みかんのドローン防除委託の現場で見えた5つの課題 【アグリポン 柑橘ドローン防除事例2026・後編】
和歌山県有田市で有田みかんの生産・加工・販売を手がける早和果樹園は、2025年に200aの園地でドローンによる防除を株式会社オプティムに作業委託しました。
前編では、手散布の労力軽減、空いた時間を摘果など品質アップの作業へ回せること、雨の前など限られたタイミングで適期防除を行いやすくなるといったメリットが語られ、有田みかんの産地維持・拡大に向けて、大きな可能性を感じさせました。
一方で、ドローン防除を委託すればすべて解決するというわけでもありません。ただ、委託サービスを利用できる環境があるとしても、日程調整、天候、コスト、園地条件など、実施に向けて考えるべき点も多々あります。
早和果樹園は、株式会社オプティムと連携しながら、ドローン防除を自社園地だけでなく地域へ広げる代理店として取り組んできました。その経験から見えてきたのは、ドローン防除を定着させるには、技術だけでなく、地域の受け皿づくりも重要だということです。
後編では、導入を検討する農家が知っておきたい、実務面の課題や解決策をうかがいました。
お話をうかがった、早和果樹園 生産部の楠さん(写真右。当時は山中さん)と仲さん(写真提供:東林真以)
2025年のドローン防除委託を経て、早和果樹園が課題として挙げたのは、農家も含めた散布日程の調整です。
「作業を委託するとなると、遅くても1週間前には作業希望日を申告する必要があります。ただ、電話による日程調整や紙の契約書などによる手続き上のロスもあり、農家さんが散布してほしいタイミングとずれたりすることもあったんです。予定日に飛ばせる状況ではなくなってしまった時などは、オプティムさんも最大限対応してくださっていたんですが……」
もうひとつの課題は、実際に散布作業を行ってくれるドローンパイロットの人材確保です。
2025年に早和果樹園のドローン散布を担当したのは、以前取材した有田川町出身の東林真以さん。しかし、散布したいタイミングにパイロットの予定が合わなければ、すぐには飛ばせません。
「パイロット不足は非常に懸念されています。日程調整の中でも、パイロットと予定が合わないということはありますから」
周辺地域でドローンを飛ばせるパイロットの存在と、誰が相談に乗るのか、どう日程を組むのかといった体制づくりは急務となっています。
写真提供:早和果樹園
もうひとつの課題は、委託コスト。代理店として受託した経験から、楠さんは早和果樹園のような農業法人と、個人経営の農家の間のコストの受け止め方の違いについても課題を感じています。
法人であれば、そもそも作業にかかる従業員の人件費は計算しているため、ドローン防除の費用も比較しやすくなりますが……。
「個人農家さんの場合、人件費をどう考えているかは人によります。自分や家族の人件費を意識していない方からすると、ドローン防除の委託費はやや高額です」
ただし、作業の拘束時間や身体的負担まで含めて考えると、見え方は変わります。
「とくに夏場の散布は、たとえ経費が多少多めにかかったとしても、委託する価値はあると思います。夏場の散布をしなくて済むことを、経費の増額とどう天秤にかけるかがポイントですね」
単に散布費用だけを比べるのではなく、浮いた時間をどんな作業に使えるか、身体的負担をどれだけ減らせるか、適期防除を逃さないことでどのような効果が期待できるかまで含めて考える必要があります。複合的なメリットを感じられるかどうかは、農家側の行動や考え方次第です。
写真提供:早和果樹園
4つ目の課題は、ドローン防除に向いている園地かどうか。上空から散布するというドローンの特性上、すべての園地で同じように実施できるわけではありません。園地の形状、周辺環境、樹の状態、品種、設備などによって、向き不向きがあります。
たとえば、雑木が近い園地では、ドローンで散布できない場合があります。また、スプリンクラーなどの設備がある園地や、樹がまだ小さい園地、品種が異なる園地では、すぐに導入できないこともあります。
早和果樹園でも、自社園地の中にドローンに適した場所はまだあるものの、一気に広げるのではなく、数年単位で検証しながら判断していくという方針をとっています。
「品種や樹の状態の都合もありますし、ドローン防除による効果を実証する意味でも、すぐに増やすというよりは3年、5年という単位で広げていけたらと考えています」
写真提供:早和果樹園
楠さんがさらに指摘するのは、手散布などで使われる薬剤と比べて、ドローンに対応する農薬や液肥などの種類が圧倒的に足りないこと。
「手散布の際には、農薬と一緒に葉面散布の肥料などを混ぜて散布することがあるんです。ただ、ドローンで散布できる薬剤は濃度が濃く、併用できる肥料の種類も少ないのが現状です」
今後、ドローンに適した資材や散布方法が確立されれば、防除以外の作業にも活用が広がる可能性はあります。そうなれば、防除だけでなく追肥も含めて、さらなる効率化と品質の向上も見込めるようになるでしょう。
