梅雨明け直後は特に注意! 農作業の熱中症対策と作業計画の見直し方

気象庁と地方気象台は2026年7月20日、関東甲信地方と東海地方の梅雨明けを発表しました。沖縄が6月29日と最も早く、九州地方北部・中国地方・近畿地方では7月8日頃、四国地方では7月12日頃、九州地方南部は7月13日頃で、例年通りなら北陸地方・東北地方でも7月後半には梅雨明けの見込みで、いよいよ本格的な夏に突入します。

梅雨明け後は、収穫、草刈り、防除、出荷準備などの作業が重なりやすい時期です。気温が一気に上がるだけでなく、湿度の高い日も多く、体が暑さに慣れないまま作業量が増えることがあります。

ですが、熱中症対策は「気をつける」だけでは続きにくいものです。作業時間や休憩のタイミング、水分・塩分補給、装備、連絡体制をあらかじめ決めておくことで、夏本番の作業を少しでも安全に進めやすくなります。

この記事では、特に梅雨明け直後の気候と体の変化、この時期に合わせて見直したい農作業の計画、そして熱中症対策についてご紹介します。



梅雨明け直後の体は「暑さに慣れていない」


梅雨明け直後に注意したいのは、気温の高さだけではありません。梅雨の間に涼しい日が続くと、体が暑さに慣れていない状態で、急に高温多湿の環境に入ることになります。

日本気象協会が推進する「熱中症ゼロへ」プロジェクトでは、梅雨明け後は晴れて気温が高い日が続くことが多く、梅雨の間に体が暑さに慣れること(暑熱順化)ができていないことで熱中症による救急搬送者数が急増すると紹介しています。そのため、梅雨明け前から、無理のない範囲で体を暑さに慣らしておくことが大切です。

特に、高齢の作業者、睡眠不足の人、体調がすぐれない人、久しぶりに屋外作業をする人は注意が必要です。短期アルバイトや家族の手伝いを受け入れる場合も、「慣れている人の感覚」を前提にせず、休憩場所や水分補給のタイミングを先に共有しておくと安心です。


作業時間をずらし、暑い時間帯の負担を減らす


夏場で暑いからといって、すべての農作業を取りやめて暑さを避けるといったことは現実的には難しい面があります。だからこそ、作業の順番や時間帯を見直し、暑い時間に重い作業が集中しないようにすることが大切です。

たとえば、草刈り、防除、収穫、運搬など体への負担が大きい作業は、早朝や夕方に寄せる。日中は、選別、調製、出荷準備、機械や資材の点検など、屋内や日陰でできる作業に振り替える。こうした小さな組み替えでも、体にかかる負担は変わります。

ただし、早朝や夕方でも湿度が高く、風が弱い日は熱がこもりやすくなります。環境省の「熱中症予防情報サイト」では、熱中症を引き起こす条件として、気温の高さ、湿度の高さ、風の弱さなどの「環境」に加え、体調や行動も関係するとしています。

作業時間を決めるときは、天気予報だけでなく、当日の「暑さ指数」や現場の体感も合わせて見ることが欠かせません。



暑さ指数(WBGT)を作業判断に取り入れる


熱中症対策では、気温だけで判断しないことが重要です。参考にしたいのが、湿度、日射・輻射など周辺の熱環境、気温を取り入れた指標「暑さ指数(WBGT)」です。

出典:環境省熱中症予防情報サイト
同じ気温でも、湿度が高い日、風がない日、照り返しが強い場所では、体に熱がこもりやすくなります。水田、露地畑、果樹園、ハウス周辺、アスファルトに近い作業場など、場所によっても暑さの感じ方は変わります。

環境省のサイトでは、全国の暑さ指数の実況値や予測値を確認できます。ただし、表示される値は地点や立地条件によって実際の現場と異なる場合があるため、圃場や作業場の状況もあわせて見る必要があります。

暑さ指数が高い日は、単独作業を避ける、重い作業を短く区切る、休憩間隔を短くする、予定していた作業を翌日以降に回すなど、作業計画を調整する判断材料にできます。


水分・塩分補給と休憩を作業計画に組み込む


水分補給は、のどが渇いてからでは遅れることがあります。作業前に飲む、作業中も時間を決めて飲む、休憩時に塩分も補うなど、補給そのものを作業計画に入れておきましょう。

休憩場所として、日陰、風通しのいい場所、座れる場所、飲み物を置ける場所などを確認しておきます。圃場が離れている場合は、軽トラックや作業小屋、倉庫など、どこで休めるかを事前に決めておくと、無理をしにくくなります。

経口補水液や塩分補給食品は便利な場合がありますが、持病や服薬状況によって注意が必要な人もいます。高血圧、腎臓病、心臓病などがある場合は、一般的な目安だけで判断せず、必要に応じて医師や薬剤師に確認してください。


