農業こそPDCAを回せ! 就農1年目からPDCAを実践すべき理由【コラム・沖貴雄の「PDCA農業で稼ぐ!」 第4回】
広島県北西部に位置する安芸太田町で、合同会社穴ファームOKIを経営している沖貴雄です。
朝晩が涼しくなり秋を感じるようになってきました。8月の異常気象により被災されました方へ心より御見舞申し上げます。
さて今回は、創業時から私が取り組んでいる「農業におけるPDCA」について書こうと思います。といっても、決して難しい知識や技術は必要ありません。
「PDCA」とは、Plan(計画)→Do(実行)→Check(評価)→Action(改善)のサイクルを繰り返し回して業務の改善をしていくことで、頭文字を取って「PDCA」と呼ばれます(詳しくはビジネス関連書籍などをお調べいただけたらと思います)。
就農前に作成する営農計画を指導してくださった広島県の普及指導員さんに、計画書が出来上がった最後に言われたのが、「これがゴールではなく、計画と実際とで違いがあるのかをみて、なぜ違うのかを検討していくことが大切」という言葉。
しかし、PDCAという言葉さえも知らなかった当時の私にとっては、それがPDCAだなんて思ってもいませんでした。
就農1年目の決算を終えた後、あらためて普及指導員さんとの振り返りをしていきました。ひとことで言えば、これが農業におけるPDCAです。おそらく誰もが大なり小なり実践していると思います。
1年目のポイントは、計画に対し収量、売上がどうだったか? 当初の計画は、所得が低くても借入金などの資金繰りが回るようにかなり厳しめに作成していたので、計画値をクリアすることができました。この1年目の実数が翌年の計画の指標となりました。
2年目は、圃場別の収量と売上を決算書などで振り返りました。日報には作業したことなどは記入していましたが、データにはなっていなかったので、結局私が年間で何時間働いたのかもわからない状況でした。もちろん日誌をデータ化すればわかりますが、1年分をするとなると現実的ではありません。
この時、普及指導員さんから営農支援システムの利用を進められ、富士通の食・農クラウド「Akisai」による記録を開始しました。
3年目は、日々記録してきたデータから多くの情報を分析することができるようになりました。圃場ごと、作物ごと、品種ごとでの分析が可能になり、あわせて時間軸の変化を見ることで、伸び・停滞・降下がわかるようになりました。
また、財務会計と管理会計により、さらに詳しい分析が可能になってきました。特に作業効率を上げるために必要な作業時間の把握については、数値を視覚的に取り込むことによりわかりやすくなった点が大きかったです。
作業別の時間もわかり、穴ファームOKIとしてスマート農業化で取り組んでいる、ほうれんそうの灌水の自動化についても、この時点で導入のメリットがあるということがわかっていました。
5年目には「Akisai」から営農支援アプリ「アグリノート」に移行しました。そんな中で、売上が下がる事態に……。
単価が落ちたということもありますが、出荷量が減少していることも一因だったので、その原因は何なのかを分析・考察する必要がありました。
この時も、「アグリノート」で1年間記録したデータを圃場別、月別に細かく分析していくことで、いつ収量が落ちたのかがわかり、対策を立てることができました。1年前の作付のことを思い出すのは大変なので、作付ごとの気づきなどをメモしておくことで分析しやすくなりますよ。
そして分析したあとは、収穫量を増やすために過去3年の平均値プラス10%を、収穫量の目標値として設定しました。
ベト病による減収があった時は、品種の選定や予防剤の散布をして、前年の失敗を繰り返さないように気をつけること。そして、普及指導員さんと一緒に目標と実数のグラフを作成することにより、生産意欲を高め、目標に対しての到達点を意識することで、ほぼ毎月、収穫量を回復することができました。
前述したように、私の農園では現在、自動灌水システムに加えて自動換気システムの導入に取り組んでいますが、それらスマート農業の導入の際にもこれらのデータを基に検討しました。
スマート農業化を進めているほうれんそうの灌水に関する作業時間は、年間約96時間(ポンプを稼働中はその場で待機→次のハウスに切り替え)。これを自動化することでほぼ0時間にでき、効果は大きいと言えます。
また、換気については圃場をすべて開けるのに20分、春秋は開閉で2回行いますので、それだけで40分かかります。これも自動換気システムを導入することで削減可能な時間ですし、段階的に開閉することでほうれんそうの生育にもよい影響があります。
このように、「記憶」を「記録」にし、データを視覚化することで、見えなかったものが見えるようになりました。
自分の営農に対する考え方も、以前は「捨てるくらい作れ」という先輩方の教えのもとやっていましたが、PDCAを回し、目標値を設定できるようになってからは「捨てずに100%を収穫する」にはどうすればいいのか、という考えに変わりました。
日々の記録を残すことは毎日の作業としては負担になりますが、そのデータは必ず翌年以降の農業経営に役立てることができます。
農業は、作物によっては年に1回しか収穫できないため、集められるデータも年単位となります。新規就農の段階から貴重なデータを収集し、毎年PDCAサイクルを多く回す方が、よりよい結果につながると思います。
読者のみなさんもぜひ、PDCAを実践してみてください。
合同会社穴ファームOKI
https://anafarm.hp.peraichi.com/oki
朝晩が涼しくなり秋を感じるようになってきました。8月の異常気象により被災されました方へ心より御見舞申し上げます。
