「第11回農業Week」で見つけた注目農業ソリューション【後編】

2021年10月13日(水)~15日(金)、第11回農業Weekが千葉県幕張メッセで開催されている。同イベントは、国際農業資材EXPO、国際スマート農業EXPO、国際6次産業化EXPO、国際畜産資材EXPOの4展で構成される展示会だ。また同時に、国際ガーデンEXPOとツールジャパンも開催されており、日本最大級の農業関連展示会と言って間違いないだろう。

そんな農業Week展示物のなかから、編集部の注目ブース&アイテムを紹介していきたい。前編では、特定の製品・サービスジャンルにくくらずに気になったものを挙げたが、後編の今回は「無人車・農業ロボット・ローバー」といった、移動とかかわるサービスを紹介したい。

※「第11回農業Week」は業界の商談展のため、一般の方、18歳未満の方の入場はお断りしている。

話題の無人車、XAG「R150」は4仕様が勢ぞろい!



最初にご紹介するのはXAG JAPANのブース。本年6月より市販が開始された、世界初となる量産型無人車「R150」が展示されていた。無人車というのは、無人で移動させることができる多用途に使える車両、という意味である。

「R150」はRTK制御による正確な制御が可能だから、誰でも簡単、安全に使用できる。この無人車が面白いのは、ベースとなる車体のうえにアタッチメントのように多様な作業機を乗せることで、多くの作業を実現できるようにしているところだ。リリース発表時には、運搬と薬剤散布が、主な機能であるとされていた。

今回の展示会では、その機能に新たに、粒剤散布と草刈りが追加されており、それぞれの仕様が展示されていた。


コチラが薬剤散布仕様だが、これがベーススペック=標準仕様となる。液剤システムは、散布粒子径60~200ミクロン、最大散布幅12m、最大流量4.8L/m、タンク容量100Lである。


続いては、運搬仕様。多くの荷物を運搬して不整地を走行することを前提としているため、堅牢なキャリアと大径化されたホイールがセットされている。荷台サイズは92×70cm、積載重量は150kg。駆動時間は4時間である。
ここまではリリース発表時に紹介されていた。それに加えて本展示会では新たに……


草刈り仕様が追加されていた。草刈り速度は0.5m/s、最大切断幅1m、駆動時間は1時間と短いが、無人で作業してくれることを考慮すれば、予備バッテリーを準備しておけば、許容できる範囲だろう。

ちなみに「R150」のバッテリーは、すでに市場で品質が証明されているXAG製ドローンに搭載されているものと互換性のある可搬式バッテリーだ。だから圃場でサッと交換する、ということも可能だろう。



そして最後はこの粒剤散布システム。タンク容量220L、最大散布幅8m、全負荷時駆動時間は2時間、最大運用効率20ha/hと発表された。

アタッチメントを搭載することと、機能することは別問題ではあろうが、発売開始のリリースから半年で新機能が2つも追加されるスピード感に、ただただ驚かされた。

XAG JAPAN代表取締役社長の住田靖浩さんが説明してくれた。

「リリース発表直後から、想像以上に問い合わせをいただくことができました。日本市場には大き過ぎるのではないか、という声も聞かれました(散布仕様のサイズは1515×1090×1105mm)。

ですが、当社が現行モデルで想定している主な販売先は果樹栽培の生産者様です。ある程度の規模の果樹園では、すでに乗用タイプのスピードスプレーヤーが運用されていますよね? そうした規模の生産者様の圃場であれば、この『R150』も問題なくご利用いただけると判断しています。

この無人車は汎用機であり、今回新たに草刈りと粒剤散布機能が追加されたことで、運搬と薬剤散布を含めて4つの作業をこなせるようになります。これならば、スピードスプレイヤーよりも有効に活用していただけると思います。

仕様の変更はボルト20本程度+配線くらいで可能ですから、一般的な農家さんであっても、20分もあれば交換できるはずですよ」

なお、販売価格は本体+バッテリー+充電器+測量機材+散布ノズル+タンクを含めて250万円程度であり、必要に応じてアタッチメントを購入する仕組みとなる。それぞれ20万円程度となる見込みだ。2022年前半に発売開始予定とのことなので、ご興味を持たれた方は同社の動向を継続してウォッチして欲しい。


中小規模生産者のための農業ロボット「DONKEY」は量産が開始か?



続いてご紹介するのは、ご存じの方も多いであろう「DONKEY」。2017年に民間企業6社によるロボット開発コンソーシアムが発足、2020年には神奈川県相模原市に株式会社DONKEYが設立され、その間、地道に開発が継続されてきた。

この「DONKEY」はXAGの「R150」と似た仕組み、つまり電動台車をベースにした多目的の無人車である。2021年7月より試験販売されている仕様は、電動の四輪独立駆動、最大積載量は100kg。そして車体は1,100×610×750mm。「R150」よりコンパクトである。また、果樹園のみならず、ハウス内や露地でも使われることを想定しているのも、「R150」との大きな違いだ。

代表取締役社長の山本秀勝さんは、

「ここに展示しているのは、本年7月より試験販売が開始されたモデルで、自動追従またはリモコンで操縦します。コンパクトサイズだから大型農機が入りにくい場所でも稼働できること、また複数作業をこなすことで軽労化・効率化できること、が特徴です。

ただ、この試験販売モデルで実現したのは自動追従まで。これでは不完全だと考えています。日本農業の将来を考えたとき、無人でも大丈夫という状態=省人化にしなければ、農家さんの力になれたとは言えません。それを実現する自動走行モデルを量産仕様として、来年4月に発売します。ご期待ください!」

と力強く語ってくれた。


展示品のコントローラーをみると、すでに「自動走行」モードが用意されている。来年4月には、ここにランプが灯る。楽しみに待ちたい。

クローラータイプの運搬車「メカロン」はマーケティング販売開始!


