楽天農業がオーガニック冷凍野菜で目指す、国産冷凍野菜の差別化と需要拡大のアイデア

有機野菜の生産・加工・販売を手がける楽天農業(愛媛県大洲市、旧・テレファーム)は2月、有機野菜の冷凍野菜工場を大洲市にオープンした。

国内で流通する冷凍野菜は、9割以上が輸入品であり、冷凍野菜の輸入量は過去最高を更新し続けている。そんな中、有機でかつ原料からの一貫生産という付加価値のある製品で、市場のニーズをつかもうとしている。

新工場のテープカット


国産冷凍野菜のネックは原料の安定確保

新工場で生産するのは、有機JASのブロッコリーとカリフラワーのカット野菜と、ご飯代わりに食べるブロッコリーライスとカリフラワーライスで、今後、種類を増やしていく。

ブロッコリーライスとカリフラワーライスは、低糖質でダイエットに効果があると人気が出ている。ブロッコリーとカリフラワーのオーガニックの国産冷凍野菜製造は、おそらく国内初だという。3月に楽天が販売元となって発売する。

冷凍のカット野菜に加え、カリフラワーライス、ブロッコリーライスもラインナップ

国内の冷凍野菜市場に目を向けると、需要は年々伸びているけれども、国産の割合が変わらず、伸びた分だけ輸入が増えている状況だ。冷凍野菜に国産の原料が少ない理由として、価格が輸入品に比べて割高であることと、生産者が減少傾向にあり安定的な確保に課題があることが挙げられる。生産が不安定なことを理由に、自ら農業参入した冷凍野菜の製造業者すらいる。

楽天農業の場合、生産を自社で担うため、安定した原料確保が可能になるはずであり、輸入品と価格競争をする必要もない。自社で生産した有機野菜を冷凍野菜にするため、トレーサビリティーが確かで付加価値のある製品になる。

製造量は明らかにしていないが、年内に稼働当初の加工量よりも、3倍以上に増やす予定としている。


冷凍食品業界の差別化の動きに対応

遠藤忍社長は「冷凍食品について、輸入で安いというところから、差別化を図ろうという動きが冷凍食品業界で起きている。私たちはその動きにいち早く対応する。全国の小売店や生協、こだわった飲食店などを販路のターゲットに考えている」と話す。

楽天農業は大洲市を拠点に有機野菜を生産・販売しており、カット野菜の製造も2018年に始めた。愛媛という消費地から離れた立地で勝負するうえでも、鮮度を保持できる冷凍野菜の製造はずっと望んできたことだった。

「将来的には、海外市場でも高い品質をアピールできる商品にしていきたい」(遠藤社長)という。現時点では、新工場で生産する製品は国内向けであり、輸出の計画があるわけではない。

遠藤忍社長(中央)と楽天の安藤公二常務(右)、新工場の城本嘉一工場長(左)

「この工場は、国内需要への対応だけでいっぱいになってくると思う。将来的にオーガニック冷凍食品への需要が出てきたときは、もっと増やしていきたい。そういったときに、輸出という可能性も出てくるかと思う」

楽天の安藤公二常務はこう語る。


消費者向けからBtoBまで網羅

楽天農業は、有機農家と消費者をつなぐ「Rakuten Ragri」で存在を知られるようになった。もともと消費者向けの事業を展開してきたわけだが、カット野菜の製造開始から、BtoBの需要も取り込んできている。

新工場の野菜を洗浄する機械(メディア向け内覧にて)

遠藤社長は、オープニングセレモニーのあいさつで「日本農業と地域経済は深刻な課題を抱えている。農業を基点として、地域に明るい未来を指し示すということをミッションに日々頑張っている」と意気込みを語った。

新工場は、2018年の西日本豪雨で浸水し廃業したシロモト食品(大洲市)の食品製造工場を再生した。この豪雨では、楽天農業のカット野菜製造施設も被災した。冷凍工場では30人が働き、その中にはシロモト食品の従業員が少なからず含まれる。

国産有機野菜の冷凍食品という今はまだ小さい市場が、楽天農業と楽天のタイアップで今後どう成長していくのか――。目が離せない。


楽天農業株式会社
https://farm.agriculture.rakuten.co.jp/


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WRITER LIST

  1. 堀口泰子
    栄養士、食アスリートシニアインストラクター、健康・食育シニアマスター。フィットネスクラブ専属栄養士を経て独立。アスリートの食事指導や栄養サポートの他、離乳食から介護予防まで食を通じて様々な食育活動を行う。料理家としても活動し、レシピ提案、商品開発も担う。食事は楽しく、気負わず継続できる食生活を伝えることを信条とする。スポーツの現場ではジュニアの育成、競技に向き合うための心と体の成長に注力している。HP:https://eiyoushiyakko.jimdofree.com/
  2. 大槻万須美
    管理栄養士・フードスタイリスト。楽しく食べて健康に。食の大切さを伝えるため、料理教室、バレエダンサーやアスリートのパーソナル栄養サポート、レシピ・コラムの提供など幅広く活動。子どもの頃の毎年の米作り経験から、身近な食体験の重要性についても実感し、おとなと子どもの食育サポートにも力を注いでいる。
  3. 田牧一郎
    たまきいちろう。68歳。日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
  4. 田中克樹
    たなかかつき。32年間の農業出版社勤務を経て、2020年末、故郷の八ヶ岳南麓に帰郷。仲間と共に農業・福祉系NPOを立ち上げ、遊休農地・耕作放棄地を再生し、心身の癒しや健康づくりにつながる有機無農薬の体験型農園づくりに取り組む。NPOでは田んぼ除草にホバークラフトを活用したスマート技術を開発中。農と風土(フード)を愛する人たち向けのブックカフェ・居酒屋を開くのが夢。
  5. 山田正美
    大阪工業大学大学院修了。福井県職員として、農業試験場研究員、専門技術員、農業技術経営課長、農林水産部技幹を経て退職。現在、日本生産者GAP協会常務理事、日本農業サポート研究所主席コンサルタント。
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