「農林水産物・食品の輸出実績」2019年上半期2.9%増、輸出力拡大も追い風ならず

農林水産省は8月9日、2019年1月〜6月期の「農林水産物・食品の輸出実績(速報値)」において、上半期の輸出額が前年同期比2.9%増の4,486億円だったと公表した。前年同期の伸び率15.2%に比べ約12ポイント沈み、国が掲げる「1兆円輸出」からはやや遠のいた格好だ。


年間輸出目標1兆円に向けてやや足踏み

政府は、農林水産業の輸出力強化を図るため、 「2019年の農林水産物・食品の輸出額1兆円」を成長戦略に掲げている。輸出額実績が7,502億円に拡大した2016年に、近年における輸出額の伸び率を鑑み、2020年の目標年を1年間前倒しした形だ。

出典:農林水産省Webサイト(http://www.maff.go.jp/j/press/shokusan/kaigai/attach/pdf/190809-3.pdf)

2018年の輸出額は昨年比12.4%増の9,068億円と、6年連続で過去最高額を更新。輸出目標1兆円の達成が射程内に入ったものの、2019年上半期の輸出額が伸び悩んでいる。

産業別に、「農産物」が前年同期比9.0%増の2,864億円、「林産物」が4.3%増の193億円となった一方、「水産物」は7.5%減の1,430億円と苦戦を強いられた。また、月ごとの伸び率が最も高かったのは2019年2月の14.7%増で、唯一の10%超えとなった。

その他は6%増に留まった一方で、1月と5月は7〜8%減を記録。前年割れが響き、昨年と同程度の伸び率を引き継ぐには至らなかった。

和食ブームで日本酒・牛肉・米などが好調

出典:農林水産省Webサイト(http://www.maff.go.jp/j/press/shokusan/kaigai/attach/pdf/190809-4.pdf)

上半期の品目別輸出額のうち、最も多くなったのは日本酒を含むアルコール飲料や調味料などの「加工食品」で1,618億円。次いで、不漁により前年同期比が大きく落ち込み、「水産物」が1,114億円となった。

また、たばこや緑茶などの「その他農産物」が527億円、肉類や乳製品などの「畜産品」が327億円、「穀物等」が218億円と続いている。そのうち、世界的な和食ブームを受けて、牛肉・鶏卵・米といった品目が軒並み20%増と存在感を放った。

一方、「野菜・果物等」が174億円に留まり、いちごやもも、なしなどの果物が昨年の水準を大きく下回ったほか、品目別に「その他農産物」の花きが23.6%ものマイナスに沈んだ。

政府は2019年6月4日に、農産物輸出拡大のための関係閣僚会議をひらき、一貫して輸出目標1兆円の実現を推進している。今後は新たな組織の設置と体制整備を行い、地方自治体や事業者との連携も促進していく。

目標金額の達成まで、期間は残り4カ月。2018年の輸出額実績9,068億円を前提に、必要となる10~20%の伸び率をどのように積み上げていくか。官民一体での徹底した対策が求められている。


<参考URL> 
農林水産省
農林水産物・食品の輸出額の推移
農林水産物の月別輸出金額の推移
2019年の農林水産物・食品輸出額品目別
令和元年上半期分貿易統計(確速)
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  1. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  2. さとうまちこ
    さとうまちこ
    宮城県の南の方で小さな兼業農家をしています。りんご農家からお米と野菜を作る農家へ嫁いで30余年。これまで「お手伝い」気分での農業を義母の病気を機に有機農業に挑戦すべく一念発起!調理職に長く携わってきた経験と知識、薬膳アドバイザー・食育インストラクターの資格を活かして安心安全な食材を家族へ、そして消費者様に届けられるよう日々奮闘中です。
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    北島芙有子
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    川島礼二郎
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    柏木智帆
    米・食味鑑定士/お米ライター/ごはんソムリエ神奈川新聞の記者を経て、福島県の米農家と結婚。年間400種以上の米を試食しながら「お米の消費アップ」をライフワークに、執筆やイベント、講演活動など、お米の魅力を伝える活動を行っている。また、4歳の娘の食事やお弁当づくりを通して、食育にも目を向けている。プロフィール写真 ©杉山晃造
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