「第16回農業WEEK」の注目ソリューション6選 獣害対策ロボットから遮熱資材散布ドローン 営農支援AIまで

2026年10月7~9日の3日間、「第16回農業WEEK(J-AGRI TOKYO)」が千葉県の幕張メッセで開催された。農業資材やスマート農業、畜産、農業経営などに関する製品・サービスが集まる展示会だ。

会場で目立ったのは、単に作業を自動化するだけでなく、獣害対策、酷暑下の作業軽減、肥料利用効率の向上、営農情報の整理と共有など、農業現場が抱える複数の課題に応えようとする提案だった。

本稿では、SMART AGRI編集部が注目した6つのソリューションを紹介する。

※製品仕様、実証結果、発売時期などは取材時点の情報。本文中の要確認表示は、公開前に取材先または一次資料との照合が必要な箇所です。


三菱電機|中山間地域の獣害対策を支える4足歩行ロボット


三菱電機ブースで展示された4足歩行の獣害対策ロボット
最初に紹介するのは、三菱電機のブースで展示されていた「4足歩行の獣害対策ロボット」だ。2024年度(令和6年度)の野生鳥獣による農作物被害額は、全国で188億円に上るなか、里山の減少や過疎化、労働力不足を背景に、同社が産業用ロボットなどの技術を応用して開発を進めている。

なぜ、獣害対策に4足歩行ロボットを使うのか。開発を担当する三菱電機 先端技術総合研究所 ロボティクス技術部 適応ロボティクスグループの渡辺隆之助さんが説明してくれた。


「比較対象になりやすいのは車輪型ロボットですが、車輪型では不整地の移動が難しい面があります。また、ドローンには飛行時間の制約や枝との接触リスクがあり、地上を人の目線に近い高さから確認する用途には向きにくい面があります。

これに対して開発機は、深層強化学習を用いた歩行制御機能により、中山間地域の斜面や段差といった不整地でも安定して歩行できます。人に近い目線の高さにカメラを設定しやすいことも特徴です」

使い方はシンプルだ。パソコンやスマートフォンから巡回場所を指定すると、カメラ、障害物検知センサー、GPSを搭載したロボットが、夜間を含めて農地を自動巡回する。必要に応じて遠隔操作に切り替えることもできるという。


一方、渡辺さんは、展示会での反応や農家・自治体へのヒアリングを通じ、見回りだけでは事業として成立しにくい可能性が見えてきたと話す。

「想定していたことではありますが、農家や自治体へのヒアリングを続けた感触では、見回り点検だけではビジネスにならない可能性が高いと考えています。

そこで現在は、獣が身を隠しそうな草むらを見つけたら草を刈る、柵の保守作業を行うなど、実作業への拡張を検討しています」

追い払い機能の効果検証も進めている。イノシシやシカに近づき、犬の鳴き声のような音を出して威嚇することで、行動が変化するかを大学と共同で調べているという。

「イノシシを誘引し、4足歩行ロボットが威嚇した際に行動が変わるかを、大学の研究者に分析していただいています」


本機は研究開発段階だが、将来はクマへの応用可能性も視野に入れているという。ただし、対象動物ごとの安全性や追い払い効果、地域の鳥獣対策との役割分担は、今後の検証が欠かせない。夜間の不整地巡回に加え、草刈りや柵の保守などを担えるようになれば、人手不足に悩む中山間地域の負担軽減につながりそうだ。


NTT e Drone Technology|鳥獣害対策ドローンBB102を遮熱資材散布にも活用


遮熱資材散布セットを装着したBB102と展示パネル
NTT e-Drone Technologyのブースで注目したのは、国産鳥獣害対策ドローン「BB102」だ。野生動物の忌避に用いる「クルナレーザー」を搭載し、圃場や畜舎を守る機体として過去の農業WEEKレポートでも紹介したが、今回はハウスの高温対策に使う遮熱資材の散布機能が加わっていた。

「アキレスさんと協力し、ドローン散布専用遮熱資材『ファインシェードスカイ』を用いた実証や情報共有を重ねてきました。今回は、その結果を展示しています」

そう説明してくれたのは、NTT e-Drone Technology サービス開発部の岡田保博さんだ。

ハウスの屋根に遮熱資材を散布する作業は、高所作業を伴い、人手と時間もかかる。そこで同社が着目したのがドローンだ。


「散布ドローンというと、当社の『AC102』を想像されるかもしれません。ただ、立体物であるハウスに遮熱資材を散布するには、画像認識技術が重要です。その点で『BB102』が適しています」

