「水稲栽培の中干し期間延長」が温室効果ガス削減促進制度「J-クレジット制度」に承認

農林水産省は、「水稲栽培による中干し期間の延長」が、J-クレジット制度の新たな方法論に承認されたと発表した。

J-クレジット制度


J-クレジット制度とは、温室効果ガスの排出削減量や吸収量を「クレジット」として受け取れる制度のことである。

出典:https://japancredit.go.jp/about/outline/

「クレジット]を受け取るためには、J-クレジット制度が承認した方法論を活用することが条件で、農業分野では今回承認された「水稲栽培による中干し期間の延長」のほか、「牛・豚・ブロイラーへのアミノ酸バランス改善飼料の給餌」、「家畜排せつ物管理方法の変更」、「茶園土壌への硝化抑制剤入り化学肥料又は石灰窒素を含む複合肥料の施肥」、「バイオ炭の農地施用」の4つの方法論が承認されている。

水田のメタンガスの発生量を3割削減


今回の承認は、農業団体および水管理システム・営農支援アプリ関係企業から寄せられた相談を基に実施したプロジェクトの成果を受けてのもの。

プロジェクトでは、「中干し期間の延長の定義」と「排出量の算定」の2つを論点にした研究を実施。
その結果、水田の中干しの期間を7日間延長することで、CO2の25倍の温室効果があるといわれるメタンガスの発生量を3割削減することができる事実が判明したという。

水田のメタンガス発生の仕組み
出典:https://www.maff.go.jp/j/press/kanbo/b_kankyo/attach/pdf/230301-1.pdf

「水稲栽培による中干し期間の延長」のイメージ
出典:https://www.maff.go.jp/j/press/kanbo/b_kankyo/attach/pdf/230301-1.pdf

施行は4月中旬の予定で、水田の中干し期間を直近2カ年以上の実施日数の平均より7日間以上延長し、所定の審査を受ければ、削減量分の「クレジット」が与えられる。

検証時の確認資料(例)
出典:https://www.maff.go.jp/j/press/kanbo/b_kankyo/attach/pdf/230301-1.pdf

農林水産省は、J-クレジットに承認されている方法論の中でも取り組みやすい「中干し期間の延長」が追加されたことで、課題となっている水田からのメタン排出削減を加速する狙いだ。



農林水産分野のJ-クレジット制度
https://www.maff.go.jp/j/kanbo/kankyo/seisaku/climate/jcredit/top.html
J-クレジット制度方法論 「水稲栽培による中干し期間の延長」
https://www.maff.go.jp/j/press/kanbo/b_kankyo/attach/pdf/230301-2.pdf
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  1. 田牧一郎
    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
  2. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  3. 石坂晃
    石坂晃
    1970年生まれ。千葉大学園芸学部卒業後、福岡県の農業職公務員として野菜に関する普及指導活動や果樹に関する品種開発に従事する一方、韓国語を独学で習得(韓国語能力試験6級)。退職後、2024年3月に玄海農財通商合同会社を設立し代表に就任、日本進出を志向する韓国企業・団体のコンサルティングや韓国農業資材の輸入販売を行っている。会社HP:https://genkai-nozai.com/home/個人のブログ:https://sinkankokunogyo.blog/
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    川島礼二郎
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    堀口泰子
    栄養士、食アスリートシニアインストラクター、健康・食育シニアマスター。フィットネスクラブ専属栄養士を経て独立。アスリートの食事指導や栄養サポートの他、離乳食から介護予防まで食を通じて様々な食育活動を行う。料理家としても活動し、レシピ提案、商品開発も担う。食事は楽しく、気負わず継続できる食生活を伝えることを信条とする。スポーツの現場ではジュニアの育成、競技に向き合うための心と体の成長に注力している。HP:https://eiyoushiyakko.jimdofree.com/
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