ねぎのドローン防除はここまで使える! 白斑・葉折れ・薬剤選びを乗り越えたこと京都の実践 【後編】
前編では、こと京都が夏場のねぎ防除をドローン委託に切り替えた理由を紹介しました。高温期の防除作業を外注することで、作業者の負担を抑え、定植や作付けなど他の作業に人員を回しやすくなるというメリットがありました。
一方で、ねぎのドローン防除には、ねぎならではの難しさもあります。葉が薬液をはじきやすいこと、葉が立ち上がっていること、収穫期には草丈が高くなること、周辺農家の理解が必要なことなど、実際に取り組んでみて見えてきた課題もあります。
後編では、こと京都が実際に委託して感じた課題と、今後、他のねぎ農家が導入を検討する場合に確認しておきたいポイントについて、こと京都の池島孝将さんにうかがいました。
最初に気になったのは、葉に残る白い汚れ
こと京都がドローン防除を始める前に懸念していたことの一つが、ねぎの葉に白い汚れが残る「白斑」でした。
ねぎは葉の表面にワックス層があり、薬液をはじきやすい作物です。そのため、薬剤を葉に付きやすくする目的で、散布時に展着剤を使うことがあります。展着剤は、薬液を葉に付着しやすくする「のり」のような役割を持つ資材です。
ただ、実際に展着剤と殺虫剤を混用してドローン散布した際に、白斑が出てしまったといいます。
「ドローンで防除すると白い汚れがつきやすいという話は、別の法人さんからも聞いていました。実際、展着剤と殺虫剤を混ぜたときには白斑が残ってしまいました」
しかしその後、展着剤を使わず、殺虫剤だけで散布してみたところ、白斑は出なくなりました。
「展着剤をなくして殺虫剤だけで散布してみたところ、白斑がつかなかったんです。そこは一つ、課題が解決した部分かなと感じています」
ただし、これはこと京都の圃場、品種、薬剤、散布条件における一例です。白斑の出方は、作物の状態、薬剤、気温、湿度、散布条件によって変わる可能性があります。導入前には、試験散布や出荷先の基準確認も含めて検討する必要があります。
風圧による葉折れは、品種と飛行高度で確認が必要
もう一つの懸念は、ドローンの風圧です。
ねぎは上に伸びる作物で、収穫期には草丈が70〜80cmほどになることもあります。葉が伸びた状態で強い風を受けると、葉折れが起こる可能性があります。
こと京都では、夏場に台風などの風にも耐えやすい、比較的硬めの品種を使っており、夏場のドローン防除では大きな問題は起きにくいと見ています。一方で、食味や食感を重視して柔らかい品種を使う時期もあり、その場合に同じようにドローン防除ができるかは、今後の検証課題だと池島さんは指摘します。
「弊社では九条ねぎの品種を4つ扱っており、中には葉肉が柔らかい品種もあります。そうした圃場で散布したときに、機体の風圧に耐えられるのかは、まだ検証できていません」
実際、過去にはドローンの風圧によって葉が折れてしまったこともあったとのこと。ただしその後、ドローンパイロットとも相談し、飛行高度を調整することで改善しつつあるといいます。
「最初に葉が折れてしまったドローンはかなり大きい機体で、その風圧にも驚かされました。ただ、2025年に防除を依頼したときは比較的小型の機体で、機体が変われば風圧も変わるものなんだと認識できました。あわせてパイロットさんにも、『ねぎの丈に合わせて飛行高度を変えてください』と伝えています」
株式会社オプティムの柳さんも、ねぎのように縦に伸びる作物では、生育状況に応じた飛行高度の調整が重要だと話します。
「ねぎのような作物では、生育状況によって飛行高度を変えることがあります。今のドローンは、強い風を直接当てるというより、ダウンウォッシュで薬液を葉の奥まで届けるように改善が進んでいます。機体や運用面の進化によって、縦に伸びる作物にも対応しやすくなってきているんです」
さらに、機体の性能だけでなく、圃場の状態を見ながらパイロットと調整する連携も重要になります。ねぎの草丈、品種、倒伏しやすさといった情報を事前に共有しておくことが、葉折れのリスクを下げるうえでも欠かせません。
「かかりが薄い」前提での薬剤選び
従来の人力散布と比べると、ドローン防除は10aあたりの散布水量自体が少なめです。その分、登録内容に沿って、少水量散布に合わせた濃度や水量で散布することになります。こと京都でも、実際の薬液のかかり方は「人力散布と比べれば薄い」と見ています。
そのため、薬剤選びの際には、浸透移行性のある薬剤を選ぶことを意識しているといいます。葉に付いた薬剤が植物体内に浸透し、効果を発揮するタイプの薬剤です。
「通常の人力散布と比べると、10aあたりの水量は少なくて済みますが、かかりはその分薄くなります。ドローン防除の薬剤を選定するときには、浸透移行性のある薬剤を必ず選んでいます」
