防除以外での農業用ドローン活用の可能性【ドローン防除請負業者の本音 第2回】

合同会社Gardenのドローンオペレーター、松橋充悟です。

第2回目の今回は、防除以外のドローンの活用法について書いていきたいと思います。

(写真提供:Garden)


防除以外のドローン活用の可能性

現在、農薬散布以外にも、リモートセンシングや建造物調査診断、宅配、空撮、水中撮影などに幅広く使われているドローン。世界中が技術開発に力を入れ、目覚ましい進化を遂げていますが、農業の現場での使用方法は意外と限られてしまっているように感じます。

弊社も農業に参入する際に、どういったことにドローン活用の需要があるのか、現場の方々に聞き込みをしたところ、散布以外に特に意見が多かったのは、

  1. 冬場の融雪剤をまけないだろうか
  2. 酪農家の敷地や牛舎内の消毒作業などに使用できないだろうか
  3. リモートセンシングは非常にいい技術だが、その後の現場への還元方法やスピード感、費用対効果はどれほどあるのか

の3つでした。

1つ目の冬場の融雪剤散布については、雪が積もる地域ですと話題に上ることもあるでしょう。

(写真提供:Garden)

しかし、十勝では10a当たり40kgもの融雪剤を散布している方が多く、ドローンだと非常に時間がかかるので、融雪剤散布機を使用して散布した方が圧倒的に速いです。防除以外に農業用ドローンの活躍の場はいまのところありませんので、冬の間は農業以外のところで活用できないか検討しています。

2つ目の酪農家の敷地や牛舎内の消毒作業などへの使用ですが、2019年からいろいろ検討しており、酪農部門に対してのドローン活用術をそのうちご提示できればと思っています。主に牛舎やパドックなどに対し、殺菌・殺虫剤の散布ができないか検討しています。

(写真提供:Garden)

3つ目のリモートセンシングについては、少し詳しく書いていきます。

そもそもリモートセンシングとは、「離れた位置からセンサー(感知器)などを使用してさまざまな情報を計測・数値化する技術」やその手法・技法のことで、1960年頃より人工衛星からの撮影で行われていました。しかし、天候によっては地上が写っていなかったり、画像が粗く詳細な情報が読み取れないといったこともあり、基本的には災害時の大まかな状況把握に使われることがほとんどでした。

しかし近年、各業界で技術革新があり、人工衛星からの撮影もかなり詳細に、リアルタイムで状況把握ができるようになったことで、リモートセンシングが活用される場面が大幅に増加しました。リモートセンシングで使用されるドローンも技術が進歩したことにより、一般向けのトイドローンやDJI「Tello」のように小型なものから、専門分野向けに水中ドローンや産業用ドローンなどができ、カメラを付け替えることによって、より高画質にしたり、特殊な分析ができるようになりました。

農業の分野では、主に土壌改良や計測に使われてきましたが、水稲はいち早く活用しており、NDVIなどで圃場を撮影し色分けすることによって、作物の生育状況や可変施肥、収穫適期などを自分のタイミングで、必要な情報を限定した範囲で詳細に分析し、収量をより安定させることができるようになりました。

(写真提供:Garden)


ドローンによるリモートセンシングの課題

農業においては「精密農業」という言葉でデータ分析の手法が提唱され、その後「スマート農業」という言葉ができ、ドローンでの散布やリモートセンシングの活用に対し、国や多くの企業が力を入れて取り組んでいます。法律の整備をはじめ、空中散布の登録農薬の拡充、各分野での実証実験、解析ソフトの開発などが急速に進んでいます。

その結果、水稲においては、リモートセンシングを行うことにより、収量が上がり、経費は削減され、十分な費用対効果が出ています。中には、ドローンを有効活用して生産した「ドローン米」や、リモートセンシングにより減農薬を実現した「スマート米」なども誕生しています。

しかし、十勝の主幹作物である小麦や豆類、ばれいしょ、てんさいなどへのリモートセンシングの導入はまだ試験段階です。また、試験内容や結果などは一部の方々でのみ情報共有されており、リモートセンシングが畑作物においてどこまで進歩していて、どのくらい実用的な状況まできているのか、費用対効果はどのくらいなのかなど、ほとんどの農家の方が興味はあるのに正確な情報を知らないのが正直なところだと思います。

