を生産する「第一次産業」に求められているものは何なのかを考えた時、「安全な食品を作ること」だと社員一同考えています。いかにお客様に安心安全なものを提供できるかを大事に考え仕事しています。

そのような考え方のもと、法人や私自身が取得している認証、資格、美味しいお米生産のための取り組みなどをご紹介します。

法人取得認証・美味しいお米生産のための取り組み


ASIAGAP認証
日本GAP協会により創設された「食の安全」や「環境保全」などに取り組む農場に与えられる認証です。

・お米HACCP
精米を行う上で、より安心・安全に行うための衛生管理手法です。

特別栽培農産物
化学肥料や農薬の使用を通常より減らして栽培した農産物のこと。私の法人では特別栽培米を生産しています。

私が取得している資格


・三ツ星お米マイスター
お米の知識を幅広く持ち、その米の良さを消費者へと伝えることができる人。

まとめ


これから私のコラムを通して、今後仕事として農業を考えている人、今農業をしている人など、みなさんに「農業の良さ」や「魅力」を伝えていければと思っています。

現在、農業業界は高齢化や農業人口の減少など、さまざまな問題がありますが、決して未来が暗いわけではありません。これから私の記事が、力強く前向きに前進していこうとしている読者の皆様の活力になれるように頑張ります!

【農家コラム】農業はもっしぇぜの! 20代米農家の勉強日誌
SHARE

最新の記事をFacebook・メールで
簡単に読むことが出来ます。

RANKING

WRITER LIST

  1. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  2. さとうまちこ
    さとうまちこ
    宮城県の南の方で小さな兼業農家をしています。りんご農家からお米と野菜を作る農家へ嫁いで30余年。これまで「お手伝い」気分での農業を義母の病気を機に有機農業に挑戦すべく一念発起!調理職に長く携わってきた経験と知識、薬膳アドバイザー・食育インストラクターの資格を活かして安心安全な食材を家族へ、そして消費者様に届けられるよう日々奮闘中です。
  3. 北島芙有子
    北島芙有子
    トマトが大好きなトマト農家。大学時代の農業アルバイトをきっかけに、非農家から新規就農しました。ハウス栽培の夏秋トマトをメインに、季節の野菜を栽培しています。最近はWeb関連の仕事も始め、半農半Xの生活。
  4. 川島礼二郎
    川島礼二郎
    1973年神奈川県生まれ。筑波大学第二学群農林学類卒業。フリーラインスの編集ライターとして、テクノロジーをキーワードに、農業雑誌・自動車雑誌などで執筆・編集活動中。
  5. 柏木智帆
    柏木智帆
    米・食味鑑定士/お米ライター/ごはんソムリエ神奈川新聞の記者を経て、福島県の米農家と結婚。年間400種以上の米を試食しながら「お米の消費アップ」をライフワークに、執筆やイベント、講演活動など、お米の魅力を伝える活動を行っている。また、4歳の娘の食事やお弁当づくりを通して、食育にも目を向けている。プロフィール写真 ©杉山晃造
パックごはん定期便