2026年から始める農業ブランド戦略|利益を残す“売れる”ための考え方
2025年(令和7年)4月に閣議決定された「食料・農業・農村基本計画」では、生産や流通にかかる合理的な費用を考慮した価格形成が掲げられました。農家側にも、作物を育てて出荷する「生産者」という立場だけでなく、誰へ何を届け、いくらで売るのかまで見通す「経営者」としての視点が求められています。
農業経営では、収量や品質を高める力に加え、売り方の組み立てが収益を左右します。生産量が伸びれば、その分売上が上がるというほど単純ではありません。
肥料や燃料、農業資材、包装、保管、輸送にかかる費用が増えるなかで、選別や袋詰め、運搬の仕事も増えることになります。たとえ売上が伸びても、出荷までの支出や労働がそれ以上に膨らめば、手元に残る金額は伸びません。
そこで必要となる考え方が、「農業のブランド戦略」です。といっても、高級な箱や目立つロゴを作ることではありません。買い手が選ぶ理由を商品説明や写真、内容量、価格、販路に表し、収益へ結び付ける地道な作業です。
今回は、「農業ブランド」をキーワードに、売上をアップするための考え方をご紹介します。

https://www.shutterstock.com/ja/image-photo/summer-vegetables-on-table-cucumber-tomato-2499955835?trackingId=be902a42-31d9-43fa-99af-2b6b206fccf1&listId=searchResults
売り方を見直す際は、利益を「単価」「数量」「継続」「コスト」の4つに分けます。
「単価」は、一袋、一箱、一俵をいくらで売るかです。「数量」は、その価格でどれだけ売れるかを示します。単価を上げても注文が大きく減れば、売上全体は伸びません。また、多く売れても、箱代や送料、販売手数料が膨らめば、受取額は想定より少なくなります。
「継続」は、同じ家庭や取引先から次の注文を得られるかという視点です。毎年購入する家庭や、定期的に仕入れる飲食店があれば、出荷量を見込みやすくなります。また、収穫前に注文数が分かれば、箱や袋も早めにそろえられ、新しい売り先を探す負担も減らせます。
「コスト」には、生産費だけでなく、販売に伴う支出と労働も含めます。販売手数料、箱代、送料、決済費、保冷費のほか、袋詰め、発送、問い合わせ、請求に使った時間も書き出します。家族が担う作業も、農繁期の負担を測る材料です。
販路ごとの収支を比べる際は、売上から経費を引くだけで終わらせず、作業時間も記録します。同じ1万円が残る取引でも、2時間で終わる場合と半日かかる場合では、ほかの農作業への負担が違います。農林水産省の「農業経営統計調査」も、自分の帳簿と比べる材料になるでしょう。
販売先には、それぞれ異なる利点と負担があります。
表示価格が高くても、少量の注文を何度も発送すれば、送料と作業時間が利益を圧迫します。まとまった注文でも、遠方への納品が多ければ、燃料費と移動時間が増えます。売値だけでなく、販売後にいくら残ったかを見ることが欠かせません。
販路を一つに絞る必要はありません。まとまった量は現在の出荷先へ出し、少量の商品を直売で試すなど、それぞれに役割を持たせる形も選べます。

https://www.shutterstock.com/ja/image-photo/vegetables-box-home-delivery-service-order-2146874263?trackingId=ee515f35-00bd-4a21-a908-1c4d0090134d&listId=searchResults
ブランドづくりでは、最初に誰へ売るのかを決めます。同じ農産物でも、家庭、飲食店、贈答品の購入者では、商品を見る基準が異なるためです。
家庭向けであれば、味や鮮度に加え、食べ切れる量、保存のしやすさ、調理のしやすさが比較材料になります。飲食店向けでは、サイズ、規格、納品単位、出荷できる期間、連絡の速さが仕入れを左右します。贈答用では、外観、地域らしさ、包装、届け日の指定なども商品の価値に含まれます。
地域名や産地の個性を前面に出す売り方もあります。地元の直売所や飲食店では、収穫から販売までの近さや旬の味が選ばれる理由になります。地域外の買い手にとっては、その土地で育まれた品種、気候、食文化、名産としての背景も商品の魅力です。
産地名を載せるだけでなく、なぜその地域で作られてきたのか、どのような味わいで、どんな食べ方に向くのかまで示すことで、「その土地のものを選びたい」という気持ちを後押しできます。
