「第14回農業WEEK」の注目農業ソリューション【前編】 バイオスティミュラントとハウスの暑熱対策資材
2024年10月9~11日の3日間、「第14回農業WEEK」が千葉県の幕張メッセで開催された。国内最大級の農業関連展示会だ。
今回は前回から引き続き、「国際農業資材EXPO」、「国際スマート農業EXPO」、「国際6次化EXPO」、「国産畜産資材EXPO」に、「農業 脱炭素・SDGs EXPO」で構成された。
そんな農業WEEK展示物のなかから、編集部が独自に注目したブース&アイテムを紹介していきたい。前編となる本稿では、バイオスティミュラントとハウスの暑熱対策資材を紹介して行こう。
農薬でも肥料でも土壌改良剤でもない新しい農業資材として、すっかり定着した感のあるバイオスティミュラント(以下、BS)だが、今回の農業WEEKでは、興味深い新製品や開発中製品のほか、農業生産者への普及に向けた新しい工夫がみられた。
三菱ケミカルが展示していたのは、鮮度保持コート剤。同社が市販している食品添加物を原料に利用し開発している。青果物に適用することで表面に被膜を形成して機能するという。三菱ケミカルのフード・ヘルスケアインキュベーション部の小池泰介さんが教えてくれた。
「青果物は収穫された後も呼吸しているのですが、それにより劣化が進行します。この鮮度保持コート剤は青果物表面に被膜を作るため、青果物内部への酸素の侵入を防ぐことで呼吸を抑制し、劣化を遅らせることができます。また、被膜は青果物からの水分の蒸発も防ぐことで鮮度の維持に役立ちます」
青果物の鮮度を長く保持できれば、輸送時のロス率低下が実現するうえ、輸出する際にも有利に働く。唯一の懸念は青果物に被覆することに対する安全性の担保だが、それについても小池さんは明快に答えてくれた。
「鮮度保持コート剤は、当社が販売している食品添加物である『ショ糖脂肪酸エステル』が原料です。これはショ糖と植物由来の脂肪酸から得られる安全な乳化剤で、マーガリンの固体脂結晶の細分化や、アイスクリームの口溶けをよくするのに使われています。既に食品に利用されている原料ですから、心配ありませんよ」
同社では「鮮度保持コート剤」をBSと定義していないが、BS協議会の定義「収穫後の保存性を改善するために、栄養素とは異なる経路を通じて植物生理に作用する」に照らし合わせれば、BSと呼んで差し支えないだろう。
発売開始は2025年末を予定しているという。今後の開発から目が離せないBSだ。
三菱ケミカル
https://www.mcgc.com/index.html
作物の根に共生する土壌微生物をベースにしたBSの開発などに挑戦しているのは、茨城大学・筑波大学発のベンチャー企業であるendophyte(エンドファイト)。同社が保有するエンドファイト(内生菌)「Dark-septate endophyte」(DSE)は、ほぼすべての植物の根に共生可能であり、共生することで植物のストレス耐性の向上や成長促進、花芽形成促進、土壌微生物の呼吸量の削減を可能にするという。
DSEとは聞きなれない単語だが、どのようなものなのだろう? 説明してくれたのは、同社の共同創業者であり茨城大学農学部食生命科学科教授の成澤才彦さん。
「DSEというのは、貧栄養環境の森林土壌から分離・選抜した植物内生菌のことです。菌糸に隔壁(Septa)があり、暗色(Dark)のコロニーを形成する植物内生菌(Endophyte)の頭文字をとって、DSEと呼ばれます。DSEが植物の根に共生・定着することで、植物が自分では吸収できない有機体窒素やリン酸を供給したり、環境ストレス耐性が付与されるのです。
当社は、長年かけて集めた世界最大規模の1万株以上からなるDSEライブラリーを保有しているのですが、菌株ごとにさまざまな効果を発揮しますから、ニーズに応じた農業資材(BS)を提供できる可能性があるのです」