いかに四輪駆動とはいえ、不整地での走行に車輪タイプでは不安を覚える方もいることだろう。そんな不安を一掃してくれるクローラータイプの無人車が「メカロン」。生産したメーカーは茨城県つくば市の株式会社Doog。本年1月に発表、そして本展示会初日である10月13日より、マーケティング販売が発表されたばかりのモデルだ。

Doogは車輪タイプの運搬ロボット「サウザーBASIC」をすでに市販しており、工場や物流業界で高く評価されてきた。ライントレース、自動追従に加えて、メモリートレースという機能があり、一度走行したルートを記憶させて何度も同じルートを走行させることができる。

また「サウザー」シリーズは「第9回ロボット大賞」の「中小・ベンチャー企業賞(中小企業庁長官賞)」と、日本ロボット学会の「第25回実用化技術賞」を受賞しており、狭い場所での稼働や人を見分けて追従できる機能が高く評価されている。

Doogの管理部部長、伊藤茜さんが教えてくれた。

「『サウザー』は運搬車ですが、この『メカロン』は、高齢化が進むなかでも農業を楽しく継続するためのツールとして開発したものです。農研機構と共同研究して、製品化を進めて来たんですよ。農業向けということで、クローラータイプにしたこと、またソフトウェアも農業向けに確率しました。

運搬車としてはもちろんですが、荷台の上を自由にお使いいただくことで、農業生産者さんのパートナーになってくれたら、と願っています」

とのこと。マーケティング機の価格は250~600万円。バッテリー容量や開発協力に応じて幅広い設定とされている。自動走行向けのネットワークインターフェイスや、メカロンから電源を供給するためのカスタマイズも含まれるというから、かなり開発は進んでいる模様。量産タイプの発売開始を楽しみに待ちたい。


ユニリタのローバーはクラウドサービスとデータ連携する



ローバーを展示していたのは、ITに強みを持つユニリタだ。かつてのモデルとは異なり、新たにF-Designと共同開発している。このローバーは施設栽培用に開発されており、ライントレースによる自動走行とリモート操作で動作する。

機能としては、薬剤散布・圃場内環境把握(温度・湿度・照度・CO2)、生育状況監視などが挙げられている。


本体の上に伸びる緑色のフレームにはセンサーカメラと……


薬剤散布用のノズル(6個)を搭載している。薬剤を入れるタンクの容量は20Lである。

クラウドサービス事業本部ソーシャルイノベーション部部長代理兼アグリビジネスグループリーダーの深水桂輔さんは、散布と同時にデータ取得も行い、同社のクラウドサービスと連携させられることを強調した。


「このローバーはハウス内で使用されます。移動しながらが薬剤散布するから散布漏れがなく、またハウス内のあらゆる地点の環境データを正確に取得できます。ハウス内での病害虫は、特にハウスの四隅や障害物の陰になる部分で発生しますが、ローバーなら、そうした地点にまで薬剤を散布したり、環境情報を取得することができます。

また、取得したデータは、2022年からの提供開始を予定している『ベジパレット』と連携して活用することで強みを発揮します。『ベジパレット』というのは、当社が開発中のクラウドサービスです。農業経営を支援するサービスはすでに数多く提供されていますが、『ベジパレット』は圃場ごとの収支を可視化できるのが最大の特徴です。農業経営にかかわるあらゆる事柄を管理できるので、無理や無駄を削減したり、改善の糸口を見つけることもできるはずです」

「ベジパレット」は6月30日にβ版がリリースされているという。ローバーの進捗と共に、今後もウォッチしていきたい。


XAG JAPAN 株式会社(R150)
https://www.xa.com/jp/xauv_r150
株式会社DONKEY
https://www.donkey.co.jp/
株式会社Doog
https://doog-inc.com/
株式会社ユニリタ(農業×IT)
https://www.unirita.co.jp/agriculture.html

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WRITER LIST

  1. 堀口泰子
    栄養士、食アスリートシニアインストラクター、健康・食育シニアマスター。フィットネスクラブ専属栄養士を経て独立。アスリートの食事指導や栄養サポートの他、離乳食から介護予防まで食を通じて様々な食育活動を行う。料理家としても活動し、レシピ提案、商品開発も担う。食事は楽しく、気負わず継続できる食生活を伝えることを信条とする。スポーツの現場ではジュニアの育成、競技に向き合うための心と体の成長に注力している。HP:https://eiyoushiyakko.jimdofree.com/
  2. 大槻万須美
    管理栄養士・フードスタイリスト。楽しく食べて健康に。食の大切さを伝えるため、料理教室、バレエダンサーやアスリートのパーソナル栄養サポート、レシピ・コラムの提供など幅広く活動。子どもの頃の毎年の米作り経験から、身近な食体験の重要性についても実感し、おとなと子どもの食育サポートにも力を注いでいる。
  3. 田牧一郎
    たまきいちろう。68歳。日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
  4. 田中克樹
    たなかかつき。32年間の農業出版社勤務を経て、2020年末、故郷の八ヶ岳南麓に帰郷。仲間と共に農業・福祉系NPOを立ち上げ、遊休農地・耕作放棄地を再生し、心身の癒しや健康づくりにつながる有機無農薬の体験型農園づくりに取り組む。NPOでは田んぼ除草にホバークラフトを活用したスマート技術を開発中。農と風土(フード)を愛する人たち向けのブックカフェ・居酒屋を開くのが夢。
  5. 山田正美
    大阪工業大学大学院修了。福井県職員として、農業試験場研究員、専門技術員、農業技術経営課長、農林水産部技幹を経て退職。現在、日本生産者GAP協会常務理事、日本農業サポート研究所主席コンサルタント。
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