ヤンマーマルシェとNTT Com、「水稲栽培における中干し期間延長」 によるJ-クレジットの販売を開始

ヤンマーマルシェ株式会社とNTTコミュニケーションズ株式会社(NTT Com)は、NTT Comが2024年1月26日に開催された「第58回J-クレジット制度認証委員会」においてJ-クレジットの認証を取得したことを受け、J-クレジットの販売を開始したと発表した。

両社は、水稲栽培における水田の中干し期間延長によるJ‐クレジットの創出や申請をサポートすることで、新たな農業モデルの構築を目指していく。


J-クレジット創出により持続可能な農業経営の実現へ


ヤンマーマルシェは、食材の生産から加工・流通・消費まで、食のバリューチェーンを一貫して支えるテクノロジーとサービスを提供する企業。長年培ってきたネットワークを活用し、生産物の付加価値向上や生産者と実需者のマッチングを行っている。

NTTコミュニケーションズは、通信事業者ならではのインフラを活かし、ネットワークやクラウドなどICTサービスを展開していて、気温・湿度・水位といった環境データを取得する農業向けのITセンサー「MIHARAS」の提供も行っている。

農林水産省では、持続可能な農業の実現に向け「みどりの食料システム戦略」を掲げており、その一環としてJ-クレジットの方法論のひとつである「水稲栽培における中干し期間延長」を策定した。J-クレジット制度とは、温室効果ガスの排出削減量を「クレジット」として国が認証し、取引を可能にするものだ。

両社は、この方法論に基づいた水稲栽培を行うことで、温室効果ガスの排出量削減や創出されたJ-クレジットの流通による新たな農業モデルの構築を目指している。両社の役割は以下のとおり。

NTTコミュニケーションズ
IoTセンサーやアプリを提供してJ-クレジット申請のサポートを行うことで、生産者の管理負担を軽減する。

ヤンマーマルシェ
営農支援と収穫した米のブランディング支援を行い、J-クレジット申請における生産者の負担軽減やビジネス拡大に貢献する。

2023年には、ヤンマーマルシェが契約する福井県と滋賀県の生産者の圃場において、多収・良食味米品種「にじのきらめき」を対象に中干し期間延長を実施し、J-クレジットの創出に取り組んできた。その結果、杉の木約5000本が1年間に吸収する量に相当する44t-CO2を削減できたという。また、収穫された玄米の品質は、一等米比率100%となっている。


参加した生産者の声:株式会社レイクスファーム(滋賀県)
「自然を相手にする私たちにとって、環境への配慮は今後の農業の持続を考える上で重要であり、中干し延長のような環境負荷低減に貢献する農法は積極的に取り入れたいと考えていました。昨今農業にさまざまな課題がある中、ヤンマーマルシェさんと今回一緒に取り組むことができ、とても心強く感じています。共に明日の日本の食と環境を支えるパートナーとして今後も宜しくお願いします」


参加した生産者の声:旭農園(福井県)
「中干し延長は、水稲栽培において排出されるメタンガスの発生を削減し、環境への影響を減らす仕組みとして効果が期待されています。今後、農家が環境に配慮した活動を行うことで、J-クレジットを取得できることは持続可能なビジネスモデルの一つの例として考えられるのではないかと思います」

今回の取り組みで収穫されたお米は、2024年4月にNTTドコモのdショッピングにて販売が開始される。また、株式会社StoryCrewと共同で、都内を中心にお弁当の販売も予定しているという。

今後は、福井県と滋賀県に加えて、青森県や新潟県、島根県など全国のパートナー生産者に「水稲栽培における中干し期間延長方法論」を用いた農法展開し、温室効果ガス排出量の削減に取り組んでいく。


ヤンマーマルシェ株式会社
https://www.yanmarmarche.com/
NTTコミュニケーションズ株式会社
https://www.ntt.com/index.html
SHARE

最新の記事をFacebook・メールで
簡単に読むことが出来ます。

RANKING

WRITER LIST

  1. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  2. さとうまちこ
    さとうまちこ
    宮城県の南の方で小さな兼業農家をしています。りんご農家からお米と野菜を作る農家へ嫁いで30余年。これまで「お手伝い」気分での農業を義母の病気を機に有機農業に挑戦すべく一念発起!調理職に長く携わってきた経験と知識、薬膳アドバイザー・食育インストラクターの資格を活かして安心安全な食材を家族へ、そして消費者様に届けられるよう日々奮闘中です。
  3. 北島芙有子
    北島芙有子
    トマトが大好きなトマト農家。大学時代の農業アルバイトをきっかけに、非農家から新規就農しました。ハウス栽培の夏秋トマトをメインに、季節の野菜を栽培しています。最近はWeb関連の仕事も始め、半農半Xの生活。
  4. 川島礼二郎
    川島礼二郎
    1973年神奈川県生まれ。筑波大学第二学群農林学類卒業。フリーラインスの編集ライターとして、テクノロジーをキーワードに、農業雑誌・自動車雑誌などで執筆・編集活動中。
  5. 柏木智帆
    柏木智帆
    米・食味鑑定士/お米ライター/ごはんソムリエ神奈川新聞の記者を経て、福島県の米農家と結婚。年間400種以上の米を試食しながら「お米の消費アップ」をライフワークに、執筆やイベント、講演活動など、お米の魅力を伝える活動を行っている。また、4歳の娘の食事やお弁当づくりを通して、食育にも目を向けている。プロフィール写真 ©杉山晃造
パックごはん定期便