成澤さんによると、いくつかの株が、高温・低温耐性向上、酸性・アルカリ性土壌への耐性向上、乾燥耐性向上のほか、日照・温度に依存しない花芽形成、含有栄養素と食味の向上、土壌中汚染物質の吸収抑制などの機能を有していることが確認されているという。
1万を越える株の機能をすべて把握するには時間が掛かるのかも知れないが、それだけ多くの可能性も秘めていると言えよう。今後の開発に期待したい。
エンドファイト
https://endo-phyte.com/
肥料、農薬、培養土、活力剤の製造販売を手がけるハイポネックスが多様なBSを販売していることはご存じのことだろう。菌根菌資材の「マイコジェル」、根張りを促進する「ライゾー」、有機活力液肥の「ボンバルディア」、微細藻類液肥の「パナケア MA Original」などである。
だが、農業生産者の視点で製品ラインナップを眺めても、その使い方を想像できないのではないだろうか? どの作物が、どの状態にあるときに、何を施用したら効くのか……それをわかりやすく農業生産者に伝えなければ、BSは普及しにくいと言われている。
そこにハイポネックスは切り込んだ。展示ブースでは、商品そのものの説明と同等のスペースを割いて、同社製BSの施用プログラムを掲示していた。さらに、持ち帰り可能なパンフレットとして、トマト、レタス、ほうれんそうなどの施用プログラムを配布していた。
これはBS普及の一助となる取り組みと言えるだろう。ハイポネックスジャパンの担当者が教えてくれた。
「プログラムの作成にはかなり悩みました。効果的な施用タイミングは、地域や生育環境、それに年によっても異なりますから、植物の生育ステージに合わせて施用するタイミングを示しました。こうして施用プログラムとして明示することで、BS製品の理解が進むと考えて挑戦しています」
こうした地道な普及活動の成果に加えて、近年の夏の異常な暑さもあって、農業生産者のBSへの関心は高まる一方だ、とのこと。
また、今後の普及が期待されるBSの施用方法として、「種子への施用」と「ドローン散布」をあげていた。種子へのBS施用は十分な効果が期待できるだけでなく、費用を抑えることができるというのがその理由だ。特に大豆の場合、他の薬剤とともに施用できるため、効率が良いのだという。
「ドローン散布」については、外注委託による農薬のドローン散布が普及してきたことと関わりがあると推察される。BSは施設園芸や果樹で普及が先行しているが、散布できる仕組みが整いつつある今、追肥とともにBSを散布する、という農業生産者が増えてくるかもしれない。
ハイポネックスジャパン
https://www.hyponex.co.jp/
1876年の創業以来、天然樹脂ロジン(松やに)を中心に145年以上も事業を展開してきた荒川化学工業は、その松やにを原料とするBS開発に挑戦している。説明してくれたのは、荒川化学工業筑波研究所の研究員さん。
「松やにを原料として精製されたものがロジンで、このロジンから生産された物質は紙や印刷インキ、粘着テープや最先端電子材料のほか、チューイングガムや飲料などの食品にも使われています。
当社は長年、この松やに・ロジンというグリーンな素材を他の用途にも活用できないかと、さまざまな研究を続けてきたのですが、ロジン由来の物質が植物の生育促進や虫害低減などの効果があることを発見しました。現在、ロジンを原料にした農業資材を社会実装すべく、開発を加速させているところです」
農研機構との共同研究では、ロジンを原料にした物質にハダニの行動を抑制する効果があることが証明されたという。その推定作用機序は単純明快。害虫の身体にロジン化合物が付着すると行動が抑制される、などを考えているのだという。
また、同社はロジンを施用することで、なす、サツマイモ、ほうれんそうなどで収量が増えることを確認しており、2025年中の製品化を目指しているという。新しいBSの製品化に期待したい。