情報を先取りしている方でも、リモートセンシングを行い、作物の成長の良し悪しを解析したときに、原因は土壌にあるのか、適期防除ができていないのか、肥料散布が均一にできていないのか、いつまでに成長をそろえると収量が安定するのかなど、データを生かすための課題や問題点が多々出てきています。

土壌に問題があったとしても、植付け後であれば、収穫が終わらないと土壌改良や暗渠などの水はけを改善するのは難しく、リモートセンシングを行ったはいいものの、すぐに改善に取り組めない場合があります。

また、肥料散布の均一性に問題がある場合は、解析データを基に可変施肥で対応できます。ただ、地上での作業となると、既存の機械で対応できない方は改造や作業機械の更新が必要となり、非常に費用がかかってしまうこともにもなります。

いまのところ、可変施肥に対応するためには、可変施肥に対応した機械がないとできません。データを見て、範囲が狭ければ手作業でまくことはできると思いますが、畑が大きくなれば重労働になりますし、作物によっては数十kgまく時もあるので、手作業ではできない場合もあります。

DJIのセンシングカメラ搭載ドローン「P4 MULTISPECTRAL」

空中散布でも、散布範囲は解析データを基にすぐ確定できますが、散布のタイミングは注意が必要です。風がなければいつでも散布できると思われがちなのですが、形態を問わず肥料によっては日中に散布すると葉が焼けてしまい、その後の成長に悪影響を与えてしまう場合があるのです。

ほかにも、投下量、散布高度、ホバリングした場合のダウンウォッシュ(下方向に発生する風)による作物へのダメージなどを綿密に計算し、散布する必要があります。

リモートセンシングは、うまく使えば生産効率や所得向上につながる技術です。ただ、「スマート農業」の取り組みによって飛躍的に技術が進歩していく中で、いま十勝の農業の現場で求められているのは、ドローンの性能や機能よりも、各作物へのリモートセンシングの導入から収穫後の土壌改良等の提案までの一連の流れのプロセスモデルではないでしょうか。

その中で、農薬散布や可変施肥などにおいて、地上と空中散布のメリットとデメリットを含めた使い分け方を盛り込む必要があると思っています。

弊社としては、この使い分けのプロセスモデルの一例になれるものを作れればと思い、リモートセンシングはメーカー等に任せ、登録薬剤がまだ少ない中ですが、ドローンの農薬散布において十勝管内の農家の方々に協力していただきながら、日々いろいろ試験をさせていただいております。

このプロセスモデルが出来上がり、十分な費用対効果が見込めるようになったとき、リモートセンシングが普及し、十勝の農業は大きく変わっていくのではないでしょうか。

次回は、弊社が実際に行ったドローンによる防除について、紹介していきたいと思います。

合同会社Garden
https://gardenllc-dr.amebaownd.com/
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WRITER LIST

  1. 槇 紗加
    1998年生まれ。日本女子大卒。レモン農家になるため、大学卒業直前に小田原に移住し修行を始める。在学中は、食べチョクなど数社でマーケティングや営業を経験。その経験を活かして、農園のHPを作ったりオンライン販売を強化したりしています。将来は、レモンサワー農園を開きたい。
  2. 田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
  3. さわちん
    2児の父。あるきっかけにより農業のイメージを変えたいと考え、16年間のサラリーマン生活にピリオドを打つことを決意。2020年春、家族で田舎に移住し、新規就農を目指す。自身が「移住×就農のモデルケース」となるために、いろんな方面へ向けて奮闘中。
  4. 福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  5. 窪田新之助
    農業ジャーナリスト。福岡県生まれ。日本経済新聞社が主催する農業とテクノロジーをテーマにしたグローバルイベント「AG/SUM(アグサム)」プロジェクトアドバイザー、ロボットビジネスを支援するNPO法人Robizyアドバイザー。著書に『日本発「ロボットAI農業」の凄い未来』『GDP 4%の日本農業は自動車産業を超える』(いずれも講談社)など。