直売所のPOPやインターネット通販では、商品写真も選ぶ材料になります。農産物の色や形だけでなく、一個当たりの大きさ、箱に入る数量、包装した状態まで写すと、購入後の姿を想像しやすくなります。写真や説明は実際に販売する商品と合わせ、外観や大きさにばらつきがある場合は、その旨も先に伝えます。
購入者の声を集める際は、なぜ選んだのか、どのように食べたのか、量や包装は使いやすかったかを聞きます。そこで得た声は、内容量、説明文、写真、発送単位を直す材料になります。

https://www.shutterstock.com/ja/image-photo/farmers-who-sell-their-produce-directly-2583841461?trackingId=35bfd1f9-0556-4cdb-a3f3-efd5177316db&listId=searchResults
ブランド戦略で目指すべきなのは、農産物を目立たせることではなく、経営に無理のない売り方をつくることです。価格が高くても手間が増えすぎれば続きませんし、売上が大きくても、経費や売れ残りが膨らめば利益は残りにくくなります。
そのため、売り方を決める際は、「いくら売れたか」だけでなく、「いくら残ったか」「どれだけ時間がかかったか」「翌年も同じ形で続けられるか」を基準にします。
買い手から評価された点が、自分の想定と異なる場合もあります。売れ方や購入後の声を見ながら、商品の伝え方や販売先を少しずつ工夫していくことで、ブランドは作られていきます。
地域ブランドや付加価値を付けたブランドがうらやましく見えることもあるかもしれませんが、そうした完成形を目指す必要はありません。試行錯誤した結果を次の販売に反映し、自分の経営に合う形へ近づけていくことこそが、利益を残すための本当の意味でのブランド戦略なのです。
参考資料
農林水産省|食料・農業・農村基本計画
農林水産省|農業経営統計調査
農林水産省|地産地消(地域の農林水産物の利用)の促進
農業経営では、収量や品質を高める力に加え、売り方の組み立てが収益を左右します。生産量が伸びれば、その分売上が上がるというほど単純ではありません。
肥料や燃料、農業資材、包装、保管、輸送にかかる費用が増えるなかで、選別や袋詰め、運搬の仕事も増えることになります。たとえ売上が伸びても、出荷までの支出や労働がそれ以上に膨らめば、手元に残る金額は伸びません。
そこで必要となる考え方が、「農業のブランド戦略」です。といっても、高級な箱や目立つロゴを作ることではありません。買い手が選ぶ理由を商品説明や写真、内容量、価格、販路に表し、収益へ結び付ける地道な作業です。
今回は、「農業ブランド」をキーワードに、売上をアップするための考え方をご紹介します。
https://www.shutterstock.com/ja/image-photo/summer-vegetables-on-table-cucumber-tomato-2499955835?trackingId=be902a42-31d9-43fa-99af-2b6b206fccf1&listId=searchResults
利益は「単価・数量・継続・コスト」で考える
売り方を見直す際は、利益を「単価」「数量」「継続」「コスト」の4つに分けます。
「単価」は、一袋、一箱、一俵をいくらで売るかです。「数量」は、その価格でどれだけ売れるかを示します。単価を上げても注文が大きく減れば、売上全体は伸びません。また、多く売れても、箱代や送料、販売手数料が膨らめば、受取額は想定より少なくなります。
「継続」は、同じ家庭や取引先から次の注文を得られるかという視点です。毎年購入する家庭や、定期的に仕入れる飲食店があれば、出荷量を見込みやすくなります。また、収穫前に注文数が分かれば、箱や袋も早めにそろえられ、新しい売り先を探す負担も減らせます。
「コスト」には、生産費だけでなく、販売に伴う支出と労働も含めます。販売手数料、箱代、送料、決済費、保冷費のほか、袋詰め、発送、問い合わせ、請求に使った時間も書き出します。家族が担う作業も、農繁期の負担を測る材料です。
販路ごとの収支を比べる際は、売上から経費を引くだけで終わらせず、作業時間も記録します。同じ1万円が残る取引でも、2時間で終わる場合と半日かかる場合では、ほかの農作業への負担が違います。農林水産省の「農業経営統計調査」も、自分の帳簿と比べる材料になるでしょう。
販売先には、それぞれ異なる利点と負担があります。