荒川化学工業
https://www.arakawachem.co.jp/jp/
「異例の猛暑」に毎年見舞われるようになった近年、施設園芸生産者にとってハウスの暑熱対策は切実な問題だ。近年の異常な暑さは、収量を低下させるだけでなく、作業者の健康を害する恐れもある。
ハウスの暑熱対策には、遮熱カーテンや遮熱シートなどが販売されているものの、やや高価であり施工にも手間と時間が掛かる。そこで注目されているのが、屋根に薬剤を吹き付ける暑熱対策だ。
施設園芸資材の総合メーカー、誠和のグループ企業である誠和アグリカルチャが展示していたのは、ハウスの屋根に吹き付けて使用する2種類の塗布剤だ。担当者によると、夏の暑さによる実害は年々増えており、それにともない「今までのやり方では立ち行かない!」と危機感を抱く施設園芸生産者が増えているという。
グループ会社の誠和は高機能で環境制御と相性が良いカーテン「LSスクリーン」を販売しているが、より簡素かつ安価な遮光資材として、高温期の熱や光から作物と作業者を守る「レディソル」と、過度に遮光することなく熱線(赤外線)を反射する「レディヒート」という2つの吹付型のハウス遮熱剤を販売している。
「今年は特に暑熱対策に関するお問い合わせが増えたことから、前面に出して展示しています。『レディソル』は太陽光と熱を均一に反射する、炭酸カルシウムを主成分とする遮光剤です。過剰な光と熱からハウス内の作物と作業者を守ります。希釈して動力噴霧機でハウス屋根に吹き付けて使用します。
希釈する際に濃度を調整することで、幅広い遮光率(約20~80%)で使用できる汎用性の高さが特徴です。ガラス、エフクリーン、硬質フィルム、農PO、農ビ、ポリカーボネート、アクリル等に適用できます」
もう一つの「レディヒート」は遮熱に特化した塗布剤で、主原料は酸化チタン。光合成に必要な光は多く透過するが熱線は多く反射するから、温度は下げつつ光量は保つことができる。春・夏に温度は下げたいが光は欲しい、という方に最適だ。使い方は「レディソル」と同じく、希釈して動力噴霧機で吹き付ける。
この2つの吹付型のハウス遮熱剤は、専用除去剤「レディクリーン」を吹き付けることで容易に洗い流すことができる。洗浄された液は基本的に生分解性だから、自然界に放出しても問題ない。
春以降のハウスの暑熱対策をお考えの方は、吹付型の遮光剤という選択肢を考えてみてはいかがだろうか。
誠和アグリカルチャ
https://pentakeep.seiwa-ltd.jp/
1969年に創業した、プラスチック(ポリプロピレン)製植木鉢(プラ鉢)を主要商品とする兼弥産業のブースにも、ハウスの暑熱対策に使う吹付型資材が展示されていた。「Q-HEAT」と「Q3 WHITE」がそれだ。
「当社の祖業はプラ鉢ですが、施設園芸生産者のニーズに応える形で、今では花卉や果菜類の苗のほか、農業資材も取り扱っています。
農業資材のなかで近年特に売上が伸びているのが、吹付型のハウスの遮光剤です。『Q-HEAT』は遮光率15~40%。光合成を促進させる有効光は透過させつつ、熱線は反射させます。効果は3~4カ月維持します。希釈して噴霧器やドローンでハウスの屋根に吹き付けて使用します。ガラス、POフィルム、農ビ、ポリカーボネートなどの屋根に使用できます」
特定期間の遮光・遮熱をしたい方には『Q3ホワイト』をラインナップしている。こちらは遮光率45~80%で耐候性は1~5カ月程度。希釈倍率や散布量により遮光率を調整できる。同社の吹付型の遮熱剤も、専用除去剤を吹き付けることで、簡単に洗い流すことができる。
兼弥産業
https://www.kaneya-ltd.co.jp/
今回は前回から引き続き、「国際農業資材EXPO」、「国際スマート農業EXPO」、「国際6次化EXPO」、「国産畜産資材EXPO」に、「農業 脱炭素・SDGs EXPO」で構成された。
