有機農産物の直販や有機農家とバイヤーを結ぶ坂ノ途中、第三者増資でマーケットを拡大

持続可能な農業の普及を目指す、株式会社坂ノ途中(京都市下京区/代表取締役 小野 邦彦)は、株式会社農林漁業成長産業化支援機構、京都大学イノベーションキャピタル株式会社など合計13社を引受先として総額6億100万円の第三者割当増資を実施した。生産者との連携強化・有機農産物のオンラインマーケット拡大という国内の活動と、東南アジアのコーヒー事業の活動に充てる予定だという。


坂ノ途中は、環境負荷の小さい農業に取り組む人を増やすことを目指し、関西を中心とした新規就農者の農産物を自社オンラインショップにて販売。さらに、有機農業者とそのバイヤーを結びつけるマッチングサービス「farmO」などを手がけている。

今回調達する資金の大部分は、農林水産省から農業競争力強化支援法に基づく事業再編計画の認定を受けた取り組みに関わるもの。
http://www.maff.go.jp/j/kanbo/nougyo_kyousou_ryoku/sienhou/attach/pdf/siennhou_ninntei-30.pdf

これまでの資金調達としては、シードラウンド(2012年12月/約4600万円)、シリーズAラウンド(2016年12月/約2億円)に続き3回目の実施。株式会社農林漁業成長産業化支援機構、Impact and Innovation,LLC、株式会社セラク、ナントCVC投資事業有限責任組合(出資者:南都銀行、ベンチャーラボインベストメント)、京信イノベーションC投資事業有限責任組合(出資者:京都信用金庫)、および京都大学イノベーションキャピタル株式会社、NECキャピタルソリューション株式会社、みずほキャピタル株式会社が運営するファンド等を引受先として、総額6億100万円の第三者割当増資を実施した。これにより、調達額は累計約8億4700万円となる。

事業概要

メイン事業 「野菜販売」について
日本で唯一、『新しく農業に飛び込む人(新規就農者)』のパートナーとして、野菜を中心とした食品ECを展開。提携先約200件のうち9割は新規就農者で、就農の壁になりやすい販路を弊社が担うことで、若者の農業参入を支える。就農を希望する人の約9割は、有機農業など環境負荷の小さい農業に興味を持っているため、こういった人たちを増やすことで持続可能な農業の普及を目指す。

→ 資金調達後
新規就農者ならではのリソース不足を補うツールの提供(栽培管理システム、農作業アシスト機器、自社便やネットワーク物流便拡大など)、旗艦店出店等による集客の強化、需要の安定化に取り組む。定期宅配(サブスクリプション)サービスの顧客離脱率は5~6%/月と業界最低水準を維持。これをさらに下げ、より安定させることで生産者の営農計画を立てやすくする。

新規事業(1)「farmO」について
有機農産物の生産者とバイヤーのマッチングサービスを一般社団法人「次代の農と食をつくる会」と連携して運営。2019年5月現在、424件の生産者と224件のバイヤーが登録しており、日本最大の有機農業者データベースとなっている。

→ 資金調達後
マッチング機能に加え、2019年に新たに受発注機能を追加。その後、請求・決済機能も追加予定。生産者は1件1件のバイヤーと交わしていた膨大なやりとりを「farmO」で一貫することができ、多様な販路開拓と事務コスト削減につながる。登録・利用は無料、決済時に数パーセントの手数料をとる想定。

新規事業(2) アグロフォレストリーを実践する「コーヒー事業」について
コーヒーの新たな産地として注目される東南アジアにおいて、各地域のニーズにあわせ、栽培方法や精製プロセスの見直しと高度化、資金面や販路構築のサポートを行っている。アグロフォレストリーと呼ばれる、森や林の中で農産物を育てる栽培手法を用いる。熟度の統一や発酵レベルの安定化など品質向上を図ることで、森林減少を止めつつ、山間地で暮らす人たちの所得確保を図っている。

→ 資金調達後
2016年、ラオスでの事業スタートから、2018年にはミャンマー、フィリピンにも進出。2019年にはタイ、イエメン、バリ、ネパール、中国と産地を広げる計画。産地では品質向上のプロジェクトを加速させ、日本国内を中心にコーヒーを販売します。国内ではアジアのスペシャルティコーヒーのマーケット拡大に取り組む。

<参考URL>
株式会社坂ノ途中
株式会社坂ノ途中Online Shop
farmO

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WRITER LIST

  1. 田牧一郎
    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
  2. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  3. 石坂晃
    石坂晃
    1970年生まれ。千葉大学園芸学部卒業後、九州某県の農業職公務員として野菜に関する普及指導活動や果樹に関する品種開発に従事する一方で、韓国語を独学で習得する(韓国語能力試験6級取得)。2023年に独立し、日本進出を志向する韓国企業・団体のコンサル等を行う一方、自身も韓国農業資材を輸入するビジネスを準備中。HP:https://sinkankokunogyo.blog/
  4. 川島礼二郎
    川島礼二郎
    1973年神奈川県生まれ。筑波大学第二学群農林学類卒業。フリーラインスの編集ライターとして、テクノロジーをキーワードに、農業雑誌・自動車雑誌などで執筆・編集活動中。
  5. 堀口泰子
    堀口泰子
    栄養士、食アスリートシニアインストラクター、健康・食育シニアマスター。フィットネスクラブ専属栄養士を経て独立。アスリートの食事指導や栄養サポートの他、離乳食から介護予防まで食を通じて様々な食育活動を行う。料理家としても活動し、レシピ提案、商品開発も担う。食事は楽しく、気負わず継続できる食生活を伝えることを信条とする。スポーツの現場ではジュニアの育成、競技に向き合うための心と体の成長に注力している。HP:https://eiyoushiyakko.jimdofree.com/
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