JA・市場
JAや市場への出荷は、まとまった量を出しやすく、選果や販売、代金回収を任せられます。個別の注文を受け、各家庭へ発送する仕事を減らせる点も強みです。直売所・道の駅など
直売所では自分で値付けしやすい半面、袋詰め、ラベル貼り、搬入、補充、売れ残りの回収が生じます。インターネット通販
インターネット通販では、販売サイトの手数料や送料に加え、受注、梱包、発送、問い合わせへの返答も発生します。飲食店
飲食店との直接取引では、納品回数、配送距離、規格、請求、入金日まで含めて採算を見ます。表示価格が高くても、少量の注文を何度も発送すれば、送料と作業時間が利益を圧迫します。まとまった注文でも、遠方への納品が多ければ、燃料費と移動時間が増えます。売値だけでなく、販売後にいくら残ったかを見ることが欠かせません。
販路を一つに絞る必要はありません。まとまった量は現在の出荷先へ出し、少量の商品を直売で試すなど、それぞれに役割を持たせる形も選べます。
https://www.shutterstock.com/ja/image-photo/vegetables-box-home-delivery-service-order-2146874263?trackingId=ee515f35-00bd-4a21-a908-1c4d0090134d&listId=searchResults
ブランドとは「選ばれる理由」をそろえること
ブランドづくりでは、最初に誰へ売るのかを決めます。同じ農産物でも、家庭、飲食店、贈答品の購入者では、商品を見る基準が異なるためです。
家庭向けであれば、味や鮮度に加え、食べ切れる量、保存のしやすさ、調理のしやすさが比較材料になります。飲食店向けでは、サイズ、規格、納品単位、出荷できる期間、連絡の速さが仕入れを左右します。贈答用では、外観、地域らしさ、包装、届け日の指定なども商品の価値に含まれます。
地域名や産地の個性を前面に出す売り方もあります。地元の直売所や飲食店では、収穫から販売までの近さや旬の味が選ばれる理由になります。地域外の買い手にとっては、その土地で育まれた品種、気候、食文化、名産としての背景も商品の魅力です。
産地名を載せるだけでなく、なぜその地域で作られてきたのか、どのような味わいで、どんな食べ方に向くのかまで示すことで、「その土地のものを選びたい」という気持ちを後押しできます。
直売所のPOPやインターネット通販では、商品写真も選ぶ材料になります。農産物の色や形だけでなく、一個当たりの大きさ、箱に入る数量、包装した状態まで写すと、購入後の姿を想像しやすくなります。写真や説明は実際に販売する商品と合わせ、外観や大きさにばらつきがある場合は、その旨も先に伝えます。
購入者の声を集める際は、なぜ選んだのか、どのように食べたのか、量や包装は使いやすかったかを聞きます。そこで得た声は、内容量、説明文、写真、発送単位を直す材料になります。
https://www.shutterstock.com/ja/image-photo/farmers-who-sell-their-produce-directly-2583841461?trackingId=35bfd1f9-0556-4cdb-a3f3-efd5177316db&listId=searchResults
ブランド戦略は利益を残すための経営設計
ブランド戦略で目指すべきなのは、農産物を目立たせることではなく、経営に無理のない売り方をつくることです。価格が高くても手間が増えすぎれば続きませんし、売上が大きくても、経費や売れ残りが膨らめば利益は残りにくくなります。
そのため、売り方を決める際は、「いくら売れたか」だけでなく、「いくら残ったか」「どれだけ時間がかかったか」「翌年も同じ形で続けられるか」を基準にします。
買い手から評価された点が、自分の想定と異なる場合もあります。売れ方や購入後の声を見ながら、商品の伝え方や販売先を少しずつ工夫していくことで、ブランドは作られていきます。
地域ブランドや付加価値を付けたブランドがうらやましく見えることもあるかもしれませんが、そうした完成形を目指す必要はありません。試行錯誤した結果を次の販売に反映し、自分の経営に合う形へ近づけていくことこそが、利益を残すための本当の意味でのブランド戦略なのです。
参考資料
農林水産省|食料・農業・農村基本計画
農林水産省|農業経営統計調査
農林水産省|地産地消(地域の農林水産物の利用)の促進
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