除草剤が効かない圃場の共通点 水深・水持ち・中干しから見直す雑草対策

「除草剤をまいているのに、毎年同じように草が残る」
「散布のタイミングや使用量を守っていても思ったように抑えきれない」

と感じる場面は少なくありません。

その原因のひとつとして考えたいのが、水管理です。水稲栽培では、湛水や落水、中干しといった水の動きが、雑草の発生条件や除草剤の効き方に影響します。

水管理が雑草に関わる要素は、大きくわけて「水深」「水持ち」「中干しのタイミング」の3つ。この記事ではこの3要素を整理しながら、圃場条件や草種の履歴に応じた水管理の見直し方を考えていきます。



水田雑草の種類と特徴を知ろう


水田雑草は、草種ごとに水への反応が異なります。「水を張れば雑草を抑えられる」と一括りに考えるよりも、まずは水管理で抑えやすい草種と、抑えにくい草種を整理すると対策方法を判断しやすくなります。

湛水で抑えやすいグループ


水を張ることで抑制できる代表的な雑草がノビエ類です。ヒエ類は発芽や初期生育に酸素を必要とするため、深い湛水状態では発生や生育が抑えられやすいとされています。

湛水だけでは抑えにくいグループ


一方で、コナギ、ホタルイ、オモダカ、クログワイのように水中でも発芽・生育できる草種や、地下の塊茎から再生する多年生雑草は、深水だけでは対応しきれません。深水管理はヒエ類を抑えることができる一方で、コナギなどの雑草が優占しやすくなるため、早期湛水や機械除草などを組み合わせる必要があります。

つまり、深水管理は「ノビエが多い圃場」では選択肢になりますが、多年生雑草やコナギが主体の圃場では、別の対策との併用が不可欠です。


水管理の3要素と雑草の関係を理解しよう



水管理の方法として、「水深」「水持ち」「中干し」の3つに分けると整理しやすくなります。それぞれ雑草への影響の仕方を見てみましょう。

① 水深


水深は、主に雑草の発芽や初期生育の抑制に関わります。

前述のとおり、深水にすることで土壌中の酸素供給が制限され、ノビエ類のような草種では発生が抑えやすくなります。

農研機構の深水管理マニュアルでは、活着後から中干しまでの期間、田面不陸などを考慮して14cm以上の深水管理を行うことで、雑草の出芽が遅れ、生育も抑制され、特にヒエ類の生育が著しく抑えられるとされています。また、水深20cm以上ではノビエがほとんど生育せず、15cm程度でも数が少なくなるとも言われています。

一方で、深水管理は水稲の苗にも影響してしまいます。苗が水没しない草丈や、活着後に段階的に水位を上げる管理が必要になるため、苗質や移植時期、圃場の均平性もあわせて見ておく必要があります。

また、深水管理には用水量や畦畔の高さ・強度、田面の均平なども関係し、十分な用水の確保や高さ30cm程度で十分な強度を有する畦畔が必要となることも覚えておきたい点です。

② 水持ち(減水スピード)


水持ちは、除草剤の効果を左右する要素として特に重要です。

そもそも、水田に散布された除草剤成分はいったん田面水に溶け、その後、土壌表面に薄い処理層をつくり、発芽直後の雑草に吸収されて効果を発揮します。散布後の数日間は止水して、有効成分を水田内に保持することがポイントになります。「水持ちの良い水田で難防除雑草が発生しない条件であれば、一発処理剤1回で十分な除草効果がある」とされているのはそのためです。

しかし、水持ちが悪く漏水があるような圃場では、除草剤の成分が田面に安定しにくく、処理層が崩れやすくなります。同じ除草剤の使い方でも効果が不安定になります。

③ 中干しのタイミング


中干しは、雑草の発生タイミングや生育の抑制に効果があります。

水を落として酸素が供給されると、雑草の発芽条件が変わり、中干し後や再湛水後に雑草が目立つことがあります。特に、すでに多年生雑草の履歴がある圃場では、中干し後の動きを見ながら、後の対応を組み立てる必要があるでしょう。

ここでポイントとなるのが、中干しの期間の長さです。

深水管理と組み合わせて中干し期間を延長することで、コナギなどの生育を抑制できる可能性が高まります。一方で、乾燥期間が長くなることで酸素供給が進み、別の草種の発芽につながる恐れもあります。

