ドローン農薬散布作業のホントのところ【連載・ドローン防除請負業者の本音 第1回】

北海道十勝地方でドローンによる農薬散布の請負を行っている合同会社Gardenにて、ドローンオペレーターを勤めている松橋充悟(まつはしじゅうご)と申します。

今回から数回にわたって、ドローンによる農薬散布の実情をお伝えしていきたいと思います。無人ヘリの依頼はしたことがあってもドローンはまだという農家さんや、自分でドローン農薬散布にチャレンジしてみたいという方、そもそもドローンによる散布がどんなものなのかを知らないといった方に、いま急速に拡大しつつあるドローン農薬散布の現状を知っていただけたらうれしいです。



「ドローンは農業になくてはならないものになる」

高校卒業後、私は十勝管内のJAで約8年間勤務しました。その中で、無人ヘリコプターでの農薬散布を依頼した際に、その飛行を実際に見て、非常に便利でなくてはならないものだと感じました。

しかし当時、十勝管内には無人ヘリコプターで散布する会社がなかったため、依頼しても対応までに時間がかかり、少ない面積だと対応してもらえませんでした。

その後、元々ドローンを活用して事業を行っていた今の会社、Gardenに転職し、2019年2月に農薬散布の事業部を発足しました。JA時代に痛感した十勝地方で不足している散布請負業者として、農業の発展に貢献し、農家1件あたりの耕作面積拡大に伴う農作業の負担を少しでも軽減できればと思っています。


(写真提供:Garden)

散布作業料金は必要投下水量に合わせて

無人ヘリやドローンによる散布を依頼したことがある方ならおわかりかと思いますが、そのような経験のない方には、具体的にどんなふうにドローンでの散布が行われるのか、ご存じないかと思います。ここからは、Gardenがどのような散布作業を請け負い、どんな作業を行っているのか、詳しくご紹介していきます。

散布対象作物

現在、弊社は「農薬散布」と「液体肥料」の散布を受け付けています。これまでに、小麦、大麦、大豆、あずき、ばれいしょ、てんさい、かぼちゃ、スイートコーン、デントコーンなどに対して散布してきました。

散布受託費用

散布にかかる費用は、投下水量が10aあたり0.8Lの場合は1,100円(税別)です。この価格設定は、無人ヘリコプターと農業用ドローンでは、空中散布という分野は一緒ですが、機体代、保険代、メンテナンス代といった費用がドローンの方がはるかに安いことなどを加味した価格帯にしてほしいという、生産者の方々の意見を反映させています。

また、十勝地方の防除回数や圃場の大きさ、複数回依頼しても生産者の方々の経済的負担にならない価格をと考えた結果、10aあたりの必要投下水量別で設定しています。

散布に要する時間

散布にかかる時間としては、投下水量が10a当たり0.8Lの場合は、離陸してから1haを10分で散布することが可能です。

2019年は1機で1日の最大処理面積が40haになった日もありました。この時の飛行回数は約40回。バッテリーは全部で6個で、発電機を動かして急速充電しながら作業しました。ただしこの例は、圃場間の移動も少なく、朝は日の出からスタートし、日没と共に作業を終了する形で行った場合です。

このケースは、弊社の作業が立て込んでいたために、予定を詰めて散布したためですが、作業事故のリスク回避をするためにも、余裕がある場合はもっと日程をばらしてやるのが一般的です。

散布の請負方法と散布までの期間

散布の請負は、電話やメールで受け付けてご連絡いただいてから訪問し、散布する圃場、作物、成長具合の確認、農薬の選定を行い、具体的に散布する日付を決めるのが基本的な流れです。散布予約は散布日の1週間前が多いですが、生産者の方が最も頼みたい、悪天候続きや農作業の遅れなどを理由とした突発的なご依頼についても、ご連絡をいただき次第、可能な限り迅速に対応しています。

2019年の例だと、午前中にご連絡をいただいて、午後から予定が空いていたのでその日のうちに対応したこともありました。

農業では障害物センサーや自動操縦が邪魔になる場合も

弊社が散布で使用しているドローンは、株式会社FLIGHTSの「FLIGHTS-AG」という機体です。なぜこの機体を選ばせていただいたかというと、散布時に必要な機能だけが備わっており、使い勝手がよかったからです。

必要な機能というのは、GPSでのホバリング機能と、飛行は手動で行い散布は自動的に行う半自動モード「M+モード」のこと。そのほかに障害物センサーや自動操縦機能もあると便利かもしれませんが、実は散布時にかえって邪魔になる場合があるのです。

出典:FLIGHTS-AG(https://flights-ag.com/

というのも、北海道は広大な平野が多いのですが、圃場脇に防風林の枝や1mを超える雑草類が迫り出ていることも多くあります。そのため、枝などを回避する障害物センサーが付いたドローンの場合、それらの雑草を障害物と認識してしまい、圃場の端から数m以上も散布できなくなる場合があるのです。自動飛行機能を備えたドローンでも同じことが起こる可能性があります。

その点、「FLIGHTS-AG」は、こういったセンサーによる自動制御がない代わりに、圃場際までしっかりと散布するのに必要な機能のみを搭載しているのです。

また、無人ヘリコプターは基本的に自動でホバリングしませんが、ドローンはGPSを受信し自動でホバリングします。しっかり講習を受けて飛行スキルをきちんと習得すれば、ドローン自体はそれほど期間をかけずに飛ばすことができるようになります。さらに、農薬の基礎知識や倍率計算などを身につければ、農薬散布事業ができるようになります。

開発元のFLIGHTSには、散布時の吐出量の調整などの相談に対しても柔軟に対応していただいているので、作物へのストレス軽減や作業効率の向上ができ、1日の処理面積も無人ヘリコプターと大差なくこなすことができるようになりました。

ドローンを農業で活用するさらなる可能性


(写真提供:Garden)

2020年もドローンによる防除のご依頼を多数いただいていますが、今後は農薬や肥料の散布だけでなく、もっと幅広い作業にもドローンを活用していきたいと考えています。

次回は、北海道でこれからニーズが増えてくるであろう、散布以外のドローンの活用法について、より具体的にご紹介したいと思います。


合同会社Garden
https://gardenllc-dr.amebaownd.com/
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WRITER LIST

  1. 山田正美
    大阪工業大学大学院修了。福井県職員として、農業試験場研究員、専門技術員、農業技術経営課長、農林水産部技幹を経て退職。現在、日本生産者GAP協会常務理事、日本農業サポート研究所主席コンサルタント。
  2. 福田浩一
    ふくだこういち。東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。現在は主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。http://www.ijas.co.jp/
  3. 中村圭佑
    なかむらけいすけ。明治大学農学部卒業後、日本農薬株式会社に約7年勤務。その後、大手経営コンサルティング会社を経て、FOOD BOX株式会社を2019年7月に起業。Facebook:https://www.facebook.com/foodboxjp/、Instagram:https://www.instagram.com/foodbox_jp/
  4. 百花繚乱
    趣味は料理、漫画、読書のミドルの男です。商社勤務で全国や海外を転々しているうちに、故郷に哀愁を覚え、約10年前に地元の農業関連会社にとらばーゆ。
  5. さわちん
    2児の父。あるきっかけにより農業のイメージを変えたいと考え、16年間のサラリーマン生活にピリオドを打つことを決意。2020年春、家族で田舎に移住し、新規就農を目指す。自身が「移住×就農のモデルケース」となるために、いろんな方面へ向けて奮闘中。