国産ドローンの合弁会社「NTT e-Drone Technology」誕生 エンルートの開発技術を譲受

東日本電信電話株式会社(NTT東日本)、株式会社オプティム、株式会社WorldLink&Companyは1月18日、ドローン分野における新会社「株式会社NTT e-Drone Technology」(NTT e-Drone)の設立を記者会見にて発表した。3社による共同出資で、NTT東日本が筆頭株主の合弁会社となる。

また、ドローンの開発に関しては、スカパーJSATグループの国産ドローン企業であるエンルート株式会社の開発事業が一部譲受される。

左から、株式会社オプティム代表取締役社長の菅谷俊二氏、株式会社NTT e-Drone Technology代表取締役社長の田辺博氏、同社代表取締役サービス推進部長の山﨑顕氏、株式会社WorldLink&Company代表取締役社長の須田信也氏

国産ドローンの社会実装によりスマート農業を推進


NTT e-Droneの社長に就任したNTT東日本の田辺博氏は、新会社設立のきっかけについて、「NTT東日本グループの事業が、情報通信中心の事業から、お客様に寄り添う形にシフトしてきている」と言及。NTT東日本単独でも、農業、eスポーツ、文化・芸術、ローカル5Gといった分野に事業拡大しているが、中でも農業に関しては株式会社NTTアグリテクノロジーを設立し、次世代園芸施設や5Gなどを活用した先進的な農業を進めている。


こうした中で、「NTT東日本ならIoTやドローンをなんとかしてくれるのではないか、という期待や声をいただいてきた」と田辺氏。背景にあるのは農業の担い手不足よるスマート化が、待ったなしの状況に置かれているためだ。

そもそも、NTT東日本ではこれまでも自社の事業としてドローンを活用してきた。河川の両岸などで光ファイバーの線を引くための通線ドローンや、災害時の通信設備の被害状況の把握などのために、ドローンは100機、パイロットは約200人が現場に存在している。それ以外にも、橋梁の通信網のや鉄塔の点検といった高度なフライト技術が求められる自社インフラの調査事業でも運用ノウハウを蓄積している。

さらに、将来的にはドローンを使った防災・災害対策も求められているとして、4D空間情報のデータベースの収集や把握にドローンを活躍させることは「NTTの使命」ともかたっている。

このような背景から、NTT e-Droneのミッションとして、持続可能な地域社会づくり、地域経済及び産業の活性化に資するドローンの社会実装を推進していくという。



株式会社NTT e-Drone Technologyの概要


NTT e-Drone Technologyは、埼玉県朝霞市のエンルートに本社を置き、3社それぞれの強みを生かして事業を展開していく。


主な事業内容は以下の4つだが、目新しいところとしては機体のシェアリングやパイロット派遣などがある。さらに利用シーン開拓や技術獲得のための実証試験等も行っていくようだ。また、農業分野だけでなく、点検・測量やエンタメなどの分野への展開も視野に入れている。


国産ドローン事業


軽トラ・軽バンに積込可能かつ女性一人でも運搬可能等の日本の利用シーンにフォーカスしたペイロード4kg〜8kg の産業用中型機を提供する。徹底した軽量化と電力消費効率重視の制御技術による長時間フライトを実現。今後は、出資3社の強みを活かしたドローンサービスの開発を継続強化する。

ドローン運用支援事業


全国に販売・保守ネットワークを構築することでアフターフォローを強化し、産業用ドローンを安心安全に操作するためのスクールネットワークを構築することで、安心安全に利用できる環境を整備する。

ソリューション事業


新会社等が保有する機体をシェアリング型で提供することで課題解決をサポートする。センシングや画像解析等を受託することやパイロットの派遣も予定。 国産ドローンの利用シーン開拓や技術獲得に繋がる実証については共同開発も予定している。開発テーマや実証テーマについては公募となる予定。

データ事業


飛行データ等を多様なパートナー企業と流通することで新たな価値を創出することを目指す。


得意分野を生かした連携と、産官学を含めたオープンイノベーション


記者発表会では、共同出資している2社の代表も登壇し、それぞれの事業紹介と参画内容を述べた。

オプティムは、フレッツ光のホームゲートウェイ設定をAIで行うテクノロジーや、コールセンターからの遠隔サポートといった事業でNTT東日本と密接な連携を行ってきたベンチャー企業。「ネットを空気に変える」というコンセプトで、様々な産業に対してAI・IoTのプラットフォームを提供している。

