テムザック、水田用雑草抑制ロボット「雷鳥1号」の効果検証を島根県で実施

株式会社テムザックは、農業ロボット「雷鳥1号(雑草抑制モデル)」による雑草抑制効果および性能を検証する実証実験を島根県吉賀町で実施した。これにより、雷鳥1号が水を濁らせることで光合成を阻害し、雑草の生育を抑える手法として有効であることが確認された。

左:島根県米農家N氏、右:島根の田んぼで稼働する雷鳥1号の様子

耕作放棄地拡大の歯止めとなることを目指す


株式会社テムザックは、人とロボットの共存社会を目指し、人間が行う動作や作業を支援するサービスロボットの開発を手がける企業。農業や医療、災害レスキューなど人手が足りない現場で活躍する「WORKROID(ワークロイド )」の開発を行っている。

WORKROID農業は、テムザックが2023年春から宮崎県延岡市で開始した省力化農業プロジェクトだ。このプロジェクトでは、長年培ってきたロボット技術を活かして、米粉用の稲作に取り組んでいる。

初年度は、農業ロボット「雷鳥シリーズ」を開発・投入し、労働時間を大幅に削減しながら、24aの圃場から800kg弱の米を収穫することに成功した。


今回の実証実験は、雷鳥1号を用いて、異なる環境・地域・条件下での抑草効果、ロボット自体の性能を検証・分析するため、島根県の米農家の協力を得て実施された。

雷鳥1号とは、稲の成長を妨げる雑草の抑制を目的とした自律移動ロボットで、底面に付いたヒレ状の脚を動かして水を濁らせ、雑草の光合成を妨げることで雑草の成長を抑制できる。前進→右旋回→前進→左旋回といった単純な動きをランダムに行うようプログラミングされており、複数台を同時に稼働することで効率的に隅々まで撹拌することが可能だ。

また、太陽光発電のエネルギーで自律航行が可能で、バッテリーも搭載されているため、天気が曇りの日でも使用できる。さらに、小型で軽量な作りによって搬入出作業が容易に行え、水田の規模が大きい場合は、台数の増減で柔軟に対応できるという。


今回行われた実証実験では、雑草生育阻害に一定の効果を確認できたと同時に、ロボットの構造や運用面における改善点も明らかになった。結果の詳細は以下の通りだ。

<検証結果>

雑草生育阻害

水面に浮く水草はあったものの、田面から生える雑草は部分的にみられる程度で、攪拌により一定の効果があった。

攪拌能力
水深10cmほど、田面は代掻き後のやわらかい層が残っている状態での投入において、問題なく攪拌できた。

稲への影響
6葉期前後の稲においては、雷鳥1号通過後に稲が倒れたままであることは無く、時間経過とともに起き上がってきた。また、外輪部、脚部による稲へのダメージが懸念されていたが、2週間経過後も稲へのダメージはほぼ見られなかった。

攪拌の均一性
水位のムラによって、均一に撹拌できていないところも確認された。

この結果をもとに対策を講じるとともに、圃場条件を変えて実証を行い、さらなるブラッシュアップを図るとしている。

なお、協力者である島根県の米農家も実証の結果に満足しており、今後は国の方針でもある有機農業への貢献を期待しているという。


テムザックは、雑草抑制のみならず、稲作にかかわるさまざまな作業のロボット化を進めており、2025年を目途に農業ロボット「雷鳥シリーズ」のラインナップを一通り完成させる予定だ。

今後も、省力化を追求する米作りを実践しながら、米粉の魅力発信と流通網の構築、ロボットを使った新たな稲作サービスの仕組み作りに取り組むとしている。

実証実験概要


投入日 / 回収日:2024年6月13日(木)/ 2024年6月28日(金)
実施期間:約2週間
場所:島根県吉賀町
圃場の条件:水稲栽培の圃場/6葉期/水深10cm程
内容:圃場/1400㎡に対し、計3台の雷鳥1号を投入し、雑草抑制の効果及びロボット性能を検証


株式会社テムザック
https://www.tmsuk.co.jp/
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  1. 田牧一郎
    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
  2. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  3. 石坂晃
    石坂晃
    1970年生まれ。千葉大学園芸学部卒業後、福岡県の農業職公務員として野菜に関する普及指導活動や果樹に関する品種開発に従事する一方、韓国語を独学で習得(韓国語能力試験6級)。退職後、2024年3月に玄海農財通商合同会社を設立し代表に就任、日本進出を志向する韓国企業・団体のコンサルティングや韓国農業資材の輸入販売を行っている。会社HP:https://genkai-nozai.com/home/個人のブログ:https://sinkankokunogyo.blog/
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    川島礼二郎
    1973年神奈川県生まれ。筑波大学第二学群農林学類卒業。フリーラインスの編集ライターとして、テクノロジーをキーワードに、農業雑誌・自動車雑誌などで執筆・編集活動中。
  5. 堀口泰子
    堀口泰子
    栄養士、食アスリートシニアインストラクター、健康・食育シニアマスター。フィットネスクラブ専属栄養士を経て独立。アスリートの食事指導や栄養サポートの他、離乳食から介護予防まで食を通じて様々な食育活動を行う。料理家としても活動し、レシピ提案、商品開発も担う。食事は楽しく、気負わず継続できる食生活を伝えることを信条とする。スポーツの現場ではジュニアの育成、競技に向き合うための心と体の成長に注力している。HP:https://eiyoushiyakko.jimdofree.com/
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