一方で、天候に左右される日程調整、パイロットの確保、園地ごとの向き不向き、そしてコストといった部分は、どれだけシステムが進化しても、現場が向き合うべき課題として残り続けます。そうした要素も含めて、自身の経営や園地・環境で委託に見合うかどうかを判断することも大切です。
早和果樹園がここまでドローン防除を進めている目的は、自社の省力化のためだけではありません。「有田みかん」の名産地をこれからも維持し続けていくためには、個々の農家の努力だけでなく、地域全体で作業負担をどう減らすかを考える必要があると考えているからです。
「オプティムさんと協力してドローン防除をやっているのは、『地域貢献』が大きな目的なんです。農家さんとドローンをつなげる橋渡しができればいいと考えています」
そのために、今後は営業的な役割よりも、ドローン防除に関する農家の相談窓口としての役目や、ドローン防除の理解を深めるための実演会への協力といった形でも関わっていく考えです。
「農家さんが気軽に相談したり話を聞きやすい環境づくりを意識していきたいんです。ドローンに触れる機会を作り続けることで、農家さんの意識を少しずつ変えていけたらと思っています」
ドローン防除は、見たことがない人にとってはまだまだ特別な技術です。しかし、地域の中で実際に飛んでいる様子を見たり、利用した農家の声を聞ける機会が増えれば、少しずつ「選択肢のひとつ」として受け止められていくでしょう。
写真提供:早和果樹園
ドローン防除は、物理的に散布できない環境以外、ほぼどの柑橘園地でも手散布より効率化が図れることが見えてきました。
ただし、現段階では柑橘類のドローン防除の実効性はまだまだ浸透しておらず、ドローン防除のメリット・デメリットも含めた丁寧な説明ときめ細やかな対応を行う代理店の存在が不可欠です。
そんな中、早和果樹園の事例なども踏まえて、オプティムはスマホで直接散布を依頼できる「アグリポン」というサービスを運用開始しました。近隣の農家と一緒に申し込むほど、コストを抑えることもできます。

早和果樹園とオプティムの取り組みは、ドローン防除が単なる作業代替ではなく、産地の人手不足や作業負担に向き合うための選択肢になっていることを示しています。そして、そうした作業の積み重ねが、農家にとって納得してドローン防除委託を導入するための重要な判断基準になるでしょう。
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前編では、手散布の労力軽減、空いた時間を摘果など品質アップの作業へ回せること、雨の前など限られたタイミングで適期防除を行いやすくなるといったメリットが語られ、有田みかんの産地維持・拡大に向けて、大きな可能性を感じさせました。
一方で、ドローン防除を委託すればすべて解決するというわけでもありません。ただ、委託サービスを利用できる環境があるとしても、日程調整、天候、コスト、園地条件など、実施に向けて考えるべき点も多々あります。
早和果樹園は、株式会社オプティムと連携しながら、ドローン防除を自社園地だけでなく地域へ広げる代理店として取り組んできました。その経験から見えてきたのは、ドローン防除を定着させるには、技術だけでなく、地域の受け皿づくりも重要だということです。
後編では、導入を検討する農家が知っておきたい、実務面の課題や解決策をうかがいました。
課題(1) 紙の契約書や電話による日程調整
2025年のドローン防除委託を経て、早和果樹園が課題として挙げたのは、農家も含めた散布日程の調整です。
「作業を委託するとなると、遅くても1週間前には作業希望日を申告する必要があります。ただ、電話による日程調整や紙の契約書などによる手続き上のロスもあり、農家さんが散布してほしいタイミングとずれたりすることもあったんです。予定日に飛ばせる状況ではなくなってしまった時などは、オプティムさんも最大限対応してくださっていたんですが……」
課題(2)ドローンパイロットの絶対的な不足
もうひとつの課題は、実際に散布作業を行ってくれるドローンパイロットの人材確保です。
2025年に早和果樹園のドローン散布を担当したのは、以前取材した有田川町出身の東林真以さん。しかし、散布したいタイミングにパイロットの予定が合わなければ、すぐには飛ばせません。
「パイロット不足は非常に懸念されています。日程調整の中でも、パイロットと予定が合わないということはありますから」
周辺地域でドローンを飛ばせるパイロットの存在と、誰が相談に乗るのか、どう日程を組むのかといった体制づくりは急務となっています。
課題(3)委託コストと人件費の考え方
もうひとつの課題は、委託コスト。代理店として受託した経験から、楠さんは早和果樹園のような農業法人と、個人経営の農家の間のコストの受け止め方の違いについても課題を感じています。
法人であれば、そもそも作業にかかる従業員の人件費は計算しているため、ドローン防除の費用も比較しやすくなりますが……。
「個人農家さんの場合、人件費をどう考えているかは人によります。自分や家族の人件費を意識していない方からすると、ドローン防除の委託費はやや高額です」
ただし、作業の拘束時間や身体的負担まで含めて考えると、見え方は変わります。