ハウスの形状を認識しながら散布できることに加え、周囲への資材の飛散(オーバースプレー)を抑えるため、圧力式吐出ノズルから対象面へ直接届ける方式を採用。粒子径も用途に合わせて調整しているという。

展示パネルでは、群馬県沼田地区で2026年6月に実施したとされる実証結果が紹介されていた。手散布では1ha当たり約1日を要していた作業に対し、ドローン散布では10a当たり約10分で、作業速度は約2.5倍。無散布区と比べてハウス内温度を4.0℃下げる効果を確認したという。


「『ファインシェードスカイ』は希釈せず、そのままドローンに充填して散布できます。現場で濃度を調整する手間がかかりません。機体と資材を軽トラックに積めるサイズであることも、現場から評価されています」

鳥獣害対策だけでなく、季節性の高い遮熱資材散布にも機体を活用できれば、年間の稼働機会を増やせる。ただし、散布時の風速や周辺環境、ハウス形状、施工単価などの条件は導入判断に欠かせない。鳥獣害対策とハウスの暑熱対策を1機で担う「BB102」の今後に注目したい。


セントラルグリーン|夏の水田作業を減らす空中散布専用肥料


空中散布専用肥料スカイアシストのラインナップ
新潟県新発田市に本社を置くセントラルグリーン。同社のブースで注目したのは、空中散布専用肥料「スカイアシスト」だ。2025年からシリーズとして本格販売している商品で、開発の背景には、7年ほど前から抱いていた「将来は防除だけでなく、肥料散布にもドローンが使われる」という見立てがあったという。

水稲の追肥でドローン散布が広がる背景には、酷暑下で水田に入る負担を減らしたいという生産現場の切実なニーズがある。費用をかけてでも作業を軽減したいという声を受け、空中散布に適した肥料への関心も高まっている。代表取締役の渡辺大知さんは次のように説明する。


「ドローンで窒素成分の高い肥料を散布するのは簡単ではありません。窒素成分を高めるために尿素を増やすとべたつきやすくなり、タンク内で詰まって散布できないことがあります。

『スカイアシスト』では特殊加工した尿素を使い、べたつきと粉立ちを大幅に抑えました。タンク内での詰まりを軽減し、スムーズに空中散布できるようにしています」

ラインナップは4種類。NK穂肥(35-0-10)、NK穂肥苦土入り(35-0-9-1)、高窒素NK(40-0-4)、高窒素NKケイ酸入り(35-0-4-6)をそろえる。


「最も売れているのは『高窒素NK(40-0-4)』で、シリーズ販売量の半分以上を占めます。水稲の追肥における窒素補給ニーズに対応し、作業の省力化・軽労化に貢献します」

ドローンによる肥料散布の普及に合わせ、肥料側も散布性を高める工夫を重ねている。ただし、実際の導入では、必要な施肥量を積載して散布できるか、圃場面積や機体の積載量に対して何回補給が必要か、慣行施肥と比べて費用がどう変わるかまで確認したい。


ボレガード|肥料利用効率を高めるバイオスティミュラント原料


ボレガードのActivance NUE展示
ボレガードは1889年創業のノルウェー企業で、日本では1994年から事業を展開している。これまで日本オフィスは主に建設業や化学メーカー向けの事業を手がけてきたが、再生可能な木材由来の素材などを生かし、農業分野への展開を始めた。農業WEEKへの出展は今回が初めてだという。

注目したのは、肥料の栄養利用効率(NUE)を高めるバイオスティミュラント原料「Activance NUE(アクティバンス・エヌユーイー)」だ。肥料価格の高騰や化学肥料使用量の低減が課題となるなか、肥料メーカー向けの配合原料として提案している。ボレガードAS日本支店 テクニカルセールスマネジャーの坂野ロベルトさんが説明する。


「本製品は、植物による窒素とリンの利用効率を高め、養分損失の抑制に寄与する改質腐植酸ベースの原料です。当社から肥料メーカーなどに供給し、各社の肥料製品に配合していただく形を想定しています。

