ただ作ってるだけでは儲からない? 「三方良し」が「やりがい」につながる! 【連載:JAとの正しい付き合い方 第3回】

「SMART AGRI」をご覧のみなさん、こんにちは。アラサーメンズのカズノ子です。

前回は「井の中の蛙では儲