農水省、農山漁村における貢献活動の取組証明書を発行 全国50の企業が取得

農林水産省は、企業等の金銭的・技術的・人的リソースを農山漁村の課題解決に活用している取り組みについて、証明書を発行する制度を開始。第1弾となる令和7年度(2025年度)の取得者として50の企業等を決定した。

広報活動のコミュニケーションツールとして活用可能


農山漁村においては人口減少や高齢化が進み、食料供給の不安定化や農山漁村の持つ多面的機能の喪失が懸念されている。このような農山漁村の課題を解決するためには、企業等の多様なステークホルダーのリソースを活用し、活性化を図っていくことが求められる。

近年、大企業を中心にESG、SDGsといった考え方が重視される中で、農林水産省は令和6年度(2024年度)に「農山漁村インパクト可視化ガイダンス」をとりまとめ、企業等が農山漁村の課題解決に向けた取り組みによって生まれる企業価値の向上や事業リスクの低減といった効果、そうした取り組みを行うための手段について整理を行った。

今後、企業等による農山漁村の課題解決や価値創出を促進するには、企業が農山漁村に関与することの社会的意義や成果を、社内外に訴求可能とする仕組みの構築が不可欠となる。しかし現状では、こうした取り組みの成果やインパクトが十分に可視化されておらず、企業にとっても対外的な評価を得ることが難しい状況だ。

このような状況の中、農林水産省では、農山漁村においてインパクトの創出に貢献した取り組みを国が証明する制度の創設を進めており、その第一歩として、農山漁村の課題解決に向けた取り組みを農林水産省が証明し、「取組証明書」として発行する制度を開始。

選定対象となるのは、農山漁村における食料の安定供給や農林水産・食品産業の持続的な発展、持続的な生活環境の維持等に関する課題解決を目的に行われ、今後も継続することが見込まれる取り組みだ。具体的には、「副業を促進することで農山漁村外の人材を活用する取り組み」「農林水産物のブランド化により付加価値の向上を目指す取り組み」「道の駅等の整備により農山漁村地域の機能維持を図る取り組み」など。

今回は2025年10月24日(金)から12月15日(月)まで募集を行い、審査を進め、50の企業が証明書を取得した。2026年度においても「取組証明書」制度を継続して実施する予定だ。

取組証明書を取得した企業等一覧


多様な人材が農村に関わる機会の創出


【地域における体験価値の提供】
・株式会社雨風太陽:都市と地方をかきまぜるおやこ地方留学
・一般社団法人日本橋兜らいぶ推進協議会-有限会社伊豆沼農産:コミュニティファームにおける食育・環境教育支援
・NTT東日本株式会社:棚田を活用した企業向け人材育成研修
ヤンマーホールディングス株式会社-ヤンマーシンビオシス株式会社:観光農園を活用した農作業体験の提供
・株式会社パソナ農援隊:農業を通じたウェルビーイング向上と地域活性化
・TOPPAN株式会社:地域交流企画「生活価値体験ツアー」への支援
・エイチ・ツー・オーリテイリング株式会社:地域と流通を学ぶ食育キャラバン「キッズバイヤー」
・日本航空株式会社 W-PIT 能登復興事業ユニット-株式会社ウニベル:能登地域の復興に向けたフィールドワークプログラム
・つがるオフショアエナジー合同会社-株式会社JTB:職業体験プログラムによる地域との交流促進
・公益財団法人日本ケアフィット共育機構:関係人口創出に向けたワーケーションプログラム
【地域労働力の確保】
・東日本旅客鉄道株式会社本社マーケティング本部くらしづくり・地方創生部門:スポットワーク人材の確保と関係人口の創出
・株式会社タイミー:スポットワークの活用による地域内の人手不足解消
・株式会社JTB-弘前市-アサヒビール株式会社-ニッカウヰスキー株式会社:日本一のりんご生産地に広げる援農の輪
・一般社団法人日本ウェルビーイング推進協議会:自律人材育成「TUNAGU」による関係人口創出
・株式会社おてつたび:「おてつたび」サービスを通じた移住・定住の促進

農村における所得の向上と雇用の創出(経済面)


