九州大学ら、大気からCO2を回収できる「m-DAC」の施設園芸における社会実装に向け連携

国立大学法人九州大学、Carbon Xtract株式会社、全国農業協同組合連合会、双日株式会社、株式会社三菱UFJ銀行は、大気中の二酸化炭素を直接回収できる分離膜型DAC装置(m-DAC®)の施設園芸用途における早期社会実装に向けた連携協定を2024年3月13日に締結した。

m-DAC(R)装置イメージ(九州大学大学院芸術工学研究院 尾方研究室制作)

施設園芸の環境負荷低減を目指す


日本の農業界は、高齢化と労働力不足による生産量の減少により、国内の生産基盤を維持するための対策が急務となっている。一方で、地球温暖化は農業にも大きな影響を及ぼしていることから、農業者自らが持続可能な農業に向けた環境負荷低減への取り組みを進めていくことが求められている。

Carbon Xtractは、九州大学と双日の協業によって設立されたスタートアップで、m-DACの製品実用化と、その利活用を推進している。

m-DACは、従来のCO2分離膜よりも高いCO2透過性を持つナノ分離膜を使用しているのが特徴で、空気を膜でろ過するだけでCO2を回収できる技術だ。

施設園芸では、施設内のCO2の濃度を高めることで植物の光合成が促進され、農作物の収穫量を増加する効果が確認されている。m-DACを活用して大気中のCO2を回収し、農業用ハウスなどに設置した装置で施用することで、作物の収穫量の増加のみならず、脱炭素化にも貢献できるという。

Carbon Xtractと九州大学は、農業における広範囲なノウハウと農業者組合員ネットワークを持つ全農とともに、施設園芸における「サステナブルな農業の新しい形」の実現に向けた協議を進めてきた。そこに双日および三菱UFJ銀行を加えた形で、m-DACの社会実装を実現していく。

具体的には、全農が持つ研究施設を活用し、施設園芸におけるm-DACを用いたCO2施用装置の開発や実証を行っていくとしている。双日および三菱UFJ銀行は、企業ネットワークやファイナンス機能、事業構築機能を駆使して、この技術の早期社会実装を目指す。

五者は、同装置の実装によるカーボンクレジットの創出も目指しており、「農業の脱炭素化」と「国内生産基盤の維持・向上」の双方への貢献を推進していくという。


国立大学法人九州大学
https://www.kyushu-u.ac.jp/

Carbon Xtract株式会社
https://c-xtract.com/
全国農業協同組合連合会
https://www.zennoh.or.jp/

双日株式会社
https://www.sojitz.com/jp/
株式会社三菱UFJ銀行
https://www.bk.mufg.jp/

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  1. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
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    北島芙有子
    トマトが大好きなトマト農家。大学時代の農業アルバイトをきっかけに、非農家から新規就農しました。ハウス栽培の夏秋トマトをメインに、季節の野菜を栽培しています。最近はWeb関連の仕事も始め、半農半Xの生活。
  3. 柏木智帆
    柏木智帆
    米・食味鑑定士/お米ライター/ごはんソムリエ神奈川新聞の記者を経て、福島県の米農家と結婚。年間400種以上の米を試食しながら「お米の消費アップ」をライフワークに、執筆やイベント、講演活動など、お米の魅力を伝える活動を行っている。また、4歳の娘の食事やお弁当づくりを通して、食育にも目を向けている。プロフィール写真 ©杉山晃造
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    鈴木かゆ
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    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
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