若手農家らによる耕畜連携の新組織「新発田コントラクター」設立 堆肥と飼料で相互協力

新潟県新発田市の若手畜産・耕種農家らは、厳しい農業情勢を打破するために地域の農業者が一体となり、永続的な農業のカタチを創る組織「新発田コントラクター」の設立報告会を実施した。

新発田コントラクターは、新発田市豊浦地区の若手の畜産農家2件、耕種農家3件の協力で2022年(令和4年11月1日に設立。畜産農家も耕種農家も今後さらに厳しい経営を強いられることが予想される中で、それぞれの問題点を交遊し、耕畜連携によってできる解決策を見出す。現実的に信頼し合える地域の仲間とともに課題を解決し、永続的に地域農業を支えていくことが目的だ。



堆肥の有効活用と飼料の生産拡大で耕畜連携


現在、耕種農家は肥料価格の高騰により苦しい状況が続いており、化学肥料だけに頼らない土づくりが求められる。さらに、燃料価格、電気料金の高騰により、乾燥調整設備のランニングコストなども課題となっている。また、離農者の増加により、経営面積自体は拡大しているものの、繁忙期は重なってしまうため、面積拡大に対応できないという現状の中で、水稲以外の作物も視野に入れなければ厳しいという状況だ。

一方の畜産農家も、飼料価格の高騰により安定した生乳を安定価格で確保できておらず、飼料があれば生乳の生産も可能だが、遠方の飼料を入手するための運搬コストもかさんでしまっている。同時に、毎日排出される糞尿を使って堆肥を作ったとしても、有効活用しきれずに経費をかけて遠方に輸送したり処理することもあるという。

こうした互いの課題を協力することで、畜産農家は乳牛140頭の糞尿で作った堆肥を耕種農家に提供し、耕種農家は稲穂などや飼料用とうもろこしによる乳牛の飼料を生産するという、耕畜連携のビジネスモデルを進めていく。


将来的には地域の担い手をサポートする委託体制も


すでに2022年より農機メーカーなどと協力しながら実証も行っており、初期投資とメンテナンスコストを抑えるために手元の農機を活用。水稲の乾田直播を進めて、栽培面積を拡大してより効率的な作業体系を確立したいと考えている。また、より効率的な飼料生産のために、イアコーンからデントコーンへの品種変更や、飼料生産のために収穫や梱包などに活用する機械の導入なども進めていく予定だという。



「新発田コントラクター」が解決を目指しているのは、現在耕種農家と畜産農家の両方が抱えている問題だが、これらは今後多くの担い手農家の課題にもなっていくと予想される。将来的に地域ごとにこのような組織があれば、耕種農家は一部作業を委託し、畜産農家は飼料を安定確保できるようになる。そのような地域の農業者をサポートできる受託体制を整えていくことが「新発田コントラクター」の狙いだ。将来的には法人化も視野に入れ、地域での雇用も生み出し、活気あふれる未来永続的な地域農業のかたちを創出したいとしている。



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  1. よないつかさ
    1994年生まれ、神奈川県横浜市出身。恵泉女学園大学では主に有機栽培について学び、生活園芸士の資格を持つ。農協に窓口担当として5年勤め、夫の転勤を機に退職。アメリカで第一子を出産し、シカゴ生活を綴るブログを運営。一番好きな野菜はトマト(アイコ)。
  2. syonaitaro
    1994年生まれ、山形県出身、東京農業大学卒業。大学卒業後は関東で数年間修業。現在はUターン就農。通常の栽培よりも農薬を減らして栽培する特別栽培に取り組み、圃場の生産管理を行っている。農業の魅力を伝えるべく、兼業ライターとしても活動中。
  3. 槇 紗加
    1998年生まれ。日本女子大卒。レモン農家になるため、大学卒業直前に小田原に移住し修行を始める。在学中は、食べチョクなど数社でマーケティングや営業を経験。その経験を活かして、農園のHPを作ったりオンライン販売を強化したりしています。将来は、レモンサワー農園を開きたい。
  4. 沖貴雄
    1991年広島県安芸太田町生まれ。広島県立農業技術大学校卒業後、県内外の農家にて研修を受ける。2014年に安芸太田町で就農し2018年から合同会社穴ファームOKIを経営。ほうれんそうを主軸にスイートコーン、白菜、キャベツを生産。記録を分析し効率の良い経営を模索中。食卓にわくわくを地域にウハウハを目指し明るい農園をつくりたい。
  5. 田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。