【技術革新による生産性の向上】
・LocAl Dive:農業用生成AIの開発と農業経営への活用
・KDDI株式会社:センサー・アプリ活用による効率的な牡蠣養殖、データをフル活用した「万願寺甘とう」栽培、フィールドマイスターの活用による生物多様性確保
・株式会社岩手銀行-NTT東日本株式会社株式会社JDSC:水温、空撮データ解析等による農業生産性の向上
・サグリ株式会社:「ニナタバ」サービスによる農地マッチング
・相互タクシー株式会社:農業用ドローンを活用した地域農業サポート
【地域資源を活用した付加価値の向上】
・有限会社舩坂酒造店:ウイスキー製造を通じた持続可能な地域づくり
・カンダまちおこし株式会社-株式会社太平製作所:多様性のある森づくりを通じた地域産業の活性化
・株式会社JTB-アシザワ養蚕-TAKEO株式会社-富士川町:養蚕業により繭から衣食住を五感で紡ぐ没入体験
・ヴィソン多気株式会社:農村地域の活性化に向けた「農」体験と「食」体験
・小林製薬株式会社:漢方薬原料の栽培支援による地域経済活性化
・株式会社ビビッドガーデン:生産者と消費者をつなぐ「食べチョク」サービス展開、「食べチョク」サービスを通じたブランド化と情報発信
・株式会社日比野設計:農家と生活者をつなぐレストラン拠点型農産物流通

農村に人が住み続けるための条件整備(生活面)


【環境負荷低減と地域レジリエンスの向上】
・沖縄セルラー電話株式会社-株式会社琉球銀行-株式会社サンエー-東京海上アセットマネジメント株式会社-東京海上日動火災保険株式会社 沖縄支店:ウミショウブの藻場再生による生物多様性の確保
・日本テレビ放送網株式会社:有機農業を実践する農業法人「いかす」との共創
・株式会社四国の右下木の会社:樵木林業と備長炭を活かした地域循環モデル構築
・「小さな親切」運動静岡県本部:故郷の美しい原風景を残すための棚田保全活動
・あいおいニッセイ同和損害保険株式会社:流域治水の実践による地域防災力の強化
・株式会社バカン:避難者マネジメントシステムによる災害時対応迅速化
【地域コミュニティの維持・活性化】
・瀬戸内ReFarming株式会社:地域への参画促進に向けたベーシックインフラの整備
・サグリ株式会社:「デタバ」アプリによる効率的な作付状況調査、「アクタバ」アプリによる効率的な耕作放棄地の検出
・田園社会イニシアティブ株式会社ミライクエスト推進チーム:学生の参画による次世代に向けた地域づくり
・NTT東日本株式会社 長野支店:姨捨棚田の保全による地域振興
・リベラグループ株式会社:オリーブの生産振興による未来への地域の継承
・ヤンマーホールディングス株式会社-ヤンマーシンビオシス株式会社:障害者雇用を拡大する農福連携の取組
・一般社団法人JA共済総合研究所:援農ボランティアと農福連携の取組支援


証明書を取得した企業は、自社ウェブサイトやIR資料などに活用することで、従業員や地域の関係者、連携する他企業など、多様なステークホルダーに取り組みを訴求できる。これにより、採用力の強化やブランドイメージの向上につなげられるという。また、3種類のロゴマークを使用できるようになるため、取り組みがより視覚的に認知されやすくなることも期待できる。


農林水産省
https://www.maff.go.jp/index.html
農山漁村振興への貢献活動に係る取組証明書
https://www.maff.go.jp/j/nousin/kanmin_kyousou/panels/torikumi_certificate.html
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  1. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  2. 北島芙有子
    北島芙有子
    トマトが大好きなトマト農家。大学時代の農業アルバイトをきっかけに、非農家から新規就農しました。ハウス栽培の夏秋トマトをメインに、季節の野菜を栽培しています。最近はWeb関連の仕事も始め、半農半Xの生活。
  3. 柏木智帆
    柏木智帆
    米・食味鑑定士/お米ライター/ごはんソムリエ神奈川新聞の記者を経て、福島県の米農家と結婚。年間400種以上の米を試食しながら「お米の消費アップ」をライフワークに、執筆やイベント、講演活動など、お米の魅力を伝える活動を行っている。また、4歳の娘の食事やお弁当づくりを通して、食育にも目を向けている。プロフィール写真 ©杉山晃造
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    鈴木かゆ
    1993年生まれ、お粥研究家。「おかゆ好き?嫌い?」の問いを「どのおかゆが好き?」に変えるべく活動中。お粥の研究サイト「おかゆワールド.com」運営。各種SNS、メディアにてお粥レシピ/レポ/歴史/文化などを発信中。JAPAN MENSA会員。
  5. 田牧一郎
    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
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