課題となっているのが、ねぎでドローン散布に使える薬剤が、まだ十分ではないことです。同じ薬剤を使い回しすぎると、害虫の抵抗性が高まる懸念も出てきます。2026年6月現在、浸透移行性という特徴を持った薬剤として、池島さんはベネビアOD、ヨーバルフロアブル、アミスターなどを使っていますが、決して種類は多くありません。
「薬剤はできるだけローテーションして使っていますが、来年、再来年に同じ薬剤を使い回していたら、効きにくくなるのではないかという不安はあります」
株式会社オプティムの柳さんもその点は感じており、農薬メーカーとは異なるアプローチから解決策を模索しています。
「オプティムとして、県や試験場などと連携しながら実証を重ね、公的なエビデンスを積み上げることも大切です。一方で、現場で実際に使ってどうだったかという生の声も、導入を考える方にとっては大きな判断材料です。両方を進めていくことが重要だと思います」
周辺農家への説明は、技術以上に大切な工程
そして、ドローン防除においては、圃場の外へ薬液が流れるドリフトへの注意も欠かせません。
こと京都では、周辺で農家が作業しているときにドローン散布を行う場合、オペレーター側から声をかけてもらうようにしています。ただ、地域によっては、ドローン防除そのものを見たことがない農家もまだまだいます。
「近隣の農家さんの中には、ドローンで薬剤を散布できること自体を知らない方もいます。まずは、そこから理解を深めてもらう必要はありますね」
実際にこと京都の散布を見学した周辺農家からは、粒子が細かく、少し風が吹いただけでもドリフトのリスクがあるのではないか、という不安の声もあったといいます。
こと京都でも、水で試験散布を行い、ねぎの葉にどれくらいかかっているかを紙などを用いて確認したことがありました。隣接圃場への流入まで十分に検証できたわけではありませんが、少なくとも大きなトラブルにはなっていません。
ドローン防除は、技術的に飛ばせるかどうかだけでなく、周辺農家や地域の理解を得ながら進める必要があります。特に露地野菜では、隣の圃場で栽培されている作物や出荷先の基準もそれぞれ異なるため、事前の説明や当日の風速確認などを行い、慎重に進めることが重要です。
その点、オプティムの「アグリポン」では、ドローンパイロットがこうした状況についても研修などで学んでいます。信頼できるパイロットが作業しているという安心感も、ドローン防除を委託するうえでは重要な条件のひとつです。
向いているのは一定面積を管理する法人や地域単位の利用
実際にドローン防除を経験したこと京都では、ドローン防除は小規模農家が単独で機体を購入して自分の圃場で使うよりも、一定面積を管理する法人や、地域でまとまって委託する形の方が現実的ではないかと見ています。
「ねぎの場合、ドローンの免許を取りに行く費用や機体の購入費用を考えると、小さい規模で元を取るのはかなり時間がかかってしまうと思います」
一方で、委託であれば、自社で機体を持たなくてもドローン防除を利用できます。特に、5月から10月の防除負担が重い法人や、複数の農家が地域単位でまとまって作業を委託できる場合には、コスト面でも検討しやすくなる可能性があります。
さらに、こと京都が感じているドローン防除のメリットは、散布の均一化です。
「人力散布だと、歩くスピードによって散布ムラが出ることがあります。ドローン防除であれば、速度を一定に調整できるので、均一に散布されていると感じています」
すべての圃場で同じように使えるわけではありませんが、こと京都のように高温期の防除負担が重く、年間の作付け計画に影響しやすい経営体にとって、ドローン防除の委託は検討する価値のある選択肢になりそうです。
ねぎ防除の選択肢を、圃場条件に合わせて考える
ねぎのドローン防除では、白斑、葉折れ、薬剤選び、ドリフト、周辺理解など、確認すべき点がいくつもあります。一方で、高温期の作業負担を減らし、作付けや収穫の流れを守る手段として、大きく役立つ面もあります。
導入を考える際は、まず自社の防除時期、対象面積、作業者の負担、薬剤ローテーション、周辺圃場との関係を整理することが大切です。そのうえで、自社で機体を購入するのか、委託するのか、またどの時期に活用するのかを検討すると、自社に合った判断がしやすくなります。
こと京都のような大規模ねぎ農家のドローン防除の委託事例は、事業拡大を目指す経営体や、地域ぐるみで効率化を進めたいねぎ産地にとって、将来的な省力化を考えるきっかけになるでしょう。
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