ドローン防除受託業者が教える飛行ノウハウ【ドローン防除請負業者の本音 第4回】

弊社は畑作でのドローンによる農薬散布依頼をいただくことが多く、中山間地の傾斜地やうねりがある畑で作業することがよくあります。

その中で、障害物回避センサーやRTKを搭載しているドローンですと高さをある程度自動で調整してくれるのでいいですが、後発で出てきた低価格帯のドローンには障害物回避センサーやRTKはほとんど搭載されていないので、飛ばし方に工夫が必要になり、オペレーターの腕が試されます。

4回目の今回は、実際にさまざまな現場に合わせて臨機応変に散布してきた私の経験から、ドローンによる散布を効率良く行うためのノウハウをご紹介できればと思います。


1.中山間地でドローンを使う際のノウハウ


中山間地の畑作で飛ばす場合によくある傾斜地での散布では、高さの調整が非常に繊細になってきます。傾斜やうねり具合ごとに、個人的に作業しやすかった飛ばし方を、大きく分けて3つ紹介できればと思います。

緩やかな傾斜地の場合


傾斜角度が自分の身長よりも低い場合(私の目安は立ち位置から奥に行ったドローンと畑の間に奥の景色がちゃんと見える角度の場合)、どのようなルートで飛ばしても散布ムラが起きることはほとんどなく、きれいに散布できますし、ドローンの高度を一定に保つのも難しくはありません。

急な傾斜地の場合


傾斜角度が急な場合は、低い位置から飛ばしますと、傾斜具合が目視では非常にわかりにくく、高度や速度を一定に保つのが難しくなります。

そこで、傾斜角度が急な圃場を飛ばす時は、高い位置から低い位置へ飛ばすようにしています。ドローンをターンさせるときも、傾斜との距離を見やすく、また速度を一定に保ちながらの操作もしやすく、ムラもあまりなく散布できています。

また、傾斜地での散布では、ダウンウォッシュの強さが変わるので、速度と高さを微調整するように注意しています。高い位置から低い位置へ飛ばす時は、ダウンウォッシュは弱くなるので、速度を少し落として散布しています。

逆に低い位置から高い位置に飛ばす時は、ダウンウォッシュが強くなります。そのため、ダウンウォッシュの強さを見ながら速度と高度を上げ、作物へのダメージを軽減し、農薬の付き具合も同じになるように気をつけています。


うねりのある圃場の場合

(写真提供:Garden)

うねりのある圃場の場合、写真のように比較的緩やかな時はそのまま微調整で飛ばしてしまいますが、うねりがひどい場合は、下図のようにうねりに合わせてブロック分けし、散布ムラが少なくなるように心がけて行うようにしています。


ブロック分けした際は、ダウンウォッシュが圃場内に残る場合があるので、なるべく移動させながら高度を上げ、1カ所にダウンウォッシュが強く当たらないように注意しないといけません。


2.ドローンを飛ばすために必要な事務手続き


農家さんと現場でお話ししている中で、自分の畑であればいつでも自由に飛ばしていいと誤解している方が多いのですが、自分の畑であっても、いつでも自由に飛ばすためには飛行申請が必要な場合があります。

飛行の許可申請は、国土交通省のドローン情報基盤システム(通称:DIPS)から行えます。いま日本では、200グラム以上の無人航空機は、基本的には飛行の許可申請をしないといけないことになっています。

出典:国土交通省ホームページ(https://www.mlit.go.jp/koku/koku_tk10_000003.html)

許可申請が必要なケース


・空港等の周辺上空の空域
・150m以上の空域
・人口集中地区の上空
・夜間飛行
・目視外飛行
・人や建物と30m未満の距離での飛行
イベント上空飛行
・危険物輸送
・物件投下

農薬散布ドローンを使用する場合は、「危険物輸送」と「物件投下」が当てはまります。

この申請はそこまで難しくはないですが、メーカーなどが代理申請をしてくれる場合もありますので、しっかりと飛行前に申請しておくことをオススメします。また、申請自体に費用はかかりませんが、承認が下りるまでに時間がかかります(代理申請は費用がかかる場合があります)。