細胞膜上のプロトンポンプを活性化して根の伸長や養分吸収を促し、対照区に比べて総根長が28.6%増加しました。また、リンの可溶化や硝酸態窒素の流亡・溶脱抑制を通じ、複数の露地試験で偏要素生産性が6~40%向上したというデータがあります」

配合のしやすさも特徴としている。メーカーによると、低pH・高塩濃度の肥料溶液でも安定して溶解し、液体NPK肥料、灌水施肥、水溶性肥料などへの配合が可能だという。粒状肥料への配合や種子コーティングなどの用途も想定しているという。


肥料利用効率の向上は、減肥や収益性の改善につながる可能性がある。一方で、本品は農家が単体で購入・使用する完成品ではなく、肥料メーカー向けの原料だ。国内でどの肥料に採用され、どの作物・条件で効果が再現されるかが、現場での評価を左右するだろう。


SYN-ROBOTICS|露地圃場に常駐して精密除草するAIロボット


5軸マニピュレーターを搭載した自律型農業ロボット シンロボ
SYN-ROBOTICSのブースでは、露地圃場を自律走行し、除草や見回りを行うAI搭載の自律型農業ロボット「シンロボ」が目を引いた。説明してくれたのは、SYN-ROBOTICS代表取締役COOの柳本友幸さんだ。

「露地畑作には、農家を悩ませる2つの課題があります。1つは、手が回らず収量減につながりかねない『株元の初期除草をやり切れないこと』。もう1つは、雑草除去の最適な方法や効率的な農法を十分に検証できていない『わからないこと』です。

真夏の炎天下での作業や、分散した複数圃場を見回る移動の負担もあります。こうした課題に対し、畑に常駐して作業を担うシステムの開発を進めています」


現在の主な機能は、除草と圃場の見回りだ。除草では雑草を見分けるだけでなく、凹凸のある圃場で奥行きを把握し、ロボットアームを正確な位置に動かす必要がある。

「雑草を認識すること自体は、現在では比較的できるようになっています。ただし、畑は完全に平らではありません。雑草を認識したうえで、奥行きを含めてアプローチする位置を決め、実際に処理するところが難しいのです」

ロボットには5軸のマニピュレーターを搭載し、マルチシートの水抜き穴などから生える雑草を処理する。対象は3cm程度の初期雑草。長く伸びた雑草は途中で切れることがあるため、初期段階で繰り返し処理する使い方を想定している。

対応する作物の高さは50cm以内、畝幅は75~101cmで、畝幅に合わせて車輪幅を変更できるという。駆動方式は、エンジンで発電した電力をバッテリーにため、モーターで走行するシリーズハイブリッド方式を採用する。完全電動にするとバッテリー重量が増えるためだ。


機体重量は180kgで、軽トラックで運搬できる設計。移動速度は1km/hだが、夜間も作業できるため、速度の遅さを稼働時間で補う考えだ。

長野県御代田町の農業法人などと協力し、生産圃場で実証試験を重ねている。2026年9月には現地で公開デモを開催した。今後は、茶の幼木管理やネギ、タマネギなどへの対象作物拡大も検討している。

同社は2027年4月の商用機発売と、初回20台の稼働を計画している。原稿取材時点では、初回分はほぼ導入先が決まっているという。

将来は、継続的に取得する観察データを活用し、収量予測や病害虫被害の早期発見にもつなげる計画だ。除草精度だけでなく、圃場当たりの処理能力、見回りを含む年間利用時間、保守費用が明らかになれば、導入判断がしやすくなる。


マイファーム|生産者の記録を営農支援につなげるAIツール


マイファームブースで行われた開発中AIツールのデモ
最後に紹介するのは、マイファームが展示していた開発中のAIツールだ。同社がコンサルティングや農業教育で培ってきた知見を生かし、「自分たちが本当に使いたいAIツール」を目指してデモを行っていた。名称はまだ決まっておらず、展示では単に「AIツール」と呼ばれていた。

