グランドグリーン、植物のゲノム編集に関する新技術「Promoter AI™」の基本特許を取得

アグリバイオベンチャーのグランドグリーン株式会社は、植物のプロモーター領域のゲノム編集に関するプラットフォーム技術「Promoter AI™」を開発し、AIとゲノム編集技術を活用した基幹部分についての基本特許を取得したと発表した。


ゲノム編集で付与できる形質のバリエーション拡大に期待


グランドグリーン株式会社は、研究開発型のアグリバイオスタートアップ。あらゆる作物・品種でゲノム編集技術の利用を可能にすることで、植物育種産業におけるゲノム編集の標準技術化を推進している。現在は、トマトやイネを始めとした10種類以上の作物において、ゲノム編集技術の適用に成功しているという。

同社は、2023年にライセンスインした「CRISPR-Cas9」や当社オリジナルのゲノム編集kit「3GE」をはじめとした各種ゲノム編集ツールに加え、汎用的デリバリー技術「gene App™」を活用し、研究開発から商用化までワンストップで植物の品種開発を行っている。


ゲノム編集によって植物に形質を付与するには、コーディングリージョン(CDS) 内に変異を導入し、フレームシフトにより遺伝子の機能を欠損させるloss-of-function法を用いるのが主流となっている。

一方で、標的の遺伝子の発現量を上昇させることで機能強化を図ったり、あるいは発現量を僅かに残すことでノックアウトに起因するサイドエフェクトを抑制するような方法が考えられ、ゲノム編集で付与できる形質のバリエーションを大きく広げることが期待されているという。

そのような方法の1つとして考えられるのが、CDSではなく、プロモーター領域を編集するという方法だ。

遺伝子発現強度を決定しているのはプロモーターやエンハンサーといった領域であることから、この領域の塩基配列を改変することで、遺伝子の機能はそのままに、発現量を上下できると考えられている。

同社では、「Promoter AI™」に関する本特許で開示されるように、AIを活用した予測システムに基づき、特定の遺伝子のプロモーター領域を編集することで、遺伝子の機能(発現量)を上昇または低下できることを実証している。


今後は、「Promoter AI™」について欧米等でも権利化を目指し、グローバルでの保護を目指していくという。また、この作物ゲノム編集技術および「Promoter AI™」を用いた新たな作物品種の共同開発パートナーを募集している。


特許概要
特許番号:特許第7551189号
発明の名称:プロモーター活性の予測方法とその予測結果に基づくプロモーターの改変方法
特許出願日:2024年1月10日
特許取得日:2024年9月6日
特許権者 :グランドグリーン株式会社


グランドグリーン株式会社
https://www.gragreen.com/
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  1. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
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    北島芙有子
    トマトが大好きなトマト農家。大学時代の農業アルバイトをきっかけに、非農家から新規就農しました。ハウス栽培の夏秋トマトをメインに、季節の野菜を栽培しています。最近はWeb関連の仕事も始め、半農半Xの生活。
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    柏木智帆
    米・食味鑑定士/お米ライター/ごはんソムリエ神奈川新聞の記者を経て、福島県の米農家と結婚。年間400種以上の米を試食しながら「お米の消費アップ」をライフワークに、執筆やイベント、講演活動など、お米の魅力を伝える活動を行っている。また、4歳の娘の食事やお弁当づくりを通して、食育にも目を向けている。プロフィール写真 ©杉山晃造
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    鈴木かゆ
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    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
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