遮熱・冷却アイテムを作業内容に合わせて選ぶ


熱中症対策の装備には、ファン付きウェア、冷却ベスト、日よけ付き帽子、首元を冷やすアイテム、通気性のよい作業着などがあります。これらはどれか一つを使えば十分というより、作業内容に合わせて組み合わせると良いでしょう。

例えば、露地での草刈りや収穫では、直射日光を避ける帽子や首元の保護が役立ちます。

一方で、防除作業では、薬剤や防護装備との相性を確認する必要があります。ファン付きウェアも、粉じんや薬剤、狭い場所での作業、バッテリー管理などを含めて、使える場面を分けて考える方が安全です。


ハウス作業では換気・遮光・滞在時間を見直す


ハウス内は、外気より高温多湿になりやすい環境です。梅雨明け後は、朝の短い時間でも温度が上がりやすく、収穫や管理作業を続けているうちに体への負担が大きくなることがあります。

まず確認したいのは、換気口やサイドの開閉、循環扇、遮光資材、温度計や湿度計の位置です。設備を新しく入れる前に、今ある設備がきちんと動くか、風の通り道がふさがっていないか、作業者がいる高さで温湿度を見られるかを点検しておきます。

作業は「終わるまで入る」のではなく、「何分入ったら一度出る」と決めておく方が安全です。複数人で作業する場合は、声かけのタイミングも決めておくと、異変に気づきやすくなります。



異変があった時の対応を共有しておく


もし熱中症が疑われるときは、作業を続けないことが第一です。めまい、立ちくらみ、頭痛、吐き気、だるさ、受け答えがおかしいなどの異変があれば、すぐに作業を止め、涼しい場所へ移動し、衣服をゆるめて体を冷やしましょう。

一緒に作業している人の意識がない、反応が悪い、自力で水分を取れない、吐き気が強いといった場合は、救急搬送を含めて早めに対応する必要があります。環境省の熱中症予防情報サイトでも、応急処置に関する情報を掲載していますので、時間のある時に仲間内で共有しておくといいでしょう。

また、従業員やアルバイトを受け入れている場合は、連絡先、責任者、搬送先などをあらかじめまとめておき、作業を中止する場合の判断基準を共有しておくことも重要です。

厚生労働省は、2025年(令和7年)6月1日施行の改正労働安全衛生規則により、一定の暑熱環境で作業を行う際、報告体制や対応手順の整備、関係作業者への周知を事業者に義務付けるとしています。家族経営や少人数の現場でも、「誰に連絡するか」「どこへ避難するか」「作業を止める目安は何か」などを決めておくことは、万一の備えになります。


熱中症対策は、作業前の準備で差が出る


梅雨明け後の農作業は、どうしても作業が詰まりやすくなります。収穫、防除、草刈り、出荷準備など、先送りしづらい作業も少なくありません。

だからこそ、熱中症対策は当日の気合いで乗り切るものではなく、作業計画の一部として考えることが大切です。今回ご紹介した暑さ指数を確認する、作業時間をずらす、休憩場所を決める、飲み物を用意する、装備を見直す、異変時の連絡方法を共有するといった準備を梅雨明け前後に見直しておくことで、夏本番の作業負担を和らげることもできます。

暑い時間帯の草刈り、防除、運搬などをすべて自前で抱え込むと、体力面でも日程面でも負担が大きくなることがあります。作業が集中する時期は、農作業委託を含めて、どこまで自分たちで行い、どこから外部の力を借りるかを整理しておくことも、夏場の安全管理の一つの選択肢です。


関連サービス
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参考資料
農林水産省「熱中症対策」
環境省「熱中症予防情報サイト」
環境省「暑さ指数(WBGT)について」
厚生労働省「職場における熱中症予防情報」
厚生労働省「職場における熱中症対策の強化について(令和7年6月1日施行)」
日本気象協会「熱中症ゼロへ」
日本気象協会「熱中症ゼロへ|暑熱順化」

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  1. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  2. 北島芙有子
    北島芙有子
    トマトが大好きなトマト農家。大学時代の農業アルバイトをきっかけに、非農家から新規就農しました。ハウス栽培の夏秋トマトをメインに、季節の野菜を栽培しています。最近はWeb関連の仕事も始め、半農半Xの生活。
  3. 柏木智帆
    柏木智帆
    米・食味鑑定士/お米ライター/ごはんソムリエ神奈川新聞の記者を経て、福島県の米農家と結婚。年間400種以上の米を試食しながら「お米の消費アップ」をライフワークに、執筆やイベント、講演活動など、お米の魅力を伝える活動を行っている。また、4歳の娘の食事やお弁当づくりを通して、食育にも目を向けている。プロフィール写真 ©杉山晃造
  4. 鈴木かゆ
    鈴木かゆ
    1993年生まれ、お粥研究家。「おかゆ好き?嫌い?」の問いを「どのおかゆが好き?」に変えるべく活動中。お粥の研究サイト「おかゆワールド.com」運営。各種SNS、メディアにてお粥レシピ/レポ/歴史/文化などを発信中。JAPAN MENSA会員。
  5. 田牧一郎
    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。