生成AIは、利用者が質問を文章で入力し、回答を得る使い方が一般的だ。ただし、適切な答えを得るには、何をどのように質問するかという知識も求められる。

しかしマイファームが提案するAIツールは、農家が日々残しているメモ、写真、作業記録などの手元にある情報を取り込み、AIが農業経営に役立つ情報を提供してくれる。

現時点では、JAや卸売業者、商社などが導入し、取引先の生産者に利用してもらう形を想定している。作物、耕作面積、作付量、生育状況などの眠っていた情報を使えるデータにできれば、需給調整や出荷先との連携、JAによる営農指導・支援の判断材料として使える可能性がある。



生産者の営農情報を複数の組織で扱うとなると、データの所有権、閲覧権限、AI学習への利用範囲、誤った分析が出た場合の確認手順を明確にする必要があるが、そのあたりは今後実用化に向けて整理されていくだろう。

マイファームは、このAIツール単体での課金よりも、JAと管内生産者に利用してもらい、蓄積したデータを同社のコンサルティングなどにつなげる事業モデルを想定しているという。

資材価格が上昇するなか、生産者にとって新たなツールの費用や習熟負担は小さくない。既存の記録を生かし、情報の整理・比較をAIが支援できれば、農業分野でのAI活用を広げる一つの方向性になりそうだ。


編集後記:新興メーカーの日本進出が加速か


主催者発表によると、農業WEEKを含む同時開催展の来場者数は、3日間で延べ3万1,261人。先進的な農業の情報を取得したいという人が多く集まっていた。

出展者の傾向として目立ったのは、スマート農業のハードウェア分野としては海外メーカーの後付けの自動操舵ツールがさらに大きなブースを設けていたことだ。一時期のドローンや大型農機のブースが連なっていた枠がそのまま自動操舵に置き換わったイメージだった。


一方、ドローンメーカーは大手のDJIなどは出展していないものの、国産ドローンメーカーや、日本進出を目指す海外メーカーが代理店を募集するための展示を行っている姿も見られ、決してドローン自体が廃れたというわけではない。特に国産メーカーはそれぞれに特色を打ち出し、ペイロードが拡大する大型ドローンに対して、必要十分なサイズの展開などで商機をうかがっている様子だった。

一方、資材メーカー系も、2025年は出店していた大手農薬・資材メーカーが減少した代わりに、バイオスティミュラントなどの最新資材の国内外のブースが多数出展していたのも印象的だった。輸入資材の高騰などを受け、国産率の拡大にも期待が持てそうな展示が多かった。

来場者数自体は前年から5000人程度減少しているものの、今回ご紹介したようなこれまでになかった新たな機械や資材も登場し、最新情報を集める場としての価値はより高まっているようにも感じる。日進月歩のスマート農業の動向を、SMART AGRI編集部として今後も追いかけていきたい。


三菱電機 研究開発
https://www.mitsubishielectric.co.jp/corporate/randd/laboratory/index.html
NTT e-Drone Technology BB102
https://www.nttedt.co.jp/prod/bb102
セントラルグリーン
https://central-green.jp/
Borregaard Activance NUE
https://www.borregaard.com/activance-nue
SYN-ROBOTICS 公式LinkedIn
https://www.linkedin.com/company/synrobo
マイファーム
https://www.myfarm.co.jp/


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  1. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  2. 北島芙有子
    北島芙有子
    トマトが大好きなトマト農家。大学時代の農業アルバイトをきっかけに、非農家から新規就農しました。ハウス栽培の夏秋トマトをメインに、季節の野菜を栽培しています。最近はWeb関連の仕事も始め、半農半Xの生活。
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    柏木智帆
    米・食味鑑定士/お米ライター/ごはんソムリエ神奈川新聞の記者を経て、福島県の米農家と結婚。年間400種以上の米を試食しながら「お米の消費アップ」をライフワークに、執筆やイベント、講演活動など、お米の魅力を伝える活動を行っている。また、4歳の娘の食事やお弁当づくりを通して、食育にも目を向けている。プロフィール写真 ©杉山晃造
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    鈴木かゆ
    1993年生まれ、お粥研究家。「おかゆ好き?嫌い?」の問いを「どのおかゆが好き?」に変えるべく活動中。お粥の研究サイト「おかゆワールド.com」運営。各種SNS、メディアにてお粥レシピ/レポ/歴史/文化などを発信中。JAPAN MENSA会員。
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    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。