そんな農業WEEK展示物のなかから、編集部が独自に注目したブース&アイテムを紹介していきたい。前編となる本稿では、バイオスティミュラントとハウスの暑熱対策資材を紹介して行こう。
バイオスティミュラント
農薬でも肥料でも土壌改良剤でもない新しい農業資材として、すっかり定着した感のあるバイオスティミュラント(以下、BS)だが、今回の農業WEEKでは、興味深い新製品や開発中製品のほか、農業生産者への普及に向けた新しい工夫がみられた。
三菱ケミカル:収穫した青果物の寿命を伸ばすBSを開発中
三菱ケミカルが展示していたのは、鮮度保持コート剤。同社が市販している食品添加物を原料に利用し開発している。青果物に適用することで表面に被膜を形成して機能するという。三菱ケミカルのフード・ヘルスケアインキュベーション部の小池泰介さんが教えてくれた。
「青果物は収穫された後も呼吸しているのですが、それにより劣化が進行します。この鮮度保持コート剤は青果物表面に被膜を作るため、青果物内部への酸素の侵入を防ぐことで呼吸を抑制し、劣化を遅らせることができます。また、被膜は青果物からの水分の蒸発も防ぐことで鮮度の維持に役立ちます」
青果物の鮮度を長く保持できれば、輸送時のロス率低下が実現するうえ、輸出する際にも有利に働く。唯一の懸念は青果物に被覆することに対する安全性の担保だが、それについても小池さんは明快に答えてくれた。
「鮮度保持コート剤は、当社が販売している食品添加物である『ショ糖脂肪酸エステル』が原料です。これはショ糖と植物由来の脂肪酸から得られる安全な乳化剤で、マーガリンの固体脂結晶の細分化や、アイスクリームの口溶けをよくするのに使われています。既に食品に利用されている原料ですから、心配ありませんよ」
同社では「鮮度保持コート剤」をBSと定義していないが、BS協議会の定義「収穫後の保存性を改善するために、栄養素とは異なる経路を通じて植物生理に作用する」に照らし合わせれば、BSと呼んで差し支えないだろう。
発売開始は2025年末を予定しているという。今後の開発から目が離せないBSだ。
三菱ケミカル
https://www.mcgc.com/index.html
エンドファイト:茨城大学・筑波大学発ベンチャーは土壌微生物のBS資材化を目指す
作物の根に共生する土壌微生物をベースにしたBSの開発などに挑戦しているのは、茨城大学・筑波大学発のベンチャー企業であるendophyte(エンドファイト)。同社が保有するエンドファイト(内生菌)「Dark-septate endophyte」(DSE)は、ほぼすべての植物の根に共生可能であり、共生することで植物のストレス耐性の向上や成長促進、花芽形成促進、土壌微生物の呼吸量の削減を可能にするという。
DSEとは聞きなれない単語だが、どのようなものなのだろう? 説明してくれたのは、同社の共同創業者であり茨城大学農学部食生命科学科教授の成澤才彦さん。
「DSEというのは、貧栄養環境の森林土壌から分離・選抜した植物内生菌のことです。菌糸に隔壁(Septa)があり、暗色(Dark)のコロニーを形成する植物内生菌(Endophyte)の頭文字をとって、DSEと呼ばれます。DSEが植物の根に共生・定着することで、植物が自分では吸収できない有機体窒素やリン酸を供給したり、環境ストレス耐性が付与されるのです。
当社は、長年かけて集めた世界最大規模の1万株以上からなるDSEライブラリーを保有しているのですが、菌株ごとにさまざまな効果を発揮しますから、ニーズに応じた農業資材(BS)を提供できる可能性があるのです」
成澤さんによると、いくつかの株が、高温・低温耐性向上、酸性・アルカリ性土壌への耐性向上、乾燥耐性向上のほか、日照・温度に依存しない花芽形成、含有栄養素と食味の向上、土壌中汚染物質の吸収抑制などの機能を有していることが確認されているという。
