米で生きる地域・山形県庄内地方の現状【農業はもっしぇぜの! 20代米農家の勉強日誌 第2回】

みなさんこんにちは。米どころ庄内でお米を作っています、syonaitaro(ショウナイタロウ)と申します。

今回は、私自身が米づくりをしている、稲作が盛んな山形県庄内地方の現状、今後の農業の展望やあり方、方向性等について書いていきたいと思います。

数字については、データがわかるところは明記していますが、明確なデータが公表されていないものもあります。そういった部分は、私自身が米作りをしながら実感しているものや、お世話になっている農家さんたちとの話の中で感じる内容も含まれていますので、ご了承ください。

庄内地方の特徴


庄内地方は、山形県の北西部に位置し、南北に100km、東西に40kmの広大な土地が広がっています。西は日本海、東は出羽三山と呼ばれる羽黒山、月山、湯殿山が連なっています。また、北には鳥海山、南には朝日山地があり、四方を海と山に囲まれた場所です。

そんな庄内地方ですが、大昔は日本海とつながっていた大きな湖だったそうです。山形県南部の置賜地方から北西部の庄内地方まで縦断している「最上川」が、土砂を少しずつ運び今の広大な地形を作ったと言われています。そのような広大な地形を活かし、稲作が盛んに行われており、庄内地方は日本でも有数の稲作地帯となっています。

県内陸部である最上地方、村山地方、置賜地方よりも温暖な気候で冬の積雪量は比較的少ないです。一年中強い風が吹く地域のため、風力発電なども盛んに行われています。その強い風を生み出しているのが出羽山地の間を流れている最上峡です。ここが地形的に風の通り道になっており、一年を通して強い風を吹かせているのです。


庄内地方はお米作りに最適な気候


庄内地方で稲作が盛んな背景には、米作りに欠かせない条件がそろっているということがあります。具体的にどのような条件があるのかご紹介します。

1.水が豊富


冬には山頂へ雪が積もり、春になれば積もった雪が雪解け水となって庄内全域に流れてくるのです。そのような環境もあって、水をたくさん必要とする春に豊富な水を確保できるため、稲も育てやすい環境にあるのです。

2.夏場の日中と夜の寒暖差が大きい


稲も人間と同じく、日中に高温で暑すぎるとバテてしまいます。それに加え夜の気温も高いとなおさら稲にとっても良くありません。そのため、適度な温度の生育環境が必要になってきます。

庄内地方では、作物にとっての温度が適切な環境にあります。夏場は適切な温度で十分な日照時間を確保でき、夜は稲もゆっくりと休める温度まで下がります。そのような環境が作物の生育に非常に適しているのです。

3.お米作りに限らず熱心な農家さんが多い


庄内地方には、作物を作るのに熱心な農家さんが非常に多いです。日の出と共に働き始め、日が沈むまで懸命に働く方々ばかりです。

さらに、現場主義の方が多く、昨日と今日の少しの変化も見逃しません。庄内地方では、作物の状態を常に観察することにより叩き上げられてきた確かな知識と経験を持った方々が、米作りを支えているのです。

庄内地方で生産されているお米の収量


山形県全体では年に約40万トン生産されており、庄内地方では約16万トンのお米が生産されています(※1)。

また、山形県は10aあたりの収穫量が多い県で、農林水産省による2021年のデータでは10aあたり626kgの収量になっています。全国平均が539kgなので、山形県は87kgほど多く収穫されており、10aあたりでより多く収穫する技術が全国的にもトップクラスです。(※2)

また、庄内地方では農協の存在が大きく、多くの農家が農協へと出荷しています。一方で、中には独自の販売ルートで販売している方や、米の加工品を販売している方もいらっしゃいます。主な販売先は地域のスーパーや、全国の高級百貨店、海外輸出、インターネットで直接消費者へ販売などです。

さまざまな農家さんがいますが、6割ほどが農協出荷、4割が地域の小売店や県外・海外へ販売しているといった印象です。農家間で取引先の話はあまりしないため、あくまでも私の肌感での印象ですが、親しい農家さんとの会話を聞いていると、出荷先についてはそのような割合で流通していると思います。

山形県で生産されている米の用途割合


山形県では主食用以外にも飼料用米や米粉用米など、さまざまな用途の米が生産されています。

農林水産省による「令和5年産米等の作付意向」を見ると、山形県では主食用米が前年とほぼ横ばい(前年5万2700ha)、加工用米も同じく横ばい(前年4715ha)、新市場開拓用米(輸出用)も同じく横ばい(前年373ha)、米粉用米も同じく横ばい(前年119ha)、飼料用米は前年よりも増加傾向(前年5236ha)になることが予想されています(※3)。

