玄米を炊くときの塩はなぜ必要? 「自然塩」がいいって本当?

日本で唯一のトータルソルトコーディネーター、青山志穂です。

ご存知の通り、「玄米」とは精米していないお米のことを言います。白米との違いは、ぬかや胚芽がそのままになっているので、ビタミンB群やマグネシウム、抗酸化力の高いフィチン酸が摂取できるなど栄養面で優れているとされていること。また、不溶性食物繊維を含むため整腸作用も期待できるということで、健康対策も兼ねて常食している人も多いのではないでしょうか。

ただ、栄養面でさまざまなメリットのある玄米ですが、ぬかの香りや独特の風味が苦手という人、消化がしにくいのでお腹が緩くなってしまう人、そして、炊き方が白米に比べて面倒くさいという人も一定数いるようです。


玄米を炊く時に塩を入れる理由


玄米の独特の風味がちょっと苦手という方におすすめしたいのが、炊飯の際にを少しだけ入れること。玄米1カップに対して、塩はひとつまみくらい(約0.5g)が目安です。

最近では塩を入れない炊き方も実践されていますが、昔から玄米を炊く時には塩をひとつまみ入れるのが通例になっていました。

では、なぜ塩を入れるのでしょうか? それはずばり、食べやすくなるから。

玄米にはカリウムやマグネシウムが含まれているため、ほんのりとした酸味や苦味を感じることがあります。塩を入れることでしょっぱさが加わり、抑制効果が起きて、この酸味や苦味が打ち消されるので、食べやすくなるのです。また、しょっぱさとの対比効果でお米の甘味が引き立つので、より食べやすく感じるのでしょう。

もう1つの理由としては、浸透圧の関係で浸水が促進されることによって、独特の食感を生み出している皮の部分が少し柔らかくなるということ。「食感がちょっと……」という方にもおすすめです。

さらに、マグネシウムを含んだ塩を使用した場合は、お米の表面のペクチンと結合してご飯粒を包み込み、水分とうまみをしっかり保ってくれるという働きもあります。

なお、香りについては、保温状態を長く続けていると発酵したような香りや玄米独特の香りが強くなるので、苦手な方は保温状態にはせずに、炊き上がって蒸らしたらすぐにスイッチを切るようにすると良いでしょう。

玄米には「自然塩」がよいのか?



よく玄米には「自然塩」がよいと聞きますが、実は一概にそうとは言い切れないのが実情です。

そもそも「自然塩」「天然塩」という呼称は、1971年に公布された塩業整備事業の施行によってナトリウムだけしか含まない「食塩」だけが製造・販売されるようになった際に生まれた言葉で、「食塩」を「化学塩」とし、それ以外の昔ながらの製法で作られた塩を「自然塩」「天然塩」と呼ぶようになりました。

しかし、ナトリウムだけしか含まない「食塩」ももちろん日本の海水からできたものですし、なにか化学薬品を合成して作ったものではありません。そして、「自然塩」「天然塩」と呼ばれる塩の中にも、ナトリウム純度がほぼ100%、つまり「食塩」とほぼ同じ成分の塩はそれなりに存在しています。

「自然塩」「天然塩」というのは、あくまでも製法が「昔ながらである」「大規模工場ではなく職人が手仕事で作っている」ということに対して言われているだけなので、その言葉だけに惑わされないようにしましょう。

とはいえ、地球上の元素がすべて溶け込んでいる海からできた塩は、もともとさまざまなミネラルを含んでいるものです。それぞれのミネラルには味があるため、どのようなミネラルバランスの塩かによって、塩の味わいは大きく左右されます。ナトリウムの構成比が高ければしょっぱさが強く、低ければ塩角のないまろやかな味わいの塩になります。

ナトリウム:しょっぱさ
マグネシウム:おいしい苦味、コク、余韻の長さ
カリウム:涼しい酸味
カルシウム:甘味

しょっぱいだけのナトリウムのみの塩を使うと、対比効果で甘味が引き立ちます。いろんなミネラルを含んだ塩を使うと、うまみが引き立ったり、味が重なることによりさらに味わい深く仕上がったりと変化が楽しめます。その時の気分や好みに合わせて使い分けてみてはいかがでしょうか。

酵素玄米に使う塩の場合は?



玄米の中でも、炊き上がってから3~4日保温熟成させる酵素玄米の場合は、発酵にミネラルが関与するため、使う塩の種類によって出来上がりにわかりやすい差が出ます。

塩に含まれるミネラルの中でも、特にマグネシウムが発酵に優位に関与すると言われています。実際に、酒の発酵の促進剤として硫酸マグネシウムが使われていますし、食パンを使った実験でも、マグネシウムを加えた場合は、キメが細かく焼き上がりの高さにも差が出ることがわかっています。

塩を生産する際に残る「苦汁(にがり)」は硫酸マグネシウムと塩化マグネシウム、塩化カリウム、少量の塩化ナトリウムを主体としたミネラル濃縮液なので、酵素玄米を炊く際には苦汁を多く含む海水塩か、もしくは苦汁そのものを活用するのもおすすめです。

ぜひ、いろんなお塩を試しながら、玄米のおいしい炊き方を試してみて下さいね。

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青山志穂
(社)日本ソルトコーディネーター協会代表理事。食品メーカーの開発等を経て塩の重要性に気がつき、塩の道へ。講座やメディア出演等を通じて、中立の立場であらゆる塩の最適な使い方を提案している。著書に「免疫力を高める塩レシピ」「日本と世界の塩の図鑑」(あさ出版)など。


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  1. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  2. さとうまちこ
    さとうまちこ
    宮城県の南の方で小さな兼業農家をしています。りんご農家からお米と野菜を作る農家へ嫁いで30余年。これまで「お手伝い」気分での農業を義母の病気を機に有機農業に挑戦すべく一念発起!調理職に長く携わってきた経験と知識、薬膳アドバイザー・食育インストラクターの資格を活かして安心安全な食材を家族へ、そして消費者様に届けられるよう日々奮闘中です。
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    北島芙有子
    トマトが大好きなトマト農家。大学時代の農業アルバイトをきっかけに、非農家から新規就農しました。ハウス栽培の夏秋トマトをメインに、季節の野菜を栽培しています。最近はWeb関連の仕事も始め、半農半Xの生活。
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    川島礼二郎
    1973年神奈川県生まれ。筑波大学第二学群農林学類卒業。フリーラインスの編集ライターとして、テクノロジーをキーワードに、農業雑誌・自動車雑誌などで執筆・編集活動中。
  5. 柏木智帆
    柏木智帆
    米・食味鑑定士/お米ライター/ごはんソムリエ神奈川新聞の記者を経て、福島県の米農家と結婚。年間400種以上の米を試食しながら「お米の消費アップ」をライフワークに、執筆やイベント、講演活動など、お米の魅力を伝える活動を行っている。また、4歳の娘の食事やお弁当づくりを通して、食育にも目を向けている。プロフィール写真 ©杉山晃造
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