1万を越える株の機能をすべて把握するには時間が掛かるのかも知れないが、それだけ多くの可能性も秘めていると言えよう。今後の開発に期待したい。
エンドファイト
https://endo-phyte.com/
ハイポネックス:作物別のBS処方プログラムを提示
肥料、農薬、培養土、活力剤の製造販売を手がけるハイポネックスが多様なBSを販売していることはご存じのことだろう。菌根菌資材の「マイコジェル」、根張りを促進する「ライゾー」、有機活力液肥の「ボンバルディア」、微細藻類液肥の「パナケア MA Original」などである。
だが、農業生産者の視点で製品ラインナップを眺めても、その使い方を想像できないのではないだろうか? どの作物が、どの状態にあるときに、何を施用したら効くのか……それをわかりやすく農業生産者に伝えなければ、BSは普及しにくいと言われている。
そこにハイポネックスは切り込んだ。展示ブースでは、商品そのものの説明と同等のスペースを割いて、同社製BSの施用プログラムを掲示していた。さらに、持ち帰り可能なパンフレットとして、トマト、レタス、ほうれんそうなどの施用プログラムを配布していた。
これはBS普及の一助となる取り組みと言えるだろう。ハイポネックスジャパンの担当者が教えてくれた。
「プログラムの作成にはかなり悩みました。効果的な施用タイミングは、地域や生育環境、それに年によっても異なりますから、植物の生育ステージに合わせて施用するタイミングを示しました。こうして施用プログラムとして明示することで、BS製品の理解が進むと考えて挑戦しています」
こうした地道な普及活動の成果に加えて、近年の夏の異常な暑さもあって、農業生産者のBSへの関心は高まる一方だ、とのこと。
また、今後の普及が期待されるBSの施用方法として、「種子への施用」と「ドローン散布」をあげていた。種子へのBS施用は十分な効果が期待できるだけでなく、費用を抑えることができるというのがその理由だ。特に大豆の場合、他の薬剤とともに施用できるため、効率が良いのだという。
「ドローン散布」については、外注委託による農薬のドローン散布が普及してきたことと関わりがあると推察される。BSは施設園芸や果樹で普及が先行しているが、散布できる仕組みが整いつつある今、追肥とともにBSを散布する、という農業生産者が増えてくるかもしれない。
ハイポネックスジャパン
https://www.hyponex.co.jp/
荒川化学工業:松やにを原料とするBSを開発中
1876年の創業以来、天然樹脂ロジン(松やに)を中心に145年以上も事業を展開してきた荒川化学工業は、その松やにを原料とするBS開発に挑戦している。説明してくれたのは、荒川化学工業筑波研究所の研究員さん。
「松やにを原料として精製されたものがロジンで、このロジンから生産された物質は紙や印刷インキ、粘着テープや最先端電子材料のほか、チューイングガムや飲料などの食品にも使われています。
当社は長年、この松やに・ロジンというグリーンな素材を他の用途にも活用できないかと、さまざまな研究を続けてきたのですが、ロジン由来の物質が植物の生育促進や虫害低減などの効果があることを発見しました。現在、ロジンを原料にした農業資材を社会実装すべく、開発を加速させているところです」
農研機構との共同研究では、ロジンを原料にした物質にハダニの行動を抑制する効果があることが証明されたという。その推定作用機序は単純明快。害虫の身体にロジン化合物が付着すると行動が抑制される、などを考えているのだという。
また、同社はロジンを施用することで、なす、サツマイモ、ほうれんそうなどで収量が増えることを確認しており、2025年中の製品化を目指しているという。新しいBSの製品化に期待したい。
荒川化学工業
https://www.arakawachem.co.jp/jp/