依然として主食用米は多い傾向にありますが、今後も飼料用米や他の用途で作付けされれば、作付け量も徐々に適切な数量になってくるのではないでしょうか。

庄内地方の農家数


引用元:山形県「庄内地域の概況 令和4年版」
山形県が発表した「庄内地域の概況 令和4年版」(※4)によると、2020年(令和2年)の統計ですが、庄内地方の農家数は総農家数で8823戸あります。山形県全体では3万9628戸ですので、約22%が庄内地方の農家です。

また、庄内地方では2015年(平成27年)から2020年までの5年間で農家数が11.9%減少しています。しかし、農家数が減少しているにも関わらず、耕地面積や水稲作付面積はそこまで減少していません。

現在では、農家の数が減り、一農家の経営規模が拡大してきています。昔よりも少ない数の農家が、昔とほぼ同じ耕地面積を担っているのです。

庄内地方の農業人口も高齢化が進んでいる


山形県の基幹的農業従事者のうち65歳以上の割合は68%を占めており、農業人口の高齢化が進んでいると言えるでしょう(※5)。全国的にも農業人口の高齢化は問題になっていますが、山形県内、庄内地方においても同じことが言えそうです。


庄内地方のこれからの農業のあり方を考える


農業従事者の高齢化の課題を打破するスマート農業の活用

山形県庄内地方では、稲作が盛んに行われている一方で、農業人口の高齢化がじわじわと影響してきています。それに加えて、米価の低迷も農家の経済を圧迫し、離農に拍車をかけているように感じます。

政府は、そのようになってしまっている背景は主食用の米余りにあると考えており、さまざまな施策を行っています。転作などを推奨し、主食用米を作らせない方向の施策が強い傾向にある訳ですが、ここ山形県庄内地方は稲作に最適な地域。米を作らないのは非常にもったいないことだと私は思います。

転作で大豆やとうもろこしなど、補助金がつく作目もいくつかありますが、飼料用や米粉、加工用、新規需要米等といった用途を分けてでも米を作るべきだと私は思うのです。そうすることが今後の稲作地域の振興と技術力のさらなる発展につながるのではないかと思うのです。

とは言っても高齢化も進んでいますし、なかなか農作業が大変なのも事実です。そこで、ドローンやAIなどといった最先端技術を導入することが、今後の農業を行っていくうえで非常に便利になるのではないかと思います。導入費用こそかかりますが、コストの削減と労働時間と労働負担の緩和が大幅に可能になるので、非常に便利だと思います。

今後、ますます農業人口が高齢化していく中で、より効率的に労働負担をかけずに大規模な経営を行っていくカギは、スマート農業なのではないでしょうか。



※1 酒田市公式サイト 庄内平野の米づくりQ&A
https://www.city.sakata.lg.jp/sangyo/nogyo/nosanbutsu/komedukuri_qa.html
※2 農林水産省 作況調査(水陸稲、麦類、豆類、かんしょ、飼料作物、工芸農作物) 調査結果の概要(水陸稲)
https://www.maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/sakumotu/sakkyou_kome/index.html
※3 農林水産省 水田における作付意向について
https://www.maff.go.jp/j/syouan/keikaku/soukatu/attach/pdf/sakudou-15.pdf
※4 山形県「庄内地域の概況 令和4年版」
https://www.pref.yamagata.jp/documents/4771/r4-shonaitiikinogaikyo.pdf
※5 都道府県の農林水産業の概要(令和3年版) 山形県
https://www.maff.go.jp/j/kanbo/tiho/attach/pdf/todouhuken_gaiyou2021-42.pdf

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  1. 田牧一郎
    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
  2. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  3. 加藤拓
    加藤拓
    筑波大学大学院生命環境科学研究科にて博士課程を修了。在学時、火山噴火後に徐々に森が形成されていくにつれて土壌がどうやってできてくるのかについて研究し、修了後は茨城県農業総合センター農業研究所、帯広畜産大学での研究を経て、神戸大学、東京農業大学へ。農業を行う上で土壌をいかに科学的根拠に基づいて持続的に利用できるかに関心を持って研究を行っている。
  4. 大槻万須美
    大槻万須美
    管理栄養士・フードスタイリスト。楽しく食べて健康に。食の大切さを伝えるため、料理教室、バレエダンサーやアスリートのパーソナル栄養サポート、レシピ・コラムの提供など幅広く活動。子どもの頃の毎年の米作り経験から、身近な食体験の重要性についても実感し、おとなと子どもの食育サポートにも力を注いでいる。
  5. 川島礼二郎
    川島礼二郎
    1973年神奈川県生まれ。筑波大学第二学群農林学類卒業。フリーラインスの編集ライターとして、テクノロジーをキーワードに、農業雑誌・自動車雑誌などで執筆・編集活動中。
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