「とくに夏場の散布は、たとえ経費が多少多めにかかったとしても、委託する価値はあると思います。夏場の散布をしなくて済むことを、経費の増額とどう天秤にかけるかがポイントですね」
単に散布費用だけを比べるのではなく、浮いた時間をどんな作業に使えるか、身体的負担をどれだけ減らせるか、適期防除を逃さないことでどのような効果が期待できるかまで含めて考える必要があります。複合的なメリットを感じられるかどうかは、農家側の行動や考え方次第です。
課題(4) 向いている園地、注意が必要な園地
4つ目の課題は、ドローン防除に向いている園地かどうか。上空から散布するというドローンの特性上、すべての園地で同じように実施できるわけではありません。園地の形状、周辺環境、樹の状態、品種、設備などによって、向き不向きがあります。
たとえば、雑木が近い園地では、ドローンで散布できない場合があります。また、スプリンクラーなどの設備がある園地や、樹がまだ小さい園地、品種が異なる園地では、すぐに導入できないこともあります。
早和果樹園でも、自社園地の中にドローンに適した場所はまだあるものの、一気に広げるのではなく、数年単位で検証しながら判断していくという方針をとっています。
「品種や樹の状態の都合もありますし、ドローン防除による効果を実証する意味でも、すぐに増やすというよりは3年、5年という単位で広げていけたらと考えています」
課題(5) ドローン対応薬剤・肥料の種類不足
楠さんがさらに指摘するのは、手散布などで使われる薬剤と比べて、ドローンに対応する農薬や液肥などの種類が圧倒的に足りないこと。
「手散布の際には、農薬と一緒に葉面散布の肥料などを混ぜて散布することがあるんです。ただ、ドローンで散布できる薬剤は濃度が濃く、併用できる肥料の種類も少ないのが現状です」
今後、ドローンに適した資材や散布方法が確立されれば、防除以外の作業にも活用が広がる可能性はあります。そうなれば、防除だけでなく追肥も含めて、さらなる効率化と品質の向上も見込めるようになるでしょう。
一方で、天候に左右される日程調整、パイロットの確保、園地ごとの向き不向き、そしてコストといった部分は、どれだけシステムが進化しても、現場が向き合うべき課題として残り続けます。そうした要素も含めて、自身の経営や園地・環境で委託に見合うかどうかを判断することも大切です。
早和果樹園が目指すのは地域の「橋渡し役」
早和果樹園がここまでドローン防除を進めている目的は、自社の省力化のためだけではありません。「有田みかん」の名産地をこれからも維持し続けていくためには、個々の農家の努力だけでなく、地域全体で作業負担をどう減らすかを考える必要があると考えているからです。
「オプティムさんと協力してドローン防除をやっているのは、『地域貢献』が大きな目的なんです。農家さんとドローンをつなげる橋渡しができればいいと考えています」
そのために、今後は営業的な役割よりも、ドローン防除に関する農家の相談窓口としての役目や、ドローン防除の理解を深めるための実演会への協力といった形でも関わっていく考えです。
「農家さんが気軽に相談したり話を聞きやすい環境づくりを意識していきたいんです。ドローンに触れる機会を作り続けることで、農家さんの意識を少しずつ変えていけたらと思っています」
ドローン防除は、見たことがない人にとってはまだまだ特別な技術です。しかし、地域の中で実際に飛んでいる様子を見たり、利用した農家の声を聞ける機会が増えれば、少しずつ「選択肢のひとつ」として受け止められていくでしょう。
ドローン防除委託が変える未来の柑橘農業
ドローン防除は、物理的に散布できない環境以外、ほぼどの柑橘園地でも手散布より効率化が図れることが見えてきました。
ただし、現段階では柑橘類のドローン防除の実効性はまだまだ浸透しておらず、ドローン防除のメリット・デメリットも含めた丁寧な説明ときめ細やかな対応を行う代理店の存在が不可欠です。
そんな中、早和果樹園の事例なども踏まえて、オプティムはスマホで直接散布を依頼できる「アグリポン」というサービスを運用開始しました。近隣の農家と一緒に申し込むほど、コストを抑えることもできます。
早和果樹園とオプティムの取り組みは、ドローン防除が単なる作業代替ではなく、産地の人手不足や作業負担に向き合うための選択肢になっていることを示しています。そして、そうした作業の積み重ねが、農家にとって納得してドローン防除委託を導入するための重要な判断基準になるでしょう。
地元密着型のドローン防除委託サービス
ドローン防除で空いた時間を摘果や調製に
農薬散布を委託して品質向上と収益アップにつなげたいなら……
▶︎柑橘ドローン防除サービスの詳細はこちら 農薬散布を委託して品質向上と収益アップにつなげたいなら……
※対応エリア・料金・作業条件は、地域や圃場状況等により異なる場合があります。
【特集】 「かんきつ類ドローン防除サービス」の革命
- みかんのドローン防除委託の現場で見えた5つの課題 【アグリポン 柑橘ドローン防除事例2026・後編】
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