台風被害の廃棄野菜をクラウドファンディングで販売 被災農家支援の「チバベジ」が法人化

千葉県に甚大な被害をもたらした台風15号・19号や、記録的大雨による被災農家への支援を行ってきた「チバベジ」が、「一般社団法人野菜がつくる未来のカタチ」を設立した。

千葉県農業に甚大な被害


台風15号による千葉県の農林水産被害額は過去最高の411億6700万円(10月4日付千葉県発表)にものぼり、暴風雨の影響から県内のビニールハウスの多くが、折れ曲がりや倒壊など甚大な被害を受け、その被害額は200億721万円といわれている。

その後に発生した台風19号や10月25日の記録的大雨による被害などもあり、冬野菜向けの苗植えさえできず、被災農家の多くは廃業か存続かの選択の岐路に立たされている。

倒壊したビニールハウス内でのトマト収穫(千葉県山武市)

被災したトマト畑

多くの被災農家を支援してきた「チバベジ」


チバベジは、台風15号の被災直後より直ちに被災農家の支援をスタート、被害に遭った延べ4500キロの廃棄野菜を買取り、完売を成功させた。
クラウドファンディングを活用し、地域住民の支援と協力を得ながら、17の農家や20の飲食店と連携しスーパーや飲食店に被害に遭った廃棄野菜を販売している。

代表理事の安藤共人氏(左)と鳥海孝範氏(右)

出荷対象にはならないが、味は美味しい廃棄野菜

「一般社団法人野菜がつくる未来のカタチ」を設立

チバベジでは、持続的な支援活動ならびに廃棄野菜の加工生産とブランディングを行うため、団体の法人化を決定。2019年10月23日に「一般社団法人野菜がつくる未来のカタチ」を設立した。

今後は、傷ついた農作物の買取量を増やしジャムやピクルスといった加工品の製造にも着手。クラウドファンディングを活用し加工のための資金を募集していく考えだ。

チバベジのブランド品であるトマトジュース(サンプル)

同社では、地域の飲食店と連携した加工品製造により野菜の直売以上の収益を確保。農家への利益還元も行いながら、持続的で全国で模倣可能な農家支援の形を組み立てていくという。

千葉県を起点に新たな農業のカタチを


今回の台風のような被災が、今後も何時どこで起こるかわからない中、被災対策の強化は官民一体となって取り組むべき課題のひとつだ。
災害対策とは農業支援であり、まちづくり支援や子育て支援でもある。地域活性のなかで進められているすべての取り組みは、少なからず連携することが求められている。

同社は、今後もフードロスの削減に取り組み、農作物が廃棄されず流通されることや被災時の農家支援など、多種多様な農作物の生産が持続的なまちづくりに繋がることを目的に、「千葉を起点とした新たな農業のカタチ」を標榜し事業を進めていく考えを示している。

国連が掲げる持続可能な開発目標(SDGs)に向け



同社では、クラウドファンディングの支援額に応じて、廃棄野菜の流通量、加工品生産量を増加させつつ、地域の自治体や大学との連携、協力企業を募りながら新規就農者支援も進めるという。

国連が掲げるSDGsの17の目標のうち、「2.飢餓をゼロに」「11.住み続けられるまちづくりを」「12.つくる責任 つかう責任」「13.気候変動に具体的な対策を」「15.陸の豊かさも守ろう」「17.パートナーシップで目標を達成しよう」の6項目に、SDGsに則した地方創生事業として取り組む考えだ。

<参考URL>
チバベジFacebook
SHARE

最新の記事をFacebook・メールで
簡単に読むことが出来ます。

RANKING

WRITER LIST

  1. 田牧一郎
    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
  2. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  3. 石坂晃
    石坂晃
    1970年生まれ。千葉大学園芸学部卒業後、九州某県の農業職公務員として野菜に関する普及指導活動や果樹に関する品種開発に従事する一方で、韓国語を独学で習得する(韓国語能力試験6級取得)。2023年に独立し、日本進出を志向する韓国企業・団体のコンサル等を行う一方、自身も韓国農業資材を輸入するビジネスを準備中。HP:https://sinkankokunogyo.blog/
  4. 川島礼二郎
    川島礼二郎
    1973年神奈川県生まれ。筑波大学第二学群農林学類卒業。フリーラインスの編集ライターとして、テクノロジーをキーワードに、農業雑誌・自動車雑誌などで執筆・編集活動中。
  5. 堀口泰子
    堀口泰子
    栄養士、食アスリートシニアインストラクター、健康・食育シニアマスター。フィットネスクラブ専属栄養士を経て独立。アスリートの食事指導や栄養サポートの他、離乳食から介護予防まで食を通じて様々な食育活動を行う。料理家としても活動し、レシピ提案、商品開発も担う。食事は楽しく、気負わず継続できる食生活を伝えることを信条とする。スポーツの現場ではジュニアの育成、競技に向き合うための心と体の成長に注力している。HP:https://eiyoushiyakko.jimdofree.com/
パックごはん定期便