生理落果後の「荒摘果」で夏本番に備えよう|6〜7月の柑橘類管理

5〜6月の柑橘類では、生理落果が始まる前後に、葉色や新梢の伸び、幼果の付き方などを見ながら、その年の樹勢や着果状況を読み取る記事を紹介しました。

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柑橘の樹勢低下を防ぐための観察術|5〜6月に確認したいポイント

生理落果が落ち着く頃になると、樹に残る果実数がおおよそ見えてきます。ここからは樹の様子を見極める段階から、実際の作業へ移る時期です。

園地では荒摘果が始まる一方で、梅雨時期の病害虫対策や草刈り、排水の見回りなども重なります。さらに梅雨明けが近づくと、高温や乾燥への備えも必要になります。

作業が集中する時期だからこそ、園地や樹の状況に応じて手を入れる順番を考えることが大切です。本記事では、生理落果後の荒摘果を中心に、病害虫の見回りや夏本番前に行いたい園地管理について整理します。



荒摘果|生理落果後の荒摘果〜「残す実」を決める作業


春に開花した柑橘は、初夏にかけて自然に果実数を減らします。これが生理落果です。ある程度の落果は異常ではなく、樹が自ら負荷を減らす生育過程の一つです。落果が落ち着くと、その年に残る果実数がおおよそ見えてきます。ここから始まるのが荒摘果です。

荒摘果の目的は、果実の見た目をそろえることではありません。樹への負担を軽くし、残した果実へ養分が回りやすい環境を整えることです。果実が多すぎると一つひとつの果実に回る養分が少なくなり、果実肥大が進みにくくなります。

この頃になると、樹によって果実の残り方にも差が出てきます。実が多く残った樹では葉色が淡くなったり、新梢の発生が少なくなったりすることがあります。そのため、すべての樹を同じ基準で摘果するのではなく、実が多い樹や樹勢の弱い樹から手を入れていきます。

実際の作業では、傷果、病害虫被害果、小玉果、変形果などから落としていきます。果実同士が込み合う場所では形や大きさを見ながら間引きます。枝先に集中した果実や、真上を向いて強い日差しを受けやすい果実も整理の対象です。

ただし、荒摘果の段階で最終的な着果量まで絞り込む必要はありません。台風や強風による落果、病害虫被害などで果実数が変動することもあります。まずは樹への負担を軽くし、その後の果実肥大や落果の状況を見ながら仕上げ摘果へつなげます。

また、果実を残し過ぎると翌年の花芽形成に影響し、豊作の翌年に不作となる「隔年結果」を招くことがあります。着果が多かった枝よりも、その年に十分な葉を維持できた枝が翌年の結果母枝になる場合もあります。

荒摘果は今年の果実品質を整えるためだけの作業ではありません。翌年の収量も見すえながら、樹に無理をさせない着果量へ近づけていくことが大切です。



病害虫|病害虫対策〜摘果とあわせて発生状況を確認する


6〜7月は樹全体を見回る機会が増えるため、病害虫の発生状況も把握しやすい時期です。梅雨の長雨による高湿度と、梅雨明け後の高温乾燥によって発生しやすい病害虫が変わるため、摘果だけを行うのではなく、葉や枝、果面にも目を向けながら作業を進めたいところです。

農林水産省の「農業生産における気候変動適応ガイド うんしゅうみかん編」では、気温上昇に伴い、うんしゅうみかんの生理落果の増加や病害虫の発生など、栽培への影響が変化していくことが指摘されています。実際の防除の現場でこの時期に目を配りたいものとして、黒点病、ミカンハダニ、ミカンサビダニ、チャノキイロアザミウマなどがあります。

薬剤名を暗記するよりも、自園で発生しやすい病害虫を把握しておく方が実際の防除につながります。前年に被害が出た園地や、風通しが悪い場所、乾燥しやすい場所などは重点的に見回りたいところです。

防除で大事なのは、すべての園地を同じ日に回ることではありません。黒点病が出やすい湿気の多い園地と、ダニ類が増えやすい乾燥園地では見るべき場所も異なります。

まずは前年の発生履歴を振り返り、自園で被害が出やすい場所から巡回するようにします。園地ごとの差を把握しておくことで、限られた時間でも効率よく被害を抑えられます。防除記録や発生記録は翌年以降の見回りにも役立ち、黒点病が出やすい場所、ダニ類が増えやすい場所などを記録しておくと、翌年の巡回順や防除計画を立てやすくなるでしょう。