さて今回は、創業時から私が取り組んでいる「農業におけるPDCA」について書こうと思います。といっても、決して難しい知識や技術は必要ありません。
「PDCA」とは、Plan(計画)→Do(実行)→Check(評価)→Action(改善)のサイクルを繰り返し回して業務の改善をしていくことで、頭文字を取って「PDCA」と呼ばれます(詳しくはビジネス関連書籍などをお調べいただけたらと思います)。
就農前に作成する営農計画を指導してくださった広島県の普及指導員さんに、計画書が出来上がった最後に言われたのが、「これがゴールではなく、計画と実際とで違いがあるのかをみて、なぜ違うのかを検討していくことが大切」という言葉。
しかし、PDCAという言葉さえも知らなかった当時の私にとっては、それがPDCAだなんて思ってもいませんでした。
〈就農1〜2年目〉就農1年目から始まった農業PDCA
就農1年目の決算を終えた後、あらためて普及指導員さんとの振り返りをしていきました。ひとことで言えば、これが農業におけるPDCAです。おそらく誰もが大なり小なり実践していると思います。
1年目のポイントは、計画に対し収量、売上がどうだったか? 当初の計画は、所得が低くても借入金などの資金繰りが回るようにかなり厳しめに作成していたので、計画値をクリアすることができました。この1年目の実数が翌年の計画の指標となりました。
2年目は、圃場別の収量と売上を決算書などで振り返りました。日報には作業したことなどは記入していましたが、データにはなっていなかったので、結局私が年間で何時間働いたのかもわからない状況でした。もちろん日誌をデータ化すればわかりますが、1年分をするとなると現実的ではありません。
この時、普及指導員さんから営農支援システムの利用を進められ、富士通の食・農クラウド「Akisai」による記録を開始しました。
〈就農3〜4年目〉データ活用で見えたもの
3年目は、日々記録してきたデータから多くの情報を分析することができるようになりました。圃場ごと、作物ごと、品種ごとでの分析が可能になり、あわせて時間軸の変化を見ることで、伸び・停滞・降下がわかるようになりました。
また、財務会計と管理会計により、さらに詳しい分析が可能になってきました。特に作業効率を上げるために必要な作業時間の把握については、数値を視覚的に取り込むことによりわかりやすくなった点が大きかったです。
作業別の時間もわかり、穴ファームOKIとしてスマート農業化で取り組んでいる、ほうれんそうの灌水の自動化についても、この時点で導入のメリットがあるということがわかっていました。
〈就農5年目〉売上が減少……対策はどう立てる?
5年目には「Akisai」から営農支援アプリ「アグリノート」に移行しました。そんな中で、売上が下がる事態に……。
単価が落ちたということもありますが、出荷量が減少していることも一因だったので、その原因は何なのかを分析・考察する必要がありました。
この時も、「アグリノート」で1年間記録したデータを圃場別、月別に細かく分析していくことで、いつ収量が落ちたのかがわかり、対策を立てることができました。1年前の作付のことを思い出すのは大変なので、作付ごとの気づきなどをメモしておくことで分析しやすくなりますよ。
そして分析したあとは、収穫量を増やすために過去3年の平均値プラス10%を、収穫量の目標値として設定しました。
ベト病による減収があった時は、品種の選定や予防剤の散布をして、前年の失敗を繰り返さないように気をつけること。そして、普及指導員さんと一緒に目標と実数のグラフを作成することにより、生産意欲を高め、目標に対しての到達点を意識することで、ほぼ毎月、収穫量を回復することができました。
スマート農業をどこに導入するかの判断にも活用
前述したように、私の農園では現在、自動灌水システムに加えて自動換気システムの導入に取り組んでいますが、それらスマート農業の導入の際にもこれらのデータを基に検討しました。
スマート農業化を進めているほうれんそうの灌水に関する作業時間は、年間約96時間(ポンプを稼働中はその場で待機→次のハウスに切り替え)。これを自動化することでほぼ0時間にでき、効果は大きいと言えます。
また、換気については圃場をすべて開けるのに20分、春秋は開閉で2回行いますので、それだけで40分かかります。これも自動換気システムを導入することで削減可能な時間ですし、段階的に開閉することでほうれんそうの生育にもよい影響があります。
このように、「記憶」を「記録」にし、データを視覚化することで、見えなかったものが見えるようになりました。
「捨てるくらい作る」から「捨てずに100%収穫する」へ
自分の営農に対する考え方も、以前は「捨てるくらい作れ」という先輩方の教えのもとやっていましたが、PDCAを回し、目標値を設定できるようになってからは「捨てずに100%を収穫する」にはどうすればいいのか、という考えに変わりました。
日々の記録を残すことは毎日の作業としては負担になりますが、そのデータは必ず翌年以降の農業経営に役立てることができます。
農業は、作物によっては年に1回しか収穫できないため、集められるデータも年単位となります。新規就農の段階から貴重なデータを収集し、毎年PDCAサイクルを多く回す方が、よりよい結果につながると思います。
読者のみなさんもぜひ、PDCAを実践してみてください。
合同会社穴ファームOKI
https://anafarm.hp.peraichi.com/oki
【農家コラム】沖貴雄の「PDCA農業で稼ぐ!」
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