農研機構ら、タマネギの品種育成を効率化するDNAマーカー選抜技術を開発

農研機構は、東北大学、山口大学、京都産業大学、龍谷大学、国立遺伝学研究所、かずさDNA研究所らと行った共同研究で、タマネギの品種育成を効率化する手法を開発した。

葉や根などの細胞内で働く発現遺伝子に着目


従来の品種育成では、まず多くの個体を栽培し、形質の調査や有望な個体の選出を繰り返すことが必要であり、長い時間と労力を費やしてきた。この工程を効率化するためには、DNAの違いを検出するDNAマーカーや、有用な形質を持つ個体を苗の段階で判別できる選抜マーカーの開発が望まれている。

近年は、大量のDNA情報を解析できる次世代シーケンサーが登場したことで、多くの野菜で選抜マーカーの開発が進んでいるという。

しかし、タマネギは野菜の中で最も大きいゲノムサイズであり、他の野菜と同じ手法を用いた分析方法では、莫大な時間や費用が必要になることから、選抜マーカーの開発が遅れていた。

タマネギのゲノムサイズ
出典:https://www.naro.go.jp/publicity_report/press/laboratory/nivfs/154759.html

そこで、農研機構らの研究グループは、タマネギの葉や根などの細胞内で働く発現遺伝子に着目。

研究では、球の大きさや収穫時期が異なる2つの品種を対象に、葉の発現遺伝子の配列情報を網羅的に調査して、品種間で配列に違いがあった441個の発現遺伝子を特定し、8本の染色体全体をカバーするDNAマーカーセットを作成した。

8本の染色体全体をカバーするDNAマーカーセット
出典:https://www.naro.go.jp/publicity_report/press/laboratory/nivfs/154759.html

その後、192個体のサンプルから抽出したDNAと作成したDNAマーカーセットを用いたPCRを実施して、各個体のPCR産物に標識配列を付加した後、すべてのPCR産物を一つにまとめて次世代シーケンサーで解析。

すべてのPCR産物を一つにまとめて解析
出典:https://www.naro.go.jp/publicity_report/press/laboratory/nivfs/154759.html

その結果、従来の手法の2分の1以下の日数、3分の1以下の費用で、染色体全体のDNA多型を分析することに成功したという。

従来の分析法との比較
出典:https://www.naro.go.jp/publicity_report/press/laboratory/nivfs/154759.html

今後は、この技術を活用して耐病性や収量、大玉性など産地や実需者のニーズに対応した選抜マーカーの開発を進めていく予定とのこと。


農研機構
https://www.naro.go.jp/index.html
東北大学
https://www.tohoku.ac.jp/japanese/
山口大学
https://www.yamaguchi-u.ac.jp/
京都産業大学
https://www.kyoto-su.ac.jp/
龍谷大学
https://www.ryukoku.ac.jp/
国立遺伝学研究所
https://www.nig.ac.jp/nig/ja/
かずさDNA研究所
https://www.kazusa.or.jp/
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  1. 田牧一郎
    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
  2. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  3. 石坂晃
    石坂晃
    1970年生まれ。千葉大学園芸学部卒業後、福岡県の農業職公務員として野菜に関する普及指導活動や果樹に関する品種開発に従事する一方、韓国語を独学で習得(韓国語能力試験6級)。退職後、2024年3月に玄海農財通商合同会社を設立し代表に就任、日本進出を志向する韓国企業・団体のコンサルティングや韓国農業資材の輸入販売を行っている。会社HP:https://genkai-nozai.com/home/個人のブログ:https://sinkankokunogyo.blog/
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    川島礼二郎
    1973年神奈川県生まれ。筑波大学第二学群農林学類卒業。フリーラインスの編集ライターとして、テクノロジーをキーワードに、農業雑誌・自動車雑誌などで執筆・編集活動中。
  5. 堀口泰子
    堀口泰子
    栄養士、食アスリートシニアインストラクター、健康・食育シニアマスター。フィットネスクラブ専属栄養士を経て独立。アスリートの食事指導や栄養サポートの他、離乳食から介護予防まで食を通じて様々な食育活動を行う。料理家としても活動し、レシピ提案、商品開発も担う。食事は楽しく、気負わず継続できる食生活を伝えることを信条とする。スポーツの現場ではジュニアの育成、競技に向き合うための心と体の成長に注力している。HP:https://eiyoushiyakko.jimdofree.com/
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