玄米をおいしく長持ちさせるための保管方法は?

管理栄養士の大槻万須美です。

「お米は生鮮食品」という言葉も広く知られるようになりましたが、玄米は白米よりも貯蔵性が高く、しっかりと保管しなくてもいいというイメージはありませんか? 実際はどうなのでしょうか。玄米の保管方法についてお伝えします。


「玄米はしっかりと保管しなくてもいい」は間違い?


玄米は、もみ殻を取り除いたままの、精米をしていない状態のお米です。精米をしていないため、ぬか層を削り取らず、基本的には米ぬかや胚芽を残した状態になっています。

玄米の表面には、「ロウ層」と呼ばれる、水分が浸透しにくい層があり、白米と比べて空気に触れにくいことから、酸化のスピードが遅く、貯蔵性が高いです。

それなら白米と違って玄米だからそこまでしっかり保管しなくてもいいのでは? と思いませんか。実は、以下の理由から玄米も適切な保管が大切なんですよ。

カビ


玄米に残されている胚芽はカビなどの細菌に感染しやすいといわれています。玄米は胚芽や胚乳を保護しているもみを取り除いているため、湿度がある場所での保管は大敵です。

呼吸・成長


玄米は胚芽や胚乳があるため、常温状態ではでんぷんを消費しながら呼吸しており、環境が整えば発芽して成長するものもあります。

発芽玄米は、玄米をあえて発芽させ、発芽の過程で発生する成分を利用しておいしさや食べやすさをアップさせているお米ですが、適切な環境ではない発芽は、おいしさを妨げたり栄養価を落としたりすることにもつながります。

酸化


玄米は白米にする際に削り取られる米ぬかも残している状態です。適切に保管していない場合、米ぬかに含まれている脂質が酸化し、品質の劣化につながることもあります。

玄米の正しい保管・保存方法



保管のポイント

ご家庭で玄米を保管するときのポイントは以下の3つです。

  • 湿気や酸化を避けるためにジップつきの保存袋に入れて空気を抜く
  • 野菜室などの低温環境へ。また、出し入れを少なくして温度変化をなくす
  • 長く保管する場合は、できるだけ脱酸素剤などを使ったり、袋を密閉したりする

玄米は、低温・低湿の環境では、米の呼吸作用や脂質の酸化を抑え、新米の状態を長期間維持できるといいます。玄米専用の保冷庫も、機種により多少の差はあるものの、温度は12~14℃、湿度は低湿(55~75%)で保管できるように設定されています。

炊いた玄米の保存方法


炊飯後保温時間が長くなればなるほどごはんの劣化はすすみ、おいしさも半減していきます。

炊き上がった玄米ごはんは1食分ごとに小分けにして冷凍保存しておくのがおすすめです。

炊き立てのごはんが熱いうちに一食分ずつ蒸気を逃がさないようにラップに包んで、平らにし、粗熱をとります。さらにジップつきの保存袋に入れて冷凍庫へ。アルミのトレーにのせるなどして、できるだけ急速で冷凍しましょう。

劣化のサインに注意


玄米は適切に保管しないと、虫がついたりカビが生えてしまったりすることもありますし、お米自体の品質が低下してしまうことも。もし、虫に喰われたり卵を産みつけられたり、虫が吐く糸が張ったりした形跡があったりした場合、アレルギーの心配のあるときには、お米は処分したほうがよいでしょう。

また、お米の表面に黒いものや青っぽいものが付着していたり、洗米のときに水が黒っぽく濁ったりしていれば、カビが生えていると考えられるため、食べるのは控えましょう。

その他、しっかりと洗って吸水させていてもぬかのにおいがいつもよりも強いときには、酸化や劣化が進んでいると考えられます。

流通においても大事な玄米の保管


お米は一年のうちで収穫できる時期が決まっているため、秋に収穫したお米は倉庫に保管され、必要な時に必要な量が出荷されます。

収穫したばかりのもみは約25%の水分を含んでおり、乾燥機などを用いて、水分が約15%になるまで約40℃でゆっくりと低温で乾燥されます。もみのままの場合は、低温できちんと保管すれば10年間はもつといわれているため、もみの状態で出荷前まで保管する業者もあります。

とはいえ、もみのままの保管は玄米よりも場所も必要とするなどの理由から、もみ殻を取り除いて玄米の状態にしてから袋詰めされて保管されることも多くなっています。

玄米の保管施設の倉庫内は、カビや虫などの発生や米の品質低下を防ぐため、温度や湿度が管理されており、庫内は約15℃以下に保たれています。

適切に保管することで食味も新米と殆ど変わりなく品質の低下も遅らせることができることから、流通過程においても、適正な温度管理でお米を保管することは非常に重要視されています。

玄米は白米よりも長く貯蔵ができますが、劣化のリスクが高いこともあります。適切に保管して、長くおいしくいただきたいですね。

参照:お米はどのくらい保存できるのか教えてください。:農林水産省<認定5ツ星 お米マイスターが解説!> お米には賞味期限がない?古いお米をおいしく食べる方法 - Tiger-Corporationお米の保存方法と玄米保冷庫の使用方法に関するQ&A|中島機械 ㈱中島機械|農業機械、玄米保冷庫、防草シート固定材、ヒメイワダレ草、農業資材、植物活性剤の販売冷蔵庫の各室の設定温度を知りたいです。:日立の家電品丸山清明(監修)『ゼロから理解するコメの基本』(誠文堂新光社)『乾燥・モミすり・精米のコツ』(農山漁村文化協会)
大槻万須美
管理栄養士・フードスタイリスト。楽しく食べて健康に。食の大切さを伝えるため、離乳食講座などの料理教室、バレエダンサーやアスリートのパーソナル栄養サポート、レシピ・コラムの提供など幅広く活動。子どもの頃の毎年の米作り経験から、身近な食体験の重要性についても実感し、おとなと子どもの食育サポートにも力を注いでいる。

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  1. 田牧一郎
    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
  2. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  3. 石坂晃
    石坂晃
    1970年生まれ。千葉大学園芸学部卒業後、福岡県の農業職公務員として野菜に関する普及指導活動や果樹に関する品種開発に従事する一方、韓国語を独学で習得(韓国語能力試験6級)。退職後、2024年3月に玄海農財通商合同会社を設立し代表に就任、日本進出を志向する韓国企業・団体のコンサルティングや韓国農業資材の輸入販売を行っている。会社HP:https://genkai-nozai.com/home/個人のブログ:https://sinkankokunogyo.blog/
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    川島礼二郎
    1973年神奈川県生まれ。筑波大学第二学群農林学類卒業。フリーラインスの編集ライターとして、テクノロジーをキーワードに、農業雑誌・自動車雑誌などで執筆・編集活動中。
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    堀口泰子
    栄養士、食アスリートシニアインストラクター、健康・食育シニアマスター。フィットネスクラブ専属栄養士を経て独立。アスリートの食事指導や栄養サポートの他、離乳食から介護予防まで食を通じて様々な食育活動を行う。料理家としても活動し、レシピ提案、商品開発も担う。食事は楽しく、気負わず継続できる食生活を伝えることを信条とする。スポーツの現場ではジュニアの育成、競技に向き合うための心と体の成長に注力している。HP:https://eiyoushiyakko.jimdofree.com/
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