農研機構、バイオマスなど様々な活用が期待される「オギススキ」の新品種を開発

農研機構は、バイオマス原料として有用なオギススキの新品種(MB-1・MB-2)の開発に成功した。

草地造成に掛かる労力を大幅に軽減


オギススキは、イネ科ススキ属の植物であるオギとススキが自然交配して生まれた日本にも自生する植物。海外ではジャイアントミスカンサスと呼ばれボイラーの燃焼材などに使われているが、日本では利用が進んでいないという。

その要因の一つとして、オギススキは不稔性植物で種子の生産ができないため、多数の株を増殖して移植する必要があるなど、草地の造成に多くの時間とコストが掛かるという問題点があった。

農研機構が行った研究では、日本各地に自生するオギススキの系統を収集して、特性評価や交配育種を実施。
その結果、株の広がりが速く、収量性に優れ、雑草の侵入が少ない品種(MB-1・MB-2)の開発に成功した。

既存品種・MB-1・MB-2の移植2年目の草勢。
既存品種と比較して、株の広がりが2倍程度速いため、移植する苗の数を通常の4分の1に減らすことができる。
(2021年10月15日撮影・盛岡市)
出典:https://www.naro.go.jp/publicity_report/press/laboratory/tarc/151373.html#s1

MB-1・MB-2・既存品種の1年目~3年目までの株幅。
(調査日:1年目2018年11月14日・2年目2019年11月12日・3年目2020年11月18日)
出典:https://www.naro.go.jp/publicity_report/press/laboratory/tarc/151373.html#s1

MB-1・MB-2・既存品種の1~3年目までの乾物収量。
(調査日:1年目2018年11月14日・2年目2019年11月12日・3年目2020年11月18日)
出典:https://www.naro.go.jp/publicity_report/press/laboratory/tarc/151373.html#s1

MB-1・MB-2・既存品種の1年目の雑草の乾物重量。(調査日:2020年11月18日)
出典:https://www.naro.go.jp/publicity_report/press/laboratory/tarc/151373.html#s1

栽培方法は、地下茎を10センチ程度に小さく株分けして苗を作り、移植して草地を造成していく流れで、積雪前の11月頃に全面刈りのコーンハーベスタ等を用いて収穫作業を行うのが良いとのこと。

苗の移植の様子。(2021年5月24日撮影)
出典:https://www.naro.go.jp/publicity_report/press/laboratory/tarc/151373.html#s1

育苗の様子。(2022年4月13日撮影)
出典:https://www.naro.go.jp/publicity_report/press/laboratory/tarc/151373.html#s1

コーンハーベスタを用いた収穫の様子。(2020年11月10日撮影※既存品種)

今後は、産業原料、耕作放棄地対策、畜産、キノコ菌床などへの活用も視野に、公設試験場や民間企業との連携を強化していく構えだ。


農研機構
https://www.naro.go.jp/
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  1. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  2. 北島芙有子
    北島芙有子
    トマトが大好きなトマト農家。大学時代の農業アルバイトをきっかけに、非農家から新規就農しました。ハウス栽培の夏秋トマトをメインに、季節の野菜を栽培しています。最近はWeb関連の仕事も始め、半農半Xの生活。
  3. 柏木智帆
    柏木智帆
    米・食味鑑定士/お米ライター/ごはんソムリエ神奈川新聞の記者を経て、福島県の米農家と結婚。年間400種以上の米を試食しながら「お米の消費アップ」をライフワークに、執筆やイベント、講演活動など、お米の魅力を伝える活動を行っている。また、4歳の娘の食事やお弁当づくりを通して、食育にも目を向けている。プロフィール写真 ©杉山晃造
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    鈴木かゆ
    1993年生まれ、お粥研究家。「おかゆ好き?嫌い?」の問いを「どのおかゆが好き?」に変えるべく活動中。お粥の研究サイト「おかゆワールド.com」運営。各種SNS、メディアにてお粥レシピ/レポ/歴史/文化などを発信中。JAPAN MENSA会員。
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    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
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