就農からわずか3年目で法人化した意外(?)な理由【コラム・沖貴雄の「PDCA農業で稼ぐ!」 第3回】

広島県北西部に位置する安芸太田町で、合同会社穴ファームOKIを経営している沖貴雄です。

圃場管理に朝から晩まで追われている今日この頃。今回は2018年に法人設立をした背景とこれから目指す農業について書いていきます。

初めての野菜の高騰。喜びもつかの間……


就農したころは農地が少なかったため、農業の他に手が空いている時はバイトをしていましたが、就農3年が経過した頃にはほぼ現在の経営面積に近いものになっていました。排水が悪いといった、作物が作りにくい圃場の改善も少しずつですがしていくことで、栽培ができる圃場へと変化していました。

そんな中訪れた、天候不順による野菜価格の高騰。初めての経験で何も考えずただただ喜びひたすら出荷をし、その後大変なことになるなんて考えてもいませんでした。

というのも、個人事業主の決算はご存じの通り12月31日。出荷も落ち着き確定申告の準備をしていると、所得が多く残っている事態になっていました。その反動で税金がやってくるなんて考えもせず……すでにその年を越えていたため、何かできることもなく申告を終えました。そして当然、5月からやってくる納付書の金額に驚くことに(「予定納税」というものも知りませんでした)。私は全然その点における知識が無かったのです。

しかも翌年からは、単価が安いことに加え、収量が落ちる事態になり資金繰りが厳しくなってきました。そこに前年度の所得に応じて課税される税金が重なり、大変なことになってしまったのでした。

好不況に左右されないために、合同会社穴ファームOKI誕生


ここで、連載第2回でも登場した農業大学校時代の校長先生に相談すると、ちょうどそのころ法人設立をサポートする関係の部署で仕事をされており、法人化したらいいという話になりました。

法人となることで私は決まった報酬を受け取ることになり、農産物の販売高が急に伸びたりしても家計に与える影響は少なくなるということで法人設立を決心します。

行政職員さん、税理士さん、行政書士さんら多くの方の協力のもと法人設立に向けて検討を繰り返し、広島県農業経営者サポート事業も活用して、2018年9月に現在の合同会社穴ファームOKIが誕生しました。

現在の穴ファームOKI

豊作のとうもろこし

地域に根付いた農業経営を目指して


法人化により、個人事業主よりも細かいことも増え、社会保険の強制加入等、その他のことでもいろいろとしなければならないことが増えてきます。私の場合、法人設立後から売上が増えることなくここまで来ていますが……。まだまだ大きい経営体ではありませんが、組織力で事業を拡大し、経営を発展していきたいと思っています。

連載第1回で触れたように高齢化・少子化による人口減少が続く町なので、年々農地の耕作の依頼が増えています。すでに私一人の力では管理ができないので、たくさんの人に助けてもらわなければ成り立ちません。

地元からパートさんの過半数を雇用していると、そこからコミュニティが広がっているように思います。少しでも多くの農地が維持管理されるように事業を通じて地域を守っていき、穴地域から安芸太田町、広島県と、農業で盛り上げていきたいです。

就農時「10年すれば地域の農業が変わる」なんて話していましたが、こうして考えてみると目の前の問題となりつつあります。幼い頃から見ていた風景をこの先何年維持することができるのか。中山間地域で生産性の悪い土地ではありますが、そんなことに負けずこの地域特性を活かした農業経営を目指しつつ、穴ファームOKIが存在する社会的意味は何なのか考えていこうと思います。

合同会社穴ファームOKI
https://anafarm.hp.peraichi.com/oki
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  1. 田牧一郎
    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
  2. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  3. 加藤拓
    加藤拓
    筑波大学大学院生命環境科学研究科にて博士課程を修了。在学時、火山噴火後に徐々に森が形成されていくにつれて土壌がどうやってできてくるのかについて研究し、修了後は茨城県農業総合センター農業研究所、帯広畜産大学での研究を経て、神戸大学、東京農業大学へ。農業を行う上で土壌をいかに科学的根拠に基づいて持続的に利用できるかに関心を持って研究を行っている。
  4. 大槻万須美
    大槻万須美
    管理栄養士・フードスタイリスト。楽しく食べて健康に。食の大切さを伝えるため、料理教室、バレエダンサーやアスリートのパーソナル栄養サポート、レシピ・コラムの提供など幅広く活動。子どもの頃の毎年の米作り経験から、身近な食体験の重要性についても実感し、おとなと子どもの食育サポートにも力を注いでいる。
  5. 川島礼二郎
    川島礼二郎
    1973年神奈川県生まれ。筑波大学第二学群農林学類卒業。フリーラインスの編集ライターとして、テクノロジーをキーワードに、農業雑誌・自動車雑誌などで執筆・編集活動中。
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