【2021年度データ】食料自給率は38%に微増 改善の鍵は小麦・大豆の国産化

農林水産省は、2021年度(令和3年度)のカロリーベースの食料自給率が前年度よりも1%高い38%になったことを発表した。生産額ベースの食料自給率は前年度よりも4%下がった63%となった。また、食料自給力指標は前年度と同じ1755kcalとなっている。



小麦の単収増加によりカロリーベースの食料自給率はわずかに回復


食料自給率とは、国内の食料供給に対する食料の国内生産の割合を示す指標のこと。

参考記事:日本の「食料自給率」はなぜ低いのか? 食料自給率の問題点と真実
https://smartagri-jp.com/agriculture/129

今回の回復については、米から小麦、大豆への転作奨励が進み、作付面積、単収ともに増加したことや、新型コロナウイルスの蔓延と緊急事態宣言などの影響で下火となっていた、外食産業での米の需要回復などが重なったことで、前年度より1ポイント高い38%となった。

また、カロリーベースの食料国産率(飼料自給率を反映しない値)についても、前年度より1ポイント高い47%となった。
なお、飼料自給率は前年度と同じ25%となっている。

生産額ベースの食料自給率は輸入増加により減少


一方、
生産額ベースの食料自給率については、国際的な穀物価格や海上運賃の上昇などにより、畜産物の飼料輸入額、油脂類・でん粉等の原料輸入額の増加、肉類や魚介類の輸入単価の上昇、米や野菜の国産単価の低下などを受け、前年度より4ポイント低い63%となっている。また、生産額ベース食料国産率(飼料自給率を反映しない)についても、前年度より2ポイント低い69%となった。

穀物や飼料の輸入価格、運賃の上昇については、緊迫するロシアーウクライナの情勢により、今後も改善の見通しが見えず、さらに悪化する可能性もある。

食料自給力指標は、米類では維持、いも類ではダウン


国内生産だけで1日あたり国民1人に供給できるエネルギーをカロリーで示した「食料自給力指標」は、
米・小麦中心の作付けでは1755kcalで前年度から横ばい、
いも類中心の作付けでは2418kcalで前年度から72kcal減少した。

新たな指標「食料自給力」とは? 農地と労働力を加味した指標で見る日本農業の現状
https://smartagri-jp.com/agriculture/4381

米・小麦中心の作付けについては、農地面積が減少したものの、小麦の平均単収が増加したことにより、前年度を維持。
いも類中心の作付けについては、労働力の減少、かんしょの平均単収の減少、農地面積の減少などにより、前年度を下回った。


体重を保つために必要とされるカロリーは2169kcalとされており、米・小麦中心の作付では自給できない計算となっている。

作付けについては、毎年の気候などの影響で単収が上がらなかった影響もあるものの、そもそも日本が主食として中心的に需給している米・麦が必要量に達していないことは課題となっている。

国内の米の需要減少にも歯止めがかからないことや、国の補助の減少などで米の作付けは減らされる傾向にある一方、うどんやパンなどで活用可能な小麦への転作に期待する向きも増えている。しかし、災害時や世界的な食料不足といった、今後想定される状況に備えるための食料自給力指標としては不足したままだ。

栽培農地の減少、労働力の減少の影響が顕著


カロリーベースの食料自給率は1%アップしたものの、2030年度で45%という政府目標からはかなりかけ離れているのが実情だ。

農水省としては、国内の需要が高く、そのほとんどを輸入し価格も高騰している麦類や大豆などの国産化を進めたいとしている。輸入にかかる関税や輸送コストなどを含めて考えても、国産化することで数値的な改善が見込める。

しかし、日本の大部分を占める米生産農家に対して、麦や豆の栽培ノウハウや農機などが異なるなど、さまざまな問題もあり、すぐには転作が進まないのが現状だ。

米に関しては、食料自給率としては国内の需要を満たせる収量を確保することを第一としつつ、より新しい市場に向けて日本米の魅力を伝え、ニーズを拡大していくことが必要だ。

同時に、麦や大豆などニーズが見込める食材に関して輸入から自給へと舵を切るために、農地の集積による栽培効率のアップ、日本の気候とニーズに合わせた新品種の開発、国としての麦や大豆への転作支援や国産消費へ舵を切るための政策などが求められる。


令和3年度食料自給率・食料自給力指標について|農林水産省
https://www.maff.go.jp/j/press/kanbo/anpo/220805.html

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  1. 槇 紗加
    1998年生まれ。日本女子大卒。レモン農家になるため、大学卒業直前に小田原に移住し修行を始める。在学中は、食べチョクなど数社でマーケティングや営業を経験。その経験を活かして、農園のHPを作ったりオンライン販売を強化したりしています。将来は、レモンサワー農園を開きたい。
  2. 田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
  3. さわちん
    2児の父。あるきっかけにより農業のイメージを変えたいと考え、16年間のサラリーマン生活にピリオドを打つことを決意。2020年春、家族で田舎に移住し、新規就農を目指す。自身が「移住×就農のモデルケース」となるために、いろんな方面へ向けて奮闘中。
  4. 福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  5. 窪田新之助
    農業ジャーナリスト。福岡県生まれ。日本経済新聞社が主催する農業とテクノロジーをテーマにしたグローバルイベント「AG/SUM(アグサム)」プロジェクトアドバイザー、ロボットビジネスを支援するNPO法人Robizyアドバイザー。著書に『日本発「ロボットAI農業」の凄い未来』『GDP 4%の日本農業は自動車産業を超える』(いずれも講談社)など。