イエバエ技術開発のムスカ、経済産業省推進の「J-Startup」支援プログラムに選定

2019年6月25日、昆虫を利用したリサイクル技術を有する株式会社ムスカは、官民支援のプログラムである「J-Startup」に選出されたことを報告。スタートアップ育成により、今後は日本ならびに海外展開へのさらなる加速を目指して舵をとる方針だ。


J-Startupムスカは、イエバエの幼虫を用いて家畜の排泄物や食品残渣などの有機廃棄物を分解し、1週間程度で有機肥料や飼料に転換する100%バイオマスリサイクルシステムを開発してきた。

同社は、経済産業省が推進する日本のスタートアップの海外展開支援プログラム「J-Startup2019」において、49社のうちの1社に採択されたことを発表。

「J-Startup」は、スタートアップ企業を育成するための官民支援のプログラムだ。グローバルに活躍するスタートアップを創出し、革新的な技術やビジネスモデルにより、世界に新しい価値を生み出すことを目的に設立。実績あるベンチャーキャピタリストやアクセラレータ、大企業の新事業担当者などの外部有識者からの推薦に基づいてJ-Startup企業を選定し、大企業やアクセラレータなどの「J-Startup Supporters」とともに集中支援を行う。


経産省 J-Startup × MUSCA
「J-Startup2019 採択企業マップ」

地域別採択企業


「J-Startup2019」では、都道府県別に東京都31社、福岡県3社、宮城県・山形県・大阪府・愛知県2社、北海道・岩手県・福島県・千葉県・静岡県・兵庫県・宮城県1社の計49社を選出した。

ムスカはこのプログラムへの参加を通じ、グローバル展開へ普及拡大を目指すとともに、その礎となる日本での1号プラントの建設に向け、パートナ企業とともに取り組んでいく。
今後も世界を目指すスタートアップ企業が各地から増え、さまざまな業種の大手企業とのオープンイノベーションにより、持続可能な開発目標(SDGs)を推進する社会やビジネスの実現に取り組む意向だ。


昆虫の力を用いた循環型社会を目指して



微生物を媒介して有機性廃棄物から発酵堆肥をつくる期間は、通常2〜3カ月、完全堆肥は1年以上かかる。また、そのプロセスにおいては温暖化ガスや硝酸態窒素が生成し、植物から土に浸透していく中で、土壌の腐敗や地下水の汚染を招きやすくなる。

これに対して、ムスカが確立したイエバエによる100%バイオマスリサイクルシステムは、1週間程度で質の高い有機肥料や飼料に転換し、温暖化ガスの発生や硝酸態窒素の検出もほとんどないという。その上、イエバエからできた肥料で野菜を育てると甘くておいしい作物に成長し、収穫量の増加も見込めるとのこと。さらには土壌の微生物バランスが最適化することも実証されている。

ムスカは、これらの技術を廃棄物問題や世界の食糧危機の解消に役立て、新たな循環型社会に向けたソリューションシステムを構築していくとのことだ。

代表取締役CEOのコメント

代表取締役CEO 流郷 綾乃(りゅうごう あやの)

「2019年は、昆虫産業元年に!」と申し上げておりましたが、このプログラムに採択されたことも一つそれといえる要素が増えたと思います。今後も昆虫産業元年といわれる所以を増やしてまいります。さらなるMUSCAの展開を期待していただければ光栄です。

<参考サイト>
経済産業省 「J-Startup2019」
株式会社ムスカ
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  1. 田牧一郎
    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
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    福田浩一
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    石坂晃
    1970年生まれ。千葉大学園芸学部卒業後、九州某県の農業職公務員として野菜に関する普及指導活動や果樹に関する品種開発に従事する一方で、韓国語を独学で習得する(韓国語能力試験6級取得)。2023年に独立し、日本進出を志向する韓国企業・団体のコンサル等を行う一方、自身も韓国農業資材を輸入するビジネスを準備中。HP:https://sinkankokunogyo.blog/
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