中でも農業に関しては最も変わる産業として力を注いでおり、AI・IoT・ドローンなどを駆使して必要な場所にだけ農薬を散布するピンポイント農薬散布テクノロジー、ピンポイント施肥といった技術により、コスト削減や労働力の削減と同時に、減農薬などによる安全・安心といった付加価値にもつなげる取り組みを行っている。それらの技術を用いて栽培された米は「スマート米」としてオプティム自身が販売も行っており、2019年産との比較で約4倍もの収穫高を得ることができたという。

今回のNTT e-Droneでの連携について菅谷氏は、「我々誰もがドローンのサービスを作れ、使えるサービスにしたいと思っている。そして、日本の多くは少子高齢化が進んでおり、それがいち早く進んでいるのが地方。そこでプロトタイプを作って、いうれは世界で技術やビジネスを進めたい」としている。

一方、WorldLink&Companyは、社名よりも「SkyLink Japan」というブランドの方が農業分野では馴染みがあるかもしれない。ドローンの販売に始まり、パイロット養成などでも実績を重ねてきた同社は、ドローンの販売台数は累積で約3万台を誇る。農業においては、2017年よりDJI MG-1という農業用ドローンを取り扱い、250台以上を販売。スクールでも500名以上のパイロットを送り出してきた。協力会社とともに行っている散布実績も年間1000ヘクタールを超える。2021年からは水中や陸上でのドローンによるフィールドロボティクスの開発にも力を入れていくという。

今回の参画の理由について須田氏は、「ドローンの国産化、量産機の開発、そして農業以外の産業への展開など、IT企業連合によるドローンサービスの開発に期待しています。つなぐ力により社会課題をドローンで解決したい」と語っている。

エンルートのドローン開発技術を譲受 国産ドローンで成長を目指す


ドローン開発に関しては、エンルート株式会社の事業を譲受するかたちで進める。当初のマーケットとしては、既存の農薬散布などに用いる農業用ドローン「AC101」と産業用ドローン「EC101」を中心に販売。従業員は約30名からスタートするが、その大半は開発部隊となり、量産化に関しても追って専門的な人材を登用していくという。



また、高額になってしまいがちなドローンのコストについては、国際的な価格競争力をつけることも大事としながらも、機体だけを求める農家は減っているとして、この3社によるシナジーでどうコストを削減し、プラスアルファの価値を載せた価格で競合と戦っていくという。

今後の見通しについて田辺氏は、「2021年度には10億円を超え、5年後には40億円規模と考えています。ドローン市場の伸びが極めて大きい。世界の課題に対してもっと寄り添っていければと考えている」と語った。


現在国内のドローンに関しては、産業用およびホビー用も含めて、海外製のドローンが大きなシェアを持っている。
しかし、米国を中心とした海外製ドローンの規制等もあり、アフターケアも含めて国内で対応できる国産ドローンの登場は、産業分野においても期待されている。

巨大通信インフラ企業から利用者の課題に寄り添う事業へと転換を図るNTT東日本と、ドローンによる農業の専門家、その販売の専門家、そして国産ドローン開発の専門家が集結したNTT e-Droneが、ドローンを中心としたスマート農業ソリューションを新たな水準に高めてくれることを期待したい。


NTT東日本(農業) https://business.ntt-east.co.jp/service/industry/agri.html
株式会社オプティム
https://www.optim.co.jp/
SkyLink Japan
https://www.skylinkjapan.com/
SHARE

最新の記事をFacebook・メールで
簡単に読むことが出来ます。

RANKING

WRITER LIST

  1. 田牧一郎
    たまきいちろう。68歳。日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
  2. 山田正美
    大阪工業大学大学院修了。福井県職員として、農業試験場研究員、専門技術員、農業技術経営課長、農林水産部技幹を経て退職。現在、日本生産者GAP協会常務理事、日本農業サポート研究所主席コンサルタント。
  3. 福田浩一
    ふくだこういち。東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。現在は主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。http://www.ijas.co.jp/
  4. 中村圭佑
    なかむらけいすけ。明治大学農学部卒業後、日本農薬株式会社に約7年勤務。その後、大手経営コンサルティング会社を経て、FOOD BOX株式会社を2019年7月に起業。Facebook:https://www.facebook.com/foodboxjp/、Instagram:https://www.instagram.com/foodbox_jp/
  5. 百花繚乱
    趣味は料理、漫画、読書のミドルの男です。商社勤務で全国や海外を転々しているうちに、故郷に哀愁を覚え、約10年前に地元の農業関連会社にとらばーゆ。