ハウスの暑熱対策 屋根に吹き付ける薬剤
「異例の猛暑」に毎年見舞われるようになった近年、施設園芸生産者にとってハウスの暑熱対策は切実な問題だ。近年の異常な暑さは、収量を低下させるだけでなく、作業者の健康を害する恐れもある。
ハウスの暑熱対策には、遮熱カーテンや遮熱シートなどが販売されているものの、やや高価であり施工にも手間と時間が掛かる。そこで注目されているのが、屋根に薬剤を吹き付ける暑熱対策だ。
誠和アグリカルチャ:屋根吹付型の暑熱対策剤
施設園芸資材の総合メーカー、誠和のグループ企業である誠和アグリカルチャが展示していたのは、ハウスの屋根に吹き付けて使用する2種類の塗布剤だ。担当者によると、夏の暑さによる実害は年々増えており、それにともない「今までのやり方では立ち行かない!」と危機感を抱く施設園芸生産者が増えているという。
グループ会社の誠和は高機能で環境制御と相性が良いカーテン「LSスクリーン」を販売しているが、より簡素かつ安価な遮光資材として、高温期の熱や光から作物と作業者を守る「レディソル」と、過度に遮光することなく熱線(赤外線)を反射する「レディヒート」という2つの吹付型のハウス遮熱剤を販売している。
「今年は特に暑熱対策に関するお問い合わせが増えたことから、前面に出して展示しています。『レディソル』は太陽光と熱を均一に反射する、炭酸カルシウムを主成分とする遮光剤です。過剰な光と熱からハウス内の作物と作業者を守ります。希釈して動力噴霧機でハウス屋根に吹き付けて使用します。
希釈する際に濃度を調整することで、幅広い遮光率(約20~80%)で使用できる汎用性の高さが特徴です。ガラス、エフクリーン、硬質フィルム、農PO、農ビ、ポリカーボネート、アクリル等に適用できます」
もう一つの「レディヒート」は遮熱に特化した塗布剤で、主原料は酸化チタン。光合成に必要な光は多く透過するが熱線は多く反射するから、温度は下げつつ光量は保つことができる。春・夏に温度は下げたいが光は欲しい、という方に最適だ。使い方は「レディソル」と同じく、希釈して動力噴霧機で吹き付ける。
この2つの吹付型のハウス遮熱剤は、専用除去剤「レディクリーン」を吹き付けることで容易に洗い流すことができる。洗浄された液は基本的に生分解性だから、自然界に放出しても問題ない。
春以降のハウスの暑熱対策をお考えの方は、吹付型の遮光剤という選択肢を考えてみてはいかがだろうか。
誠和アグリカルチャ
https://pentakeep.seiwa-ltd.jp/
兼弥産業:屋根吹付型の暑熱対策材
1969年に創業した、プラスチック(ポリプロピレン)製植木鉢(プラ鉢)を主要商品とする兼弥産業のブースにも、ハウスの暑熱対策に使う吹付型資材が展示されていた。「Q-HEAT」と「Q3 WHITE」がそれだ。
「当社の祖業はプラ鉢ですが、施設園芸生産者のニーズに応える形で、今では花卉や果菜類の苗のほか、農業資材も取り扱っています。
農業資材のなかで近年特に売上が伸びているのが、吹付型のハウスの遮光剤です。『Q-HEAT』は遮光率15~40%。光合成を促進させる有効光は透過させつつ、熱線は反射させます。効果は3~4カ月維持します。希釈して噴霧器やドローンでハウスの屋根に吹き付けて使用します。ガラス、POフィルム、農ビ、ポリカーボネートなどの屋根に使用できます」
特定期間の遮光・遮熱をしたい方には『Q3ホワイト』をラインナップしている。こちらは遮光率45~80%で耐候性は1~5カ月程度。希釈倍率や散布量により遮光率を調整できる。同社の吹付型の遮熱剤も、専用除去剤を吹き付けることで、簡単に洗い流すことができる。
兼弥産業
https://www.kaneya-ltd.co.jp/
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