GreenCarbonとベトナム国家農業大学、水田由来メタンガス削減に向けた共同研究を開始

Green Carbon株式会社とベトナム国家農業大学は、ベトナムの水田由来のメタンガス削減によるカーボンクレジット創出に向けた共同研究を開始した。

Green Carbonが有するメタンガス測定技術やカーボンクレジット創出のノウハウと、ベトナム国家農業大学が有する稲作に関する技術・ノウハウを駆使することで、農家の収入を向上させつつメタンガスを削減し、世界の気候変動問題に貢献していくプロジェクトを実証予定だ。


削減目標量約30%以上の削減を目指す


Green Carbonは、高炭素固定種苗の研究開発をメインに事業を展開する日本の企業。カーボンクレジット(J-クレジット/ボランタリークレジット)の創出・登録・販売までをサポートする事業や、農業関連事業、環境関連事業、ESGコンサルティング事業なども実施している。

最近では、東南アジアや中南米など国外に向けた事業も展開しており、フィリピンやメキシコ、オーストラリアなどを対象に、水田のメタンガスを削減するプロジェクトの実証等にも取り組んでいる。

ベトナム国家農業大学は、1956年に農林業大学として設立されたベトナムで最も古い農業系の大学。2014年にハノイ農業大学からベトナム国家農業大学に改名されたことに伴い、教育省から農業・農村開発省の管轄に移管された。農学科、動物科学科、食品化学・技術学科、環境学科、経済・農村学科など14学部を有し、幅広い分野での教育・研究の交流が行われている。

東南アジア諸国は、米が主要農産物である国が多く、稲作が非常に盛んに行われているため、農業由来のメタンガス排出量がCO2換算で合計約2億5000万トン (東京都の年間排出量の約4倍)に上るという。

その中でもベトナムは、米の生産に係るメタンガス排出量が、農業由来の温室効果ガス排出量の約50%を占めている。また、農業が製造業に次いで多くの温室効果ガスを排出しているという。そのため、ベトナムでは条件付きで国内全体で2030年までに2億5080万トン削減(CO2換算)する目標を定めているが、その内、農業部門に対しては約1億3000万トン削減する目標を課している。

今回、この目標達成に向けて、両者は共同研究契約を締結し、稲作におけるメタンガス排出量の削減に向けた共同研究を開始した。

共同研究では、1ヘクタールの水田をA・B・Cの3つの圃場にわけ、以下の実験を行う。

  • 各圃場にメタンガスの排出量を測定するための3つのチャンバー装置を用意し測定量を比較検証
  • 各圃場のメタンガス排出量測定結果を元に、中干しやAWD (間断灌水)が、メタンガスの削減にどの程度効果的であるかを実証
  • それぞれの工数と削減効果を比較検討し、今後ベトナムで行うべき最適なメタンガス削減ソリューションを検証


多期作が一般的なベトナム全土の水田約700万ヘクタールでAWDを導入した場合、約5600万トン(水田1ヘクタール当たりCO2換算で4トンの削減として算出)の温室効果ガス削減が見込まれる。これをカーボンクレジット価格に換算すると、約560億円(1トンあたり1000円として算出)の経済価値を生み出すことになるという。

今回の共同研究を通じ、「ベトナムの農業部門における削減目標量の約30%以上の削減を目指す」としている。


Green Carbon株式会社
http://green-carbon.co.jp/
ベトナム国家農業大学
https://eng.vnua.edu.vn/
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  1. 加藤拓
    加藤拓
    筑波大学大学院生命環境科学研究科にて博士課程を修了。在学時、火山噴火後に徐々に森が形成されていくにつれて土壌がどうやってできてくるのかについて研究し、修了後は茨城県農業総合センター農業研究所、帯広畜産大学での研究を経て、神戸大学、東京農業大学へ。農業を行う上で土壌をいかに科学的根拠に基づいて持続的に利用できるかに関心を持って研究を行っている。
  2. 槇 紗加
    槇 紗加
    1998年生まれ。日本女子大卒。レモン農家になるため、大学卒業直前に小田原に移住し修行を始める。在学中は、食べチョクなど数社でマーケティングや営業を経験。その経験を活かして、農園のHPを作ったりオンライン販売を強化したりしています。将来は、レモンサワー農園を開きたい。
  3. 沖貴雄
    沖貴雄
    1991年広島県安芸太田町生まれ。広島県立農業技術大学校卒業後、県内外の農家にて研修を受ける。2014年に安芸太田町で就農し2018年から合同会社穴ファームOKIを経営。ほうれんそうを主軸にスイートコーン、白菜、キャベツを生産。記録を分析し効率の良い経営を模索中。食卓にわくわくを地域にウハウハを目指し明るい農園をつくりたい。
  4. 田牧一郎
    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
  5. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
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