おいしく米を炊くにはどんな水が良い? 3種の水で炊き比べてみた
ご飯は毎日食べるのだから、せっかくなら少しでもおいしく食べたいものです。おいしいお米を食べるための情報はインターネット上で数多く見ることができますが、実際のところはどうなのでしょう。
私たちが「お米は〜するとおいしい」と思っている方法は、果たして本当においしいのでしょうか? 自身を省みると、どこかの誰かが言った情報をうのみにしてきたような気がします。
今回は、おいしいお米を食べる方法として定番の「おいしい水で炊く」を検証するため、誰でも自宅でできる簡単な炊飯実験を行いました。
おいしいご飯を食べるために、比較的手軽に始められる方法が、「水」のこだわりです。インターネットで検索すると数々の“説”を見ることができます。
お米をおいしく炊く水にまつわる“説”いろいろ
・硬度が低い水が良い説
・残留塩素が含まれていない水が良い説
・冷たい水が良い説
・炭でろ過した水が良い説
・使う米の産地の水が良い説
以上のような水自体のこだわりの他にも、お米を炊く水の中に炭や調味料等を一緒に入れる方法や、お米のとぎ方や浸水時間に関する情報もあります。
炊飯時にお米と一緒に入れると良いと言われているもの
備長炭、蜂蜜、食用油、塩、にがり、昆布、みりん、料理酒、氷
とぎ方や浸水時間にまつわる“説”
・とにかく手早くする。特に1回目の水はすぐに捨てる
・ギュッギュッと力を入れるより軽くシャカシャカとした方が良い
・とぎすぎはNG。3回程度に
・浸水は1時間かけて行う
お米の品種や精白度合いまで考慮すると、さらにさまざまな説が見つかります。
おいしいお米を炊くための情報は本当にたくさんあります。日本人のお米愛ゆえだと思いますが、そのすべてをこの記事の中で試すことはできません。そこで、ポイントとなりそうなキーワードを3つ抜き出してみました。
「水の硬度」とは、水の中に含まれるミネラル(カルシウム、マグネシウムなど)の総量を表す数値で、単位はmg/Lです。硬度が低いならミネラルが少ない水、硬度が高いならミネラルが多い水、ということです。
世界保健機関(WHO)の基準では、硬度60までが「軟水」、120までが「中程度の硬水」、180までが「硬水」、180以上が「非常な硬水」とされています。日本では硬度100までが「おいしい水」の指標とされ、水道水では硬度10から100が水質管理目標値となっています。
ミネラルウォーターの場合、日本の大手飲料メーカーの商品には軟水のものをよく見かけますが、国内の採水地でも場所によっては硬水もあるようです。輸入ミネラルウォーターの場合は、軟水から硬水まで幅広く出回っています。
日本の水道水は「次亜塩素酸ナトリウム」という薬品で消毒されており、これに由来する成分が一般的に「塩素」と呼ばれています。消毒後の水道水に含まれている塩素は「残留塩素」と呼ばれ、水道法により0.1mg/L以上残留していなければいけないと定められています。
残留塩素濃度の上限は1mg/Lが目標値とされていますが、0.4mg/L前後から「塩素臭」や「カルキ臭」と呼ばれる鼻につく匂いを感じる人が増えるそうです。東京都の場合、残留塩素濃度は自動水質計器により毎日検査され、ホームページで公開されています。数値は計測地点ごとに変わりますが、多くが0.4mg/L以下となっています。
塩素臭が気になる場合は煮沸することで取り除くことができますが、消毒効果もなくなってしまうため、煮沸した水は早めに使いましょう。
水自体ではなく、とぎ方や炊き方に関連するキーワードが「ぬか臭さ」です。白米なのに、炊きたてのご飯からぬかのような匂いがしたり、時間が経ってぬか臭く感じるようになったりという経験は、誰にでも一度や二度はあるのではないでしょうか。炊飯時に炭を入れたり、とぎ方にこだわったりする説は、ぬか臭さを残さないことが目的のようです。
それではいよいよ炊き比べ実験を始めます。「硬度」「残留塩素」「ぬか臭さ」の3つの視点で検証するために、3種の水を用意しました。
水(1):水道水
筆者自宅(東京都内)の蛇口から出てきた水。東京都水道局の情報によると、硬度は70〜80台とみられ、WHO基準では「中程度の硬水」となります。pHは7.3〜7.4の中性、残留塩素は0.3〜0.4mg/L程度とみられます。