6〜7月に注意したい柑橘類の主な病害虫
病害虫名症状・特徴管理のポイント登録薬剤例※
黒点病 果実や葉に黒い斑点が生じ、果実の外観品質が低下する 枯れ枝を除去し、降雨前後の予防散布を行う マンゼブ剤
ミカンハダニ 葉色が白っぽくなり光合成能力が低下する 葉裏の発生状況を確認し、密度が増える前に防除する 登録のある殺ダニ剤
ミカンサビダニ サビ果の原因になる 果面を観察し、発生初期の段階で防除する 登録のある殺ダニ剤
チャノキイロアザミウマ 果面に傷を付け、外観品質を低下させる 発生予察を確認し、幼果期から適期防除を行う 登録のある殺虫剤
※登録内容は変更される場合があります。使用前に農薬登録情報検索システムおよび製品ラベルを必ず確認してください。


日焼け対策|乾燥・日焼け対策〜梅雨明け前からの準備が肝心


梅雨明け後は、気温の上昇とともに強い日差しや乾燥の影響を受けやすくなります。この時期に見ておきたいのが、果実の露出状況と園地の乾きやすさです。

果実が強い日差しを受け続けると、果皮が変色する「日焼け果」が見られることがあります。葉が少ない樹や、果実が外側に露出している樹では起こりやすくなります。

荒摘果では上向き果や露出果を減らし、葉に守られた果実を残すことを意識します。ただし、果実を樹の内側に残し過ぎると日当たりが不足し、肥大や着色に影響する場合があります。葉による保護と日当たりの両方を見ながら残す果実を選びたいところです。

強剪定を行った樹では、それまで葉に隠れていた果実や枝に直射日光が当たりやすくなります。果実だけでなく幹や主枝が傷むこともあるため、剪定量が多かった樹は優先的に見回ります。

乾燥への備えも欠かせません。水持ちの悪い園地や傾斜地では、夏場に果実肥大が鈍ったり葉が傷んだりすることがあります。気温が高くなる前に、かん水設備や水源の状況を確認しておくと、その後の対応がしやすくなります。

草生管理や敷き草、敷きわらによって土壌の乾燥を和らげる方法もあります。ただし、排水が悪い園地では過湿につながる場合もあるため、園地条件に合わせて取り入れることが大切です。

梅雨明け前に優先して見たい園地
園地の条件起こりやすいこと
南向き斜面・葉が少ない樹が多い園地 果実の日焼け
水持ちの悪い園地 水分不足による果実肥大の停滞
樹勢が弱い園地 葉焼け・落葉
例年乾燥しやすい園地 樹勢低下
かん水設備がない園地 夏場の水不足

遮光資材や白塗剤もありますが、まずは園地の実情を把握するところから始まります。資材購入はその後でも遅くありません。


6〜7月の管理は夏以降の生産を左右する


6〜7月は、生理落果後の荒摘果をはじめ、病害虫への備えや梅雨明け後の乾燥・日焼けへの備えが重なる月です。

荒摘果では樹への負荷を減らし、防除では被害が出やすい園地から手を付けます。暑さへの備えは梅雨明け前から着手しておくと、真夏の作業負担も軽くなります。

すべてを同じ日に行うのは現実的ではありません。樹ごとの差や園地条件を見ながら順番を決めることで、限られた時間でも効率よく作業できます。

収穫期はまだ先ですが、この頃の作業が果実品質だけでなく翌年の収量にも及びます。まずは園地を歩き、樹や園地ごとの違いを整理しながら、どこから手を付けるかを決めていきましょう。


参考資料
柑橘の樹勢低下を防ぐための観察術|5〜6月に確認したいポイント(SMART AGRI)
徳島県|温州みかん(露地)7月の管理
農林水産省「農業生産における気候変動適応ガイド うんしゅうみかん編」
農研機構「カンキツ連年安定生産のための技術マニュアル」
農林水産省 農薬登録情報検索システム


夏本番前の管理を、もっと効率よく!
6〜7月は、荒摘果、防除、草刈りなどが重なる忙しい時期です。
防除を委託・省力化することで、荒摘果や樹の状態を見ながら
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  1. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  2. 北島芙有子
    北島芙有子
    トマトが大好きなトマト農家。大学時代の農業アルバイトをきっかけに、非農家から新規就農しました。ハウス栽培の夏秋トマトをメインに、季節の野菜を栽培しています。最近はWeb関連の仕事も始め、半農半Xの生活。
  3. 柏木智帆
    柏木智帆
    米・食味鑑定士/お米ライター/ごはんソムリエ神奈川新聞の記者を経て、福島県の米農家と結婚。年間400種以上の米を試食しながら「お米の消費アップ」をライフワークに、執筆やイベント、講演活動など、お米の魅力を伝える活動を行っている。また、4歳の娘の食事やお弁当づくりを通して、食育にも目を向けている。プロフィール写真 ©杉山晃造
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    鈴木かゆ
    1993年生まれ、お粥研究家。「おかゆ好き?嫌い?」の問いを「どのおかゆが好き?」に変えるべく活動中。お粥の研究サイト「おかゆワールド.com」運営。各種SNS、メディアにてお粥レシピ/レポ/歴史/文化などを発信中。JAPAN MENSA会員。
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    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
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