坂ノ途中、有機農業の現状と課題をまとめた「有機農業白書vol.0」を公開

株式会社坂ノ途中は、有機農業の環境持続性についての考察や国内における課題と必要な支援策をまとめた「有機農業白書vol.0〜有機農業を広げる妥当性と必要な支援〜」を、有機農業の日である2023年12月8日に発表した。

今回発表した「vol.0」はあくまで序章という位置付けで、これをきっかけに情報を広く集め、今後正式な白書を定期的に発表していくという。


有機農業の現状と課題とは


坂ノ途中は、農薬や化学肥料不使用で栽培された農産物の販売などを行う農業ソーシャルベンチャー企業。少量不安定でも品質が良ければ高値で売れる仕組みを構築することで、環境負荷の小さい農業を行う生産者の増加を目指す。

今回、発表された「有機農業白書vol.0〜有機農業を広げる妥当性と必要な支援〜」は、「有機農業の拡大は環境持続性に貢献するか?」という問題に対し、「そもそも持続性の定義とは何なのか?」という問いからはじめ、有機農業と慣行農業が環境に与える影響の国際的な比較や日本国内に当てはめた場合の有効性などを解説。

新規就農者に焦点を当て、有機農業を広げるに当たって何が問題となっているのかを考察し、就農のための情報収集、具体的な準備、就農後という3つのステップにおいてどのような支援が必要なのかをまとめている。

なお、「有機農業白書」は有機農業を広げるために行動する人、もしくは行動したいが何をすれば良いかわからない人にとっての地図となることを目標にしたもので、今後定期的に発表していく予定とのこと。2024年1月からは全国の有機農業者を対象にしたアンケート調査も実施していく。

「有機農業白書vol.0」は下記ページより全文(PDF)を読むことができる。

「有機農業白書vol.0〜有機農業を広げる妥当性と必要な支援〜」
https://www.on-the-slope.com/corporate/wp-content/uploads/2023/12/OrganicAgricultureWhitePaper_0_20231208.pdf


「はじめに」より(一部抜粋)


この白書は、環境負荷の小さい農業を広めるためのものだ。有機農業は環境負荷が小さいと見なされているが、日本では広まっていない。有機農地の面積は、全農地面積の1%以下だ。しかし農林水産省は、2021 年に策定した「みどりの食料システム戦略」の中で、有機農地の面積を2050年までに 25%に上げるという目標を掲げた(農林水産省,2021)。

しかし、そもそもこの目標は妥当なものだろうか? 有機農業は本当に良いものなのだろうか? もし妥当なのだとしても、そのゴールに向かうための地図がない。その道中にどんな困難が予想されるのかもわからない。これでは、前に進もうにも進むことができない。

この白書は、ゴールの妥当性を検討し、ゴールに行くための地図を作ることを目指す。ただし、この白書で行われる検討の結果は、暫定的なものにすぎない。

系統的な試行錯誤と情報集積には、読者のみなさんの力が必要だ。みなさんがお持ちの情報を提供してくだされば、地図はどんどん精度を上げて、使えるものになっていく。そうなるように願いを込めて、坂ノ途中はこの白書を作っている。

執筆者について


・小松 光(Hikaru Komatsu)
東京大学大学院農学生命科学研究科博士課程修了。博士(農学)。大学・研究機関(東京大学、九州大学、京都大学、台湾大学など)で教育・研究に従事。世界銀行、国際連合教育科学文化機関などのアドバイザーも務めた。坂ノ途中に入社後は、研究室で坂ノ途中の事業の文明論的意味について考えている。白書vol.0 では、全体の企画・構成、2章の構成、2・3章の執筆を担当。

・平島 晴生(Haruo Hirashima)
静岡県立大学大学院 薬学研究科(修士・薬学)を卒業後、小野薬品工業株式会社に研究職として入社。医薬品の品質試験法の開発や新薬申請に必要なデータ取得の業務に従事した。その後、事業性評価やマーケティング、DXなどの業務に従事。現在坂ノ途中に出向中であり、主に研究室の事業開発・事業改善に従事。白書vol.0では、3章の構成と執筆を担当。

・樋口 雄飛(Yuhi Higuchi)
神戸大学大学院 自然科学研究科(修士・工学)を卒業後、株式会社野村総合研究所に経営コンサルタントとして入社。経営戦略・マーケティング戦略・業務改革等、業界・テーマ横断でコンサルティング業務に従事。その後、新生銀行グループにて信用リスク管理、データ・AI 利活用、DXなどに従事。坂ノ途中では取締役として、「坂ノ途中の研究室」を起点に、環境負荷の小さい農業の経営ハードルを下げるための事業開発・事業改善に従事。白書vol.0では、全体の企画・構成、3章の執筆を担当。

・横浜 美由紀(Miyuki Yokohama)
立命館大学国際関係学部卒業。株式会社ロフトワークなどでクリエイティブディレクターとしてHPのコンセプト策定や設計図作成、デザインディレクションやライティング業務などを行う。2018年に坂ノ途中に入社し、HPのリニューアルや運用を担当。「坂ノ途中の研究室」の発足に伴い、2022年1月よりセオリーオブ・チェンジや「坂ノ途中の報告書」の作成、インパクト調査・測定などに従事。白書vol.0では、全体の企画・構成、3章の執筆、表現の統一・調整を担当。

・渡邊 春菜(Haruna Watanabe)
東京工業大学環境・社会理工学院卒(修士・工学)。現在、同大学院博士課程在籍中。専門はランドスケープデザイン、景観工学。2021年にインターンとして坂ノ途中に入社。「坂ノ途中の研究室」の発足に伴い、2022年1月よりインパクト調査・測定、セオリーオブ・チェンジや「坂ノ途中の報告書」の作成に従事。白書vol.0では、全体の企画・構成、データ分析を担当。


株式会社坂ノ途中
https://www.on-the-slope.com/
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  1. 田牧一郎
    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
  2. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
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    石坂晃
    1970年生まれ。千葉大学園芸学部卒業後、福岡県の農業職公務員として野菜に関する普及指導活動や果樹に関する品種開発に従事する一方、韓国語を独学で習得(韓国語能力試験6級)。退職後、2024年3月に玄海農財通商合同会社を設立し代表に就任、日本進出を志向する韓国企業・団体のコンサルティングや韓国農業資材の輸入販売を行っている。会社HP:https://genkai-nozai.com/home/個人のブログ:https://sinkankokunogyo.blog/
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    川島礼二郎
    1973年神奈川県生まれ。筑波大学第二学群農林学類卒業。フリーラインスの編集ライターとして、テクノロジーをキーワードに、農業雑誌・自動車雑誌などで執筆・編集活動中。
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    堀口泰子
    栄養士、食アスリートシニアインストラクター、健康・食育シニアマスター。フィットネスクラブ専属栄養士を経て独立。アスリートの食事指導や栄養サポートの他、離乳食から介護予防まで食を通じて様々な食育活動を行う。料理家としても活動し、レシピ提案、商品開発も担う。食事は楽しく、気負わず継続できる食生活を伝えることを信条とする。スポーツの現場ではジュニアの育成、競技に向き合うための心と体の成長に注力している。HP:https://eiyoushiyakko.jimdofree.com/
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