ほうれんそうの売上高を2倍にするために考えられること、できること【コラム・沖貴雄の「PDCA農業で稼ぐ!」 第5回】

広島県北西部に位置する安芸太田町で、合同会社穴ファームOKIを経営している沖貴雄です。

2022年の後半は、9月の台風(14号)以来まとまった降水がなく、白菜・キャベツなど露地野菜の生育が遅れてしまいました。その後雨が降り、出荷も順調に進んでいます。

さて、今回は農業経営者として、農業で今よりもさらに稼ぐために考えていることをお話しします。

大雪が降ったときの農園の様子

さらなる売上高を確保するには


第1回で書いたように、農業の売上はシンプルに言えば収量×単価で決まります。

収量の方は、自分の肥培管理等により増やすことは可能です。しかし、単価の多くは自ら価格の決定権を持っていない限りは、外部要因に大きく影響を受けてしまいます。この、自らの価格決定権が少ないことが、OKIファームが現在改善しなくてはならない点としてあります。

また、数多くある農産物の中からOKIファームのものをいかにして選んでもらえるかが重要です。情報発信が苦手な自分がどのように発信していくか……。最近はSNSを活用した活動もしていかなくてはと思っています。

収量は少なくても単価を上げて利益を増やす試みとして、経営の軸であるほうれんそうを強化しつつ、他に作付けしている野菜の販売につなげていこうとも考えています。その1つが「朝採れトウモロコシ」として力を入れているとうもろこしです。市場への出荷ではなく個人販売を増やしていき、少しずつでも知ってもらいたいです。


このように、「作ることだけではなく、販売促進をどのようにするのか」、というマーケティングの知識を高めていくことも大切です。簡単に言えば、自分の強みを知り、お客様が何を求めているのかを知って、それをつなぎあわせるのがマーケティングです。読者の各農家さんにも、自分のこだわりを強みとして押し出していってもらいたいです。

単価アップの方程式は?


といいつつ、2021年のほうれんそうの平均販売単価は1kgあたり501円、その前年は1kgあたり535円と、右肩下がりの傾向にあり、良くありません。

これは新型コロナによる影響もあると思いますが、外部要因のせいだけにしていては経営が成り立たないので、克服する手を打たなくてはなりません。昨今の生産コスト上昇による経営の圧迫に負けないように、どのように単価を上げていくか、なにができるのか考えてみました。

取り組みを検討するにあたって、今までのデータからわかることがありました。それは、「儲けるためには効率を求めていくこと」。ほうれんそうの収穫・調整作業はパートさんに手伝ってもらっているため、この時間の削減がコストダウンにつながりそうです。

検討していくと、「年間10%作業時間の削減」ができれば……という結論に至りましたが、10%といってもイメージがわかず、なにをしたら減らせるのかわかりませんでした。

そこで、今までの作業時間データを活用して考えてみたところ、「1日10分早く、調整作業を終わらせること」だったんです。「10%削減」はイメージがわきませんが、「1日10分作業を早く終わらせること」はできそうな気がしますよね。

儲けるために大切な「工数削減」


では、10分早く終わらせるには何をしなくてはならないか?

1つ目が作業内容の見直し。2つ目が手のかからない品質の安定したほうれんそうを生産すること

作業内容の見直しについては、工数削減です。具体的には、収穫時に根を5mm程度残して、調整時に根を切るためのはさみの使用数を削減すること。また、スマート農業機器による効率化のために、作業者の能力を把握して効率的な人員配置をするなど、やれることはあります。

また、手のかからないほうれんそうが生産できれば、収穫・調整作業ともストレスなく効率よく作業できます。これはどんな農産物にも言えることですね。時期や季節が変わっても同じ品質を生産する技術をもつこと。誰にでもそれができるようにスマート農業技術を導入することも、安定した品質の生産につながるのではないでしょうか。

寒締めほうれんそう
これらにより、あくまで計算上での額ですが、1年(250日)でだいたい31.6万円分人件費削減ができます。これは決して無理な目標ではないと思っています。

1年間の人件費削減額

最終的には現在の2倍の売上高をめざしていきたいと思っています。収量を現在の2倍にすれば容易に達成できますが、そういうわけにはいきませんので、収量と単価両方の上昇と生産コストの削減を行い、経営を大きくしていきたいです。

合同会社穴ファームOKI
https://anafarm.hp.peraichi.com/oki

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  1. 田牧一郎
    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
  2. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  3. 加藤拓
    加藤拓
    筑波大学大学院生命環境科学研究科にて博士課程を修了。在学時、火山噴火後に徐々に森が形成されていくにつれて土壌がどうやってできてくるのかについて研究し、修了後は茨城県農業総合センター農業研究所、帯広畜産大学での研究を経て、神戸大学、東京農業大学へ。農業を行う上で土壌をいかに科学的根拠に基づいて持続的に利用できるかに関心を持って研究を行っている。
  4. 大槻万須美
    大槻万須美
    管理栄養士・フードスタイリスト。楽しく食べて健康に。食の大切さを伝えるため、料理教室、バレエダンサーやアスリートのパーソナル栄養サポート、レシピ・コラムの提供など幅広く活動。子どもの頃の毎年の米作り経験から、身近な食体験の重要性についても実感し、おとなと子どもの食育サポートにも力を注いでいる。
  5. 川島礼二郎
    川島礼二郎
    1973年神奈川県生まれ。筑波大学第二学群農林学類卒業。フリーラインスの編集ライターとして、テクノロジーをキーワードに、農業雑誌・自動車雑誌などで執筆・編集活動中。
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