NTTアグリら、農産物流通DXで地球環境問題の解決に向けた共同実験を開始

株式会社神明ホールディングス(神明HD)、東果大阪株式会社、日本電信電話株式会社(NTT)、西日本電信電話株式会社(NTT西日本)、株式会社NTTアグリテクノロジーは、農産物流通にデジタルトランスフォーメーション(DX)をおこし、流通コストやフードロス、温室効果ガス削減など地球環境問題の抑制の実現に向けた共同実験を開始した。

本成果は、2021年11月16日~19日に開催する「NTT R&Dフォーラム」に出展される。


仮想世界、現実世界での取引を農産物流通に融合


農産物流通は卸売市場を通過する「市場流通」と、生産者などが購入者と直接取引を行う「市場外流通」に分類されるが、国産青果の約86%が市場流通で売買されることから、市場流通は日本の農産物流通において重要な役割を果たしている。

一方で、市場流通にかかわるステークホルダーが情報を相互に共有できていないために、生産者が農産物を都市部の大市場に輸送した結果、農産物が集まりすぎた場合は価格が低下し、余った農産物は周辺の市場へ転送されるという事態が起こる。それによる追加の輸送コスト、鮮度低下に加え、ドライバー不足のため配送自体が難しくなる状況にある。

また、非効率な輸送による地球環境への影響、新型コロナウイルスの感染拡大が、状況の悪化に拍車をかけており、変革の必要性が高まっている。ウィズコロナ、アフターコロナを見据え、情報を軸にした「極力農産物(モノ)を動かさない」新しい形の物流の仕組みが必要とされている。

これらを解決するために、農産物流通DXの共同実験は3つの方法で行われる。

1. 仮想世界(サイバー空間)
サイバー空間上に仮想市場を構築し、デジタルツインコンピューティングを用いた予測技術により「仮想相対取引」、「仮想競り」を実施する。

「仮想相対取引」では、卸売市場に集まる取引データや気象情報等による一般的な生産予測に加え、突発的なイベントや市場間の価格変動、コロナ渦における消費動向の変化等、複雑に絡み合った要素から特徴をとらえ、少ないインプット情報からでも瞬時にクラスタリングする未来予測を活用して、仮想空間上で売り手と買い手を結び付け、実際の取引希望日の数日から1週間程度前に売買を成立させるという。

「仮想競り」では、農産物の価値を決めるのに必要な品質の把握(色や形・艶、糖度・酸度、リコピン・GABAなどの機能性成分)をできるだけ正確に測定・数値化し、バイヤーが現地にその都度訪問して仕入れることなく、遠隔地から買い手が農産物の良し悪しを判断し、高付加価値商品の取引を行う。

2.現実世界(リアル空間)
ライフスタイルの変化によりニーズが急激している農産物の加工(カット・包装等)を一元的に行う加工工場を市場近隣に整備するとともに、デジタルツインコンピューティングを用いた予測情報により事前に労働者確保するなどの労働面での効率化を図ります(物流拠点整備)。

3.フードバリューチェーンエクスチェンジ
リアル空間で集めた情報をサイバー空間にある仮想市場に渡し、そこで行われた予測や解析の結果を再びリアル空間にフィードバックする。

上記(1)(2)を融合させ、関係するプレーヤーに様々な恩恵をもたらす。

例えば、生産者は需要に応じた農産物の生産(マーケットイン型農業)を行い、収益安定化を図りつつ物流コストを低減させ、卸売事業者は計画的な人員配置や他業務への人員の有効活用を行い、小売・消費者は生産情報をもとに販売計画を立てて安定した収入を得られ、鮮度の高い農産物を手に入れるなど、フードバリューチェーンに関わる人々が恩恵を受けられるしくみを実現する。

上記の取り組みに合わせて、自宅での食事の需要が高まる中、市場連動型の食材宅配サービスやdポイントを活用した消費者への新たな価値提供も検討されている。

農産物流通DXの全体概要


生産状況だけでなく、突発的な状況も含めて未来を予測した流通に


本実証には、生産者、卸・仲卸、小売など、フードバリューチェーンに関わるプレーヤーが参画。農産物流通DXに向けて取り組むとともに、以下の内容について検証・評価していくという。

1.仮想世界(サイバー空間)
  • 未来予測技術の検証:実際の農産物流通量と予測流通量の比較、分析・検証、予測精度向上に向けた改善

2.現実世界(リアル空間)
  • 加工人員手配効率化:予測技術の活用による市場内の加工人員の削減率
  • 配車効率化:同技術活用によるトラック積載率向上と台数削減率

3.フードバリューチェーンエクスチェンジ
  • ・品質評価技術の検証:おいしさ要素(甘味、塩味、酸味等)や機能性の測定、測定結果のサイバー空間上への伝達、仮想セリへの活用可否評価