中干しそのものは水稲栽培に欠かせない管理ですが、雑草の抑制という視点では「発生を切り替えるタイミング」としても見ておくと、後半の管理を考えやすくなります。


除草剤の「成分」と「対応草種」を把握しよう


こうした水管理による雑草抑制だけではうまくいかない場合に、除草剤も併用することがあります。

ただし、除草剤とひとくちに言っても、含まれる有効成分によって効果を発揮しやすい草種は異なります。圃場で目立つ草種と、使用する除草剤の適用草種を照らし合わせ、適切なタイミングで使用することが重要です。

例えば、一発処理剤はノビエ1〜3葉期頃に使用する除草剤で、複数の有効成分を含み、多年生雑草を含めて多くの種類の雑草を一度に防除できるものとされています。

一方で、中期除草剤、後期除草剤などは対象時期や対象草種が異なるため、残草の種類に応じた確認が必要になります。

また、日本植物調節剤研究協会は、散布方法ごとに湛水状態や水深の注意点を示しています。

つまり、除草剤の選択では「何を使うか」だけでなく、その除草剤が効きやすい草種か、水管理の条件が合っているかもセットで見る必要があります。



作業優先順位の考え方:「全部やる」より「効果の大きい順に絞る」


水管理、除草剤、機械除草、草種確認……理想を言えば、すべて丁寧に行いたいところです。しかし実際の現場では、田植え後の水管理、防除、畦畔管理、ほかの作目の作業が重なります。そのため、圃場条件と草種の履歴を見ながら、効果が大きそうなところから優先順位をつけていきましょう。

例えば、ノビエが多く水が安定して確保できる圃場では深水管理を軸に、水持ちが悪く漏水しやすい圃場では、まず水尻や畦畔からの漏水を見直すことが、除草剤の効果を安定させる前提になります。除草剤の処理層が安定しなければ、草種に合った剤を使っても効果がばらつきます。

また、コナギやオモダカ、クログワイなどが残りやすい圃場では、水深だけに頼らず、除草剤の成分、機械除草、中干し後の発生状況を組み合わせて見る必要があります。

判断に迷ったら、まずは以下の優先順位に沿ってチェックしてみてください。

1. ノビエが主体で、水を確保できる
→ 深水管理を検討する

2. 漏水があり、除草剤の効きが不安定
→ 水持ちの改善や止水管理を確認する

3. 多年生雑草やコナギが残りやすい
→ 水管理だけでなく、草種に合う除草体系を見直す

4. 中干し後に再発生が目立つ
→ 中干し後の発生状況を確認し、後半の対応を組み立てる

「全部やる」ではなく、圃場ごとに雑草をうまく抑制できない条件を見つけることが、作業負担を抑えながら対策を組み立てる第一歩になります。

まとめ


水稲における雑草対策としての水深・水持ち・中干しという3要素は、それぞれ異なる形で草種や除草剤の効果に関わっています。

どれか一つだけをやればいいというわけではなく、圃場の条件と草種の履歴を照らし合わせながら、どこを優先して見直すかをまずは検討してみましょう。

水管理は除草作業の前工程であり、除草剤の効果を支える条件でもあります。漏水箇所の有無、水深の安定度、中干し後の発生状況などを確認することが、次の雑草対策を考える手がかりになります。

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参考
農研機構「深水管理による省力的な有機水稲栽培を 実現する農地整備&栽培管理マニュアル」
みんなの農業広場「水田除草剤と雑草防除」
宮城県「雑草解説(稲作)」
みんなの農業広場「農薬に頼らない雑草防除法」
日本植物調節剤研究協会:「適正使用と適切な水管理」

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  1. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  2. 北島芙有子
    北島芙有子
    トマトが大好きなトマト農家。大学時代の農業アルバイトをきっかけに、非農家から新規就農しました。ハウス栽培の夏秋トマトをメインに、季節の野菜を栽培しています。最近はWeb関連の仕事も始め、半農半Xの生活。
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    柏木智帆
    米・食味鑑定士/お米ライター/ごはんソムリエ神奈川新聞の記者を経て、福島県の米農家と結婚。年間400種以上の米を試食しながら「お米の消費アップ」をライフワークに、執筆やイベント、講演活動など、お米の魅力を伝える活動を行っている。また、4歳の娘の食事やお弁当づくりを通して、食育にも目を向けている。プロフィール写真 ©杉山晃造
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    鈴木かゆ
    1993年生まれ、お粥研究家。「おかゆ好き?嫌い?」の問いを「どのおかゆが好き?」に変えるべく活動中。お粥の研究サイト「おかゆワールド.com」運営。各種SNS、メディアにてお粥レシピ/レポ/歴史/文化などを発信中。JAPAN MENSA会員。
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    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
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