業務でさまざまな時間と場所を飛行させたい場合は、「包括申請」がオススメです。農薬散布では天候によって散布する日程などが変わる可能性があるので、日時と場所が限定される「個別申請」よりも柔軟に対応できるためです。

弊社の場合、飛行できる場所は「北海道」、許可等の期間は「許可日から1年間」、登録している無人航空機は「株式会社FLIGHTS製FLIGHTS-AG」、無人航空機を飛行させる者は「松橋充悟」、といった感じできちんと申請し、許可をいただいた上で散布作業を行っております。

当日になって、申請不備で作業ができない……なんてことにならないよう、飛行ルールを事前に確認しておくことが大切です。


3.事故予防のために散布前に把握しておきたいこと


スムーズな散布には作業事故を防ぐことが大切ですが、私にも、請負いだからこそ体験した“ヒヤリハット”な出来事もありました。

先日、中山間地域で散布作業を行っているときに、畑のそばに巣があったのか、鳥が威嚇してドローンに攻撃してこようとしており、危うくバードストライク(鳥がドローンに当たってドローンが墜落すること)を起こしそうになりました。そのほかにも、ドローンの音が蜂を刺激してしまい、巣から大量に蜂が出てきてドローンに攻撃してきたりもしました。

作業事故を減らすためにも、初めて訪れる圃場では、ある程度の周辺環境の状況を事前に依頼主の農家さんに聞き込みするなどして、把握しておくことが大切だなと改めて痛感いたしました。


まとめ


最後に参考として、農薬散布ドローンと撮影用などの一般的なドローンの違いを明記しておきます。農薬散布ドローンは撮影用に比べて圧倒的に大型のため、操作もかなり変わってきます。

撮影用ドローンに慣れていたとしても、しっかりメーカーの講習などを受けて、動きの違いを把握した上で農薬散布をドローンの操縦を行ってください。


また、ドローン全体に言えますが、墜落時の危険性からバッテリー残量には気をつけ、あまり無理には飛行させず、早めのバッテリー交換を行うことも大切です。


ドローン情報基盤システム
https://www.dips.mlit.go.jp/portal/
合同会社Garden
https://gardenllc-dr.amebaownd.com/
SHARE

最新の記事をFacebook・メールで
簡単に読むことが出来ます。

RANKING

WRITER LIST

  1. 堀口泰子
    栄養士、食アスリートシニアインストラクター、健康・食育シニアマスター。フィットネスクラブ専属栄養士を経て独立。アスリートの食事指導や栄養サポートの他、離乳食から介護予防まで食を通じて様々な食育活動を行う。料理家としても活動し、レシピ提案、商品開発も担う。食事は楽しく、気負わず継続できる食生活を伝えることを信条とする。スポーツの現場ではジュニアの育成、競技に向き合うための心と体の成長に注力している。HP:https://eiyoushiyakko.jimdofree.com/
  2. 大槻万須美
    管理栄養士・フードスタイリスト。楽しく食べて健康に。食の大切さを伝えるため、料理教室、バレエダンサーやアスリートのパーソナル栄養サポート、レシピ・コラムの提供など幅広く活動。子どもの頃の毎年の米作り経験から、身近な食体験の重要性についても実感し、おとなと子どもの食育サポートにも力を注いでいる。
  3. 田牧一郎
    たまきいちろう。68歳。日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
  4. 田中克樹
    たなかかつき。32年間の農業出版社勤務を経て、2020年末、故郷の八ヶ岳南麓に帰郷。仲間と共に農業・福祉系NPOを立ち上げ、遊休農地・耕作放棄地を再生し、心身の癒しや健康づくりにつながる有機無農薬の体験型農園づくりに取り組む。NPOでは田んぼ除草にホバークラフトを活用したスマート技術を開発中。農と風土(フード)を愛する人たち向けのブックカフェ・居酒屋を開くのが夢。
  5. 山田正美
    大阪工業大学大学院修了。福井県職員として、農業試験場研究員、専門技術員、農業技術経営課長、農林水産部技幹を経て退職。現在、日本生産者GAP協会常務理事、日本農業サポート研究所主席コンサルタント。
AI・IOTでDXを推進する企画・セールス・エンジニア大募集