レーダー衛星画像のAI自動解析、日本のスペースシフト社が実現可能に 農業での活用にも期待

衛星データ解析システムの開発を手がける株式会社スペースシフトは、ドイツ・ベルリンに拠点を置く衛星データプラットフォーム企業のUP42(ユーピーフォーティートゥー)と業務提携に合意した。

スペースシフトが開発したレーダー衛星データ解析技術を、UP42が運用する衛星データプラットフォーム「UP42」にて世界に提供する。2019年内にも全世界の「UP42」ユーザーに対して利用可能となる予定だ。

レーダー衛星データをAIによって自動解析可能に


近年、AIやビッグデータ処理、クラウドの普及を背景に、地球観測データの活用が様々な分野で進んでいる。特に、欧州における衛星データ利用プラットフォームの広がりは世界の中でも進んでおり、様々なプラットフォームが立ち上がっている。

このたび、スペースシフトが提携することとなったUP42は、9月17日にサービスが公開された衛星データプラットフォーム企業で、世界的な航空宇宙企業AIRBUS社の100%子会社として設立された。

これまで自動解析に活用されていた衛星データは、主に光学衛星による可視光を用いた衛星写真だったが、スペースシフトが開発した新たな方式では、専門家でも判読が難しいとされるレーダー衛星画像のAIによる自動解析を可能にした。


レーダー衛星は光学衛星と異なり、衛星から発するマイクロ波の反射により地表を見るため、独特なノイズがある画像になってしまう。そのため地表の様子を判読するためには特殊な知識を必要とした。

一方、太陽の光を必要としないため、雲で被われていても地表の様子を見ることができ、夜でも観測可能であるなど利点も多く、今後の衛星データ利用の拡大においては重要な存在である。

UP42のプラットフォームは、サービス公開当初からレーダー衛星を含む、15種類を超える様々な衛星データをプラットフォーム上のインターフェイスから容易に選択でき、処理の対象期間や範囲も直感的なインターフェイスで自由に設定可能。これらのデータを、様々なプロバイダーから提供されたアルゴリズムと組み合わせることで、ユーザーが望む処理をクラウド上ですべて完結して行うことも可能になっている。

これまでUP42にはレーダー衛星データの解析アルゴリズムは提供されておらず、今回スペースシフトが開発したレーダー衛星データ解析アルゴリズムが採用された。そのことにより、世界中のユーザーがレーダー衛星データの解析を自在に行うことができるようになるとしている。

新たに建設された建築物のみを抽出可能に


東南アジアなどの新興国における都市開発状況は正確な情報がなく、人工衛星からの観測により高精度な状況把握が行われることが期待されている。しかし、雲に覆われる時間が長いため、継続的な観測は困難とされてきた。

しかし、スペースシフトが開発したアルゴリズムは、雲を透過して観測ができるレーダー衛星の画像をAIを用いて解析することで、自動的に新たに建設された建築物のみを高精度に抽出することを可能にした。

UP42のプラットフォームには様々なレーダー衛星からのデータが供給される予定で、それぞれの衛星に最適化したアルゴリズムを提供、今後も世界中で需要が高まるレーダー衛星画像の自動解析技術をいち早く市場に投入していく。ビッグデータやクラウド処理が重要視されるスマート農業においても、大きな進化が期待されている。

<参考URL>
株式会社スペースシフト
UP42
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  1. 田牧一郎
    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
  2. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  3. 石坂晃
    石坂晃
    1970年生まれ。千葉大学園芸学部卒業後、福岡県の農業職公務員として野菜に関する普及指導活動や果樹に関する品種開発に従事する一方、韓国語を独学で習得(韓国語能力試験6級)。退職後、2024年3月に玄海農財通商合同会社を設立し代表に就任、日本進出を志向する韓国企業・団体のコンサルティングや韓国農業資材の輸入販売を行っている。会社HP:https://genkai-nozai.com/home/個人のブログ:https://sinkankokunogyo.blog/
  4. 川島礼二郎
    川島礼二郎
    1973年神奈川県生まれ。筑波大学第二学群農林学類卒業。フリーラインスの編集ライターとして、テクノロジーをキーワードに、農業雑誌・自動車雑誌などで執筆・編集活動中。
  5. 堀口泰子
    堀口泰子
    栄養士、食アスリートシニアインストラクター、健康・食育シニアマスター。フィットネスクラブ専属栄養士を経て独立。アスリートの食事指導や栄養サポートの他、離乳食から介護予防まで食を通じて様々な食育活動を行う。料理家としても活動し、レシピ提案、商品開発も担う。食事は楽しく、気負わず継続できる食生活を伝えることを信条とする。スポーツの現場ではジュニアの育成、競技に向き合うための心と体の成長に注力している。HP:https://eiyoushiyakko.jimdofree.com/
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