予測技術の概要

地球環境問題の解決にも貢献


このような農産物流通DXにより、フードバリューチェーン全体の最適化を通じて、温室効果ガス削減や廃棄物の削減等、地球環境問題の解決に貢献するという。

温室効果ガス削減については、農産物流通DXサービス商用化を2024年頃に開始し、輸送トラックの積載率向上、流通ルート最適化、廃棄物の再利用により従来焼却で発生していた温室効果ガスの削減、輸送トラックの電動化、再生可能エネルギーの活用など他の施策も組み合わせることにより、日本の2050年のカーボンニュートラルの実現に貢献するために、全体の輸送量の約35%の削減などを目指すとしている。

廃棄物の削減については、本来廃棄される余った農産物や規格外品を需要・ニーズを持つ消費者に対してマッチングするとともに、市場や加工工場で余った食品残渣を回収して堆肥をつくり、農家に提供して安心安全な野菜づくりを支援するNTT西日本の「地域食品資源循環ソリューション」も活用して堆肥化し、農産物の再生産につなげる。

今後は、神明HD、東果大阪、NTTグループが連携して取り組みを深化させるとともに、連携パートナーを拡大し、全国およびグローバルにも展開しながら、人類の食料問題やフードセキュリティ確保、地球環境問題、生物多様性などSDGsも視野に入れた社会課題の解決に貢献したいという。

参画企業の声

 

神明グループ


「私たちはお米を通じて素晴らしい日本の水田、文化を守り、おいしさと幸せを創造して、人々の明るい食生活に貢献します」という企業理念のもと、1902年の創業当初から米穀卸売業を営み、現在は無菌包装米飯・炊飯米等の加工食品の製造販売、外食事業の展開等、お米の消費拡大に向けて国内外で事業領域を伸長させております。

また近年では農業従事者を取り巻く環境に対する直接的なアプローチとして、デジタルアグリの推進や種子開発を行う他、青果物、水産品等あらゆる食の分野で事業展開し、川上から川下までの『アグリフードバリューチェーン』の構築を目指すことで日本の食料自給率向上、グローバルでの食糧危機対応に貢献しています。

東果大阪


「日本の農業を守り、育て、未来にわたる安定供給を実現する」という基本理念のもと、大阪市中央卸売市場の1つである東部市場の青果物卸売業者として50年にわたり生産者と消費者を結びつけ、日本の食卓に農産物を届け続けてきました。

一方、昨今のライフスタイルの変化による消費者ニーズの多様化やドライバー不足、新型コロナウイルス感染拡大など、激変する環境変化においても安定的な青果調達ルートの確保に向けた取り組みも進めています。

NTTグループ


“Your Value Partner”として、事業活動を通じて、研究開発やICT基盤、人材等様々な経営資源や能力を活用しながら、パートナーの皆さまとコラボレーション(協業)しながら、デジタルトランスフォーメーションの推進により、社会的課題の解決をめざしています。

農業も重点分野の1つとして位置づけ、NTT研究所やグループ会社、農業や流通・販売、消費・食に関する象徴的なパートナーと地域に根付いた取り組みを進めています。


参画各社の役割分担



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WRITER LIST

  1. 堀口泰子
    栄養士、食アスリートシニアインストラクター、健康・食育シニアマスター。フィットネスクラブ専属栄養士を経て独立。アスリートの食事指導や栄養サポートの他、離乳食から介護予防まで食を通じて様々な食育活動を行う。料理家としても活動し、レシピ提案、商品開発も担う。食事は楽しく、気負わず継続できる食生活を伝えることを信条とする。スポーツの現場ではジュニアの育成、競技に向き合うための心と体の成長に注力している。HP:https://eiyoushiyakko.jimdofree.com/
  2. 大槻万須美
    管理栄養士・フードスタイリスト。楽しく食べて健康に。食の大切さを伝えるため、料理教室、バレエダンサーやアスリートのパーソナル栄養サポート、レシピ・コラムの提供など幅広く活動。子どもの頃の毎年の米作り経験から、身近な食体験の重要性についても実感し、おとなと子どもの食育サポートにも力を注いでいる。
  3. 田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
  4. 田中克樹
    32年間の農業出版社勤務を経て、2020年末、故郷の八ヶ岳南麓に帰郷。仲間と共に農業・福祉系NPOを立ち上げ、遊休農地・耕作放棄地を再生し、心身の癒しや健康づくりにつながる有機無農薬の体験型農園づくりに取り組む。NPOでは田んぼ除草にホバークラフトを活用したスマート技術を開発中。農と風土(フード)を愛する人たち向けのブックカフェ・居酒屋を開くのが夢。
  5. 山田正美
    大阪工業大学大学院修了。福井県職員として、農業試験場研究員、専門技術員、農業技術経営課長、農林水産部技幹を経て退職。現在、日本生産者GAP協会常務理事、日本農業サポート研究所主席コンサルタント。
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