国際農研ら研究グループ、高CO2環境で稲を増収させる「コシヒカリ」由来の遺伝子を発見

国際農研、農研機構、名古屋大学、横浜市立大学、理化学研究所、明治大学、かずさDNA研究所らの共同研究グループが、コシヒカリに代表される日本の稲の品種に、大気中のCO2濃度が上昇すると稲の穂数が増える遺伝子があることを発見した。

高CO2環境下でのみ増収することが明らかに


研究では、遺伝子の塩基配列情報などを絞り込む手法であるマップベースクローニングを用いて、稲の穂数を増やす遺伝子(MP3)をコシヒカリから同定。MP3の遺伝子配列(遺伝子型)は稲の品種ごとに異なるが、「コシヒカリ」に代表される日本の稲の一部は、海外の品種(インディカイネ)には見られない、穂数を増やす遺伝子型であることがわかった。

インディカ型のMP3を持つ多収品種である「タカナリ」の遺伝子と「コシヒカリ」の遺伝子を置き換えた「MP3置換タカナリ」を開発した結果、穂数が20~30%、総籾数が20%増加。さらに、将来予想されるCO2濃度を再現した水田環境で栽培した結果、開発した稲は「タカナリ」に比べて収量が約6%増加したという。

腋芽伸長の比較
コシヒカリ型MP3を持つ品種の方が、幼苗の段階で腋芽の伸長が旺盛なことがわかる

(A)稲の染色体イメージ図
(B)一株当たりの穂数の比較
(C)一穂の比較

(A)将来予想されるCO2濃度(約580ppm)を再現した水田(FACE区)※茨城県つくばみらい市
水田の一部に設置したチューブからCO2を放出し、外気よりもCO2濃度が高い環境を再現した。
(B)高CO2環境での増収効果
通常のCO2環境での栽培の場合、収量に明確な差は見られなかったとのこと

同研究グループは、今回の研究で得た成果を通じ、「将来の気候変動に対応した新たな品種の開発に貢献したい」としている。


国際農研
https://www.jircas.go.jp/ja
農研機構
https://www.naro.go.jp/
名古屋大学
https://www.nagoya-u.ac.jp/
横浜市立大学
https://www.yokohama-cu.ac.jp/
理化学研究所
https://www.riken.jp/
明治大学
https://www.meiji.ac.jp/
かずさDNA研究所
https://www.kazusa.or.jp/
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  1. 加藤拓
    加藤拓
    筑波大学大学院生命環境科学研究科にて博士課程を修了。在学時、火山噴火後に徐々に森が形成されていくにつれて土壌がどうやってできてくるのかについて研究し、修了後は茨城県農業総合センター農業研究所、帯広畜産大学での研究を経て、神戸大学、東京農業大学へ。農業を行う上で土壌をいかに科学的根拠に基づいて持続的に利用できるかに関心を持って研究を行っている。
  2. 槇 紗加
    槇 紗加
    1998年生まれ。日本女子大卒。レモン農家になるため、大学卒業直前に小田原に移住し修行を始める。在学中は、食べチョクなど数社でマーケティングや営業を経験。その経験を活かして、農園のHPを作ったりオンライン販売を強化したりしています。将来は、レモンサワー農園を開きたい。
  3. 沖貴雄
    沖貴雄
    1991年広島県安芸太田町生まれ。広島県立農業技術大学校卒業後、県内外の農家にて研修を受ける。2014年に安芸太田町で就農し2018年から合同会社穴ファームOKIを経営。ほうれんそうを主軸にスイートコーン、白菜、キャベツを生産。記録を分析し効率の良い経営を模索中。食卓にわくわくを地域にウハウハを目指し明るい農園をつくりたい。
  4. 田牧一郎
    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
  5. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
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