水(2):硬度70ミネラルウォーター「おいしい水」
近隣のスーパーで購入。自宅の水道水になるべく近い水質のものを探し、硬度70、pH7.4の商品を選びました。
水(3):超軟水ミネラルウォーター「温泉水99」
近隣のドラッグストアで購入。硬度1.7と、とても低い「超軟水」で、pH9.5〜9.9のアルカリ性です。
ラベルには「お米の芯まで浸透し、ふっくらと炊きあがります」とあり、期待が高まります。
米:いつものお米を精白したてで使用。産地は新潟県内で、農薬化学肥料を使用せずに作られたものです。
炊飯器:基本機能だけのシンプルなマイコン式炊飯器(2006年製)。少量での炊飯に適した3合炊きです。
どんなに良い水を使っても、とぎ方が悪ければ努力もお金も無駄になってしまいます。まずはすべての基本となる「とぎ方」を確認しましょう。
とぎ方にまつわる“説”で、最も気になるのが「1回目のとぎ方」です。多く見かけるのは「1回目に時間をかけると米が汚れた水を吸ってしまいおいしくなくなるので、ササッとすること」という説。実際に炊き比べて、確かめてみましょう。
パターンAは「1回目をしっかりとぐ」です。
米を100g量り、ざるに入れ、米が浸るくらいの水道水を入れて、素手で60回ほどジャカジャカととぎます。
とぎ汁は1回目で真っ白になりました。
2〜3回目は、水をたっぷり入れて10回ほどシャカシャカとして水を捨てる方法で統一します。3回目を終えると、とぎ汁はすっかり透明に。
3回といだお米をざるに上げて、しっかりと水を切ってからすぐに炊飯釜にいれ、米と水の総量が230g(米:水=1:1.3)になるように水道水を加え、15分間浸水します。
15分経ったら、炊飯器の早炊きモードで炊飯。炊き上がったらご飯を底から返すようにして混ぜ、再び蓋を閉め1分蒸らし、タッパーに移し、冷めたら蓋をして常温で保管しておきます。
炊き上がりの蒸気に、ややモワッとした匂いがありましたが、先入観による気のせいかもしれません。炊きたてを試食すると、すこしぬか臭さがあるかな……と感じましたが、これもやはり気のせいかもしれません。少なくとも「いつものご飯」の枠内には収まっていると思いました。
続いてパターンB「1回目をササッとすすぐ」です。
Aと同じく100gの米が浸るくらいに水道水を入れ、水が全体になじむ程度にサクサクッと米を動かしてからすぐに水から上げます。
1回目のとぎ汁は、パターンAよりは透明度が高いです。後はパターンAと同様に2回とぎ、15分浸水して、早炊きモードで炊飯しました。
炊き上がりは先ほどのようなモワッとした匂いはせず、おいしそうな香りに感じましたが、先入観による気のせいかもしれません。試食すると、おいしく炊けているみたいです!
AもBも、タッパーに詰めて常温のままひと晩おき、完全に冷めてから観察・試食しました。
粒の大きさ、つや、色について観察しましたが、両者に明確な差はみられません。
まずは一口ずつ食べてみると、AとBでは味が違うようです。Aの一口めは匂いの印象が残りましたが、Bの一口めは「甘い!」でした。
交互に食べ続ければ違いがはっきりするかと思いましたが、食べ続けるほどわからなくなる気もしてきます。
3〜4口食べて評価はいったん終了。「AよりBのほうがわずかにぬか臭さが少なく、甘くおいしい」と評価しておきます。
次は、残留塩素の有無による味の違いを確かめてみましょう。使用するのはサンプルB:自宅の水道水(写真左)と、サンプルC:自宅の水道水に近い硬度70のミネラルウォーター「おいしい水」(写真右)です。
とぎ方は、ぬか臭さの影響が少ないとみられる「1回目をササッとすすぐ」方式を採用し、実験1と同様に炊飯し、ひと晩冷ましました。
水道水のサンプルBは実験1のパターンBを流用し、軟水ミネラルウォーターはサンプルCとします。
残留塩素ありのBと、残留塩素なしのCで、粒の大きさ、つや、色に明確な差はみられません。
B(残留塩素あり)は、実験1で「甘くておいしい」と評価済みです。塩素がお米の味に影響するならば、C(残留塩素なし)はBを上回るおいしさであると仮定できます。いざ、Cを試食……!
うん……甘くておいしく炊けたご飯です。しかし、Bとの差はあるのかと問われると……?
交互に食べ続ければ味わいの差がわかるかもと思いましたが、タッパーの半分ほど食べてもわかりませんでした。これ以上食べると後の実験に響くので「わかるほどの差は感じなかった」と評価して終了しました。
続いて、硬度による味への影響を確かめる実験です。使用するのは、サンプルC:硬度70のミネラルウォーター「おいしい水」(写真左)と、サンプルD:硬度1.7の超軟水ミネラルウォーター「温泉水99」(写真右)です。
とぎ方や炊き方は実験1のパターンBと同じですが、ここでおもしろいことが起きました。
1回目のとぎ汁の色をご覧ください。
Dのとぎ汁の方が、すこし黄色い色をしています。どうやら、アルカリ性の水はお米の成分と反応してとぎ汁が黄色くなるのだそうです。図らずもおもしろい現象を目にしました。
左は実験2で既にタッパーの半分も試食してしまったサンプルC(硬度70のミネラルウォーターで炊飯)、右はサンプルD(硬度1.7の超軟水ミネラルウォーターで炊飯)です。
粒の大きさ、つや、色に明確な差はみられません。
いよいよ最後の検証。「硬度が低い水の方がおいしく炊ける」説を確かめます。Dの炊飯に使用した超軟水は、ラベルでも炊飯用に使うことをアピールしていましたし、とぎ汁が黄色くなるおもしろ現象まで見せてくれました。
きっと、
味わいも、
すごく、
おいしい、
はず
・
・
・
!
3口ほど食べた頃、筆者はこの企画を立てた1週間前の自分に対して呪いの言葉をつぶやきながら、匙を投げ……もとい、箸を置きました。
どちらも「すごくおいしいご飯」に炊き上がりましたが、「すごくおいしいご飯C」と「すごくおいしいご飯D」の差がわかるほど、筆者の味覚は鋭敏ではありませんでした。水屋さん、本当に申し訳ありませんでした。
結果が「よくわからない」のままで実験を終わらせる訳にはいきません。「雰囲気で甲乙つけてしまえよ……ウヒヒ」と悪魔がささやきますが、それでは実験をした意味がありません。
そもそも、「おいしさ」は味覚や嗅覚だけで感じるものではありません。食材の背景を知ったり、時間をかけて調理したりすることで生まれる愛着なども調味料のひとつ。つまり「おいしさ」は舌だけでなく脳でも感じるものなのです。それがおいしさの閾値を超えた熾烈なる争いであれば、“愛着によるおいしさ増強効果”を無視することはできません。
ならば、と、追実験としてブラインドテストをすることにしました。自分自身の味覚への挑戦です。
試飲カップの裏にA〜Dの印をつけて、それぞれのサンプルを一口分ずつ入れ、シャッフルし、正体がわからない状態で味わいます。
すべての答えを紙に書いたら、カップを裏返して答え合わせをします。結果は……
筆者の回答(赤字):左から、A→D→C→B
正解(黒字):左から、A→B→D→C
結果は、4個中3個不正解。筆者の味覚への挑戦は敗北に終わりました。
しかし、収穫もありました。実験1で、1回目にしっかりといだAだけは正解でした。一口でわかるくらいの味の差があったということです。
「炊飯に使うのが水道水以下の硬度の水であれば、硬度や残留塩素のご飯の味に対する影響はほとんど考えなくても良い」などと言ったら、異議が多く出るかもしれません。しかし、今回はそう結論づけるのが妥当な結果となりました。
もしかしたら、味覚の訓練を積んだ人が評価したり、機械で計測したりすれば差がわかるのかもしれません。しかし、普通の味覚をもつ一般人にとっては微々たる差。水にこだわるよりとぎ方にこだわるほうが、合理的で賢いと言えるのかもしれません。
今回は意外な結果を得られました。お米好きな普通の味覚の持ち主による一事例として、いつかどこかの誰かの参考になればうれしいです。
私たちが「お米は〜するとおいしい」と思っている方法は、果たして本当においしいのでしょうか? 自身を省みると、どこかの誰かが言った情報をうのみにしてきたような気がします。
今回は、おいしいお米を食べる方法として定番の「おいしい水で炊く」を検証するため、誰でも自宅でできる簡単な炊飯実験を行いました。
お米をおいしく炊く水のこだわりに関するネット上の“説”いろいろ
おいしいご飯を食べるために、比較的手軽に始められる方法が、「水」のこだわりです。インターネットで検索すると数々の“説”を見ることができます。
お米をおいしく炊く水にまつわる“説”いろいろ
・硬度が低い水が良い説
・残留塩素が含まれていない水が良い説
・冷たい水が良い説
・炭でろ過した水が良い説
・使う米の産地の水が良い説
以上のような水自体のこだわりの他にも、お米を炊く水の中に炭や調味料等を一緒に入れる方法や、お米のとぎ方や浸水時間に関する情報もあります。
炊飯時にお米と一緒に入れると良いと言われているもの
備長炭、蜂蜜、食用油、塩、にがり、昆布、みりん、料理酒、氷
とぎ方や浸水時間にまつわる“説”
・とにかく手早くする。特に1回目の水はすぐに捨てる
・ギュッギュッと力を入れるより軽くシャカシャカとした方が良い
・とぎすぎはNG。3回程度に
・浸水は1時間かけて行う
お米の品種や精白度合いまで考慮すると、さらにさまざまな説が見つかります。
お米をおいしく炊く水を3つのポイントから検証する
おいしいお米を炊くための情報は本当にたくさんあります。日本人のお米愛ゆえだと思いますが、そのすべてをこの記事の中で試すことはできません。そこで、ポイントとなりそうなキーワードを3つ抜き出してみました。
キーワード1:硬度
「水の硬度」とは、水の中に含まれるミネラル(カルシウム、マグネシウムなど)の総量を表す数値で、単位はmg/Lです。硬度が低いならミネラルが少ない水、硬度が高いならミネラルが多い水、ということです。
世界保健機関(WHO)の基準では、硬度60までが「軟水」、120までが「中程度の硬水」、180までが「硬水」、180以上が「非常な硬水」とされています。日本では硬度100までが「おいしい水」の指標とされ、水道水では硬度10から100が水質管理目標値となっています。
ミネラルウォーターの場合、日本の大手飲料メーカーの商品には軟水のものをよく見かけますが、国内の採水地でも場所によっては硬水もあるようです。輸入ミネラルウォーターの場合は、軟水から硬水まで幅広く出回っています。
キーワード2:残留塩素
日本の水道水は「次亜塩素酸ナトリウム」という薬品で消毒されており、これに由来する成分が一般的に「塩素」と呼ばれています。消毒後の水道水に含まれている塩素は「残留塩素」と呼ばれ、水道法により0.1mg/L以上残留していなければいけないと定められています。
残留塩素濃度の上限は1mg/Lが目標値とされていますが、0.4mg/L前後から「塩素臭」や「カルキ臭」と呼ばれる鼻につく匂いを感じる人が増えるそうです。東京都の場合、残留塩素濃度は自動水質計器により毎日検査され、ホームページで公開されています。数値は計測地点ごとに変わりますが、多くが0.4mg/L以下となっています。
塩素臭が気になる場合は煮沸することで取り除くことができますが、消毒効果もなくなってしまうため、煮沸した水は早めに使いましょう。
キーワード3:ぬか臭さ
水自体ではなく、とぎ方や炊き方に関連するキーワードが「ぬか臭さ」です。白米なのに、炊きたてのご飯からぬかのような匂いがしたり、時間が経ってぬか臭く感じるようになったりという経験は、誰にでも一度や二度はあるのではないでしょうか。炊飯時に炭を入れたり、とぎ方にこだわったりする説は、ぬか臭さを残さないことが目的のようです。
3種の水でお米炊き比べ3本勝負!
それではいよいよ炊き比べ実験を始めます。「硬度」「残留塩素」「ぬか臭さ」の3つの視点で検証するために、3種の水を用意しました。
実験に使用する材料・道具
水(1):水道水
筆者自宅(東京都内)の蛇口から出てきた水。東京都水道局の情報によると、硬度は70〜80台とみられ、WHO基準では「中程度の硬水」となります。pHは7.3〜7.4の中性、残留塩素は0.3〜0.4mg/L程度とみられます。
水(2):硬度70ミネラルウォーター「おいしい水」
近隣のスーパーで購入。自宅の水道水になるべく近い水質のものを探し、硬度70、pH7.4の商品を選びました。
水(3):超軟水ミネラルウォーター「温泉水99」
近隣のドラッグストアで購入。硬度1.7と、とても低い「超軟水」で、pH9.5〜9.9のアルカリ性です。
ラベルには「お米の芯まで浸透し、ふっくらと炊きあがります」とあり、期待が高まります。
米:いつものお米を精白したてで使用。産地は新潟県内で、農薬化学肥料を使用せずに作られたものです。
炊飯器:基本機能だけのシンプルなマイコン式炊飯器(2006年製)。少量での炊飯に適した3合炊きです。
実験1.とぎ方でぬか臭さは変わるのか?
どんなに良い水を使っても、とぎ方が悪ければ努力もお金も無駄になってしまいます。まずはすべての基本となる「とぎ方」を確認しましょう。
とぎ方にまつわる“説”で、最も気になるのが「1回目のとぎ方」です。多く見かけるのは「1回目に時間をかけると米が汚れた水を吸ってしまいおいしくなくなるので、ササッとすること」という説。実際に炊き比べて、確かめてみましょう。
パターンA:1回目をしっかりとぐ
パターンAは「1回目をしっかりとぐ」です。
米を100g量り、ざるに入れ、米が浸るくらいの水道水を入れて、素手で60回ほどジャカジャカととぎます。
とぎ汁は1回目で真っ白になりました。
2〜3回目は、水をたっぷり入れて10回ほどシャカシャカとして水を捨てる方法で統一します。3回目を終えると、とぎ汁はすっかり透明に。
3回といだお米をざるに上げて、しっかりと水を切ってからすぐに炊飯釜にいれ、米と水の総量が230g(米:水=1:1.3)になるように水道水を加え、15分間浸水します。
15分経ったら、炊飯器の早炊きモードで炊飯。炊き上がったらご飯を底から返すようにして混ぜ、再び蓋を閉め1分蒸らし、タッパーに移し、冷めたら蓋をして常温で保管しておきます。
炊き上がりの蒸気に、ややモワッとした匂いがありましたが、先入観による気のせいかもしれません。炊きたてを試食すると、すこしぬか臭さがあるかな……と感じましたが、これもやはり気のせいかもしれません。少なくとも「いつものご飯」の枠内には収まっていると思いました。
パターンB:1回目をササッとすすぐ
続いてパターンB「1回目をササッとすすぐ」です。
Aと同じく100gの米が浸るくらいに水道水を入れ、水が全体になじむ程度にサクサクッと米を動かしてからすぐに水から上げます。
1回目のとぎ汁は、パターンAよりは透明度が高いです。後はパターンAと同様に2回とぎ、15分浸水して、早炊きモードで炊飯しました。
炊き上がりは先ほどのようなモワッとした匂いはせず、おいしそうな香りに感じましたが、先入観による気のせいかもしれません。試食すると、おいしく炊けているみたいです!
実験1の結果
AもBも、タッパーに詰めて常温のままひと晩おき、完全に冷めてから観察・試食しました。
外見
粒の大きさ、つや、色について観察しましたが、両者に明確な差はみられません。
味わい
まずは一口ずつ食べてみると、AとBでは味が違うようです。Aの一口めは匂いの印象が残りましたが、Bの一口めは「甘い!」でした。
交互に食べ続ければ違いがはっきりするかと思いましたが、食べ続けるほどわからなくなる気もしてきます。
3〜4口食べて評価はいったん終了。「AよりBのほうがわずかにぬか臭さが少なく、甘くおいしい」と評価しておきます。
実験2.残留塩素が含まれていない水の方がおいしく炊けるのか
次は、残留塩素の有無による味の違いを確かめてみましょう。使用するのはサンプルB:自宅の水道水(写真左)と、サンプルC:自宅の水道水に近い硬度70のミネラルウォーター「おいしい水」(写真右)です。
とぎ方は、ぬか臭さの影響が少ないとみられる「1回目をササッとすすぐ」方式を採用し、実験1と同様に炊飯し、ひと晩冷ましました。
実験2の結果
水道水のサンプルBは実験1のパターンBを流用し、軟水ミネラルウォーターはサンプルCとします。
外見
残留塩素ありのBと、残留塩素なしのCで、粒の大きさ、つや、色に明確な差はみられません。
味わい
B(残留塩素あり)は、実験1で「甘くておいしい」と評価済みです。塩素がお米の味に影響するならば、C(残留塩素なし)はBを上回るおいしさであると仮定できます。いざ、Cを試食……!
うん……甘くておいしく炊けたご飯です。しかし、Bとの差はあるのかと問われると……?
交互に食べ続ければ味わいの差がわかるかもと思いましたが、タッパーの半分ほど食べてもわかりませんでした。これ以上食べると後の実験に響くので「わかるほどの差は感じなかった」と評価して終了しました。
実験3.硬度が低い水の方がおいしく炊けるのか
続いて、硬度による味への影響を確かめる実験です。使用するのは、サンプルC:硬度70のミネラルウォーター「おいしい水」(写真左)と、サンプルD:硬度1.7の超軟水ミネラルウォーター「温泉水99」(写真右)です。
とぎ方や炊き方は実験1のパターンBと同じですが、ここでおもしろいことが起きました。
1回目のとぎ汁の色をご覧ください。
Dのとぎ汁の方が、すこし黄色い色をしています。どうやら、アルカリ性の水はお米の成分と反応してとぎ汁が黄色くなるのだそうです。図らずもおもしろい現象を目にしました。
実験3の結果
左は実験2で既にタッパーの半分も試食してしまったサンプルC(硬度70のミネラルウォーターで炊飯)、右はサンプルD(硬度1.7の超軟水ミネラルウォーターで炊飯)です。
外見
粒の大きさ、つや、色に明確な差はみられません。
味わい
いよいよ最後の検証。「硬度が低い水の方がおいしく炊ける」説を確かめます。Dの炊飯に使用した超軟水は、ラベルでも炊飯用に使うことをアピールしていましたし、とぎ汁が黄色くなるおもしろ現象まで見せてくれました。
きっと、
味わいも、
すごく、
おいしい、
はず
・
・
・
!
3口ほど食べた頃、筆者はこの企画を立てた1週間前の自分に対して呪いの言葉をつぶやきながら、匙を投げ……もとい、箸を置きました。
どちらも「すごくおいしいご飯」に炊き上がりましたが、「すごくおいしいご飯C」と「すごくおいしいご飯D」の差がわかるほど、筆者の味覚は鋭敏ではありませんでした。水屋さん、本当に申し訳ありませんでした。
追実験:筆者の味覚を試してみよう
結果が「よくわからない」のままで実験を終わらせる訳にはいきません。「雰囲気で甲乙つけてしまえよ……ウヒヒ」と悪魔がささやきますが、それでは実験をした意味がありません。
そもそも、「おいしさ」は味覚や嗅覚だけで感じるものではありません。食材の背景を知ったり、時間をかけて調理したりすることで生まれる愛着なども調味料のひとつ。つまり「おいしさ」は舌だけでなく脳でも感じるものなのです。それがおいしさの閾値を超えた熾烈なる争いであれば、“愛着によるおいしさ増強効果”を無視することはできません。
ならば、と、追実験としてブラインドテストをすることにしました。自分自身の味覚への挑戦です。
試飲カップの裏にA〜Dの印をつけて、それぞれのサンプルを一口分ずつ入れ、シャッフルし、正体がわからない状態で味わいます。
すべての答えを紙に書いたら、カップを裏返して答え合わせをします。結果は……
筆者の回答(赤字):左から、A→D→C→B
正解(黒字):左から、A→B→D→C
結果は、4個中3個不正解。筆者の味覚への挑戦は敗北に終わりました。
しかし、収穫もありました。実験1で、1回目にしっかりといだAだけは正解でした。一口でわかるくらいの味の差があったということです。
結論:お米をおいしく炊くためには、水よりとぎ方にこだわろう
「炊飯に使うのが水道水以下の硬度の水であれば、硬度や残留塩素のご飯の味に対する影響はほとんど考えなくても良い」などと言ったら、異議が多く出るかもしれません。しかし、今回はそう結論づけるのが妥当な結果となりました。
もしかしたら、味覚の訓練を積んだ人が評価したり、機械で計測したりすれば差がわかるのかもしれません。しかし、普通の味覚をもつ一般人にとっては微々たる差。水にこだわるよりとぎ方にこだわるほうが、合理的で賢いと言えるのかもしれません。
今回は意外な結果を得られました。お米好きな普通の味覚の持ち主による一事例として、いつかどこかの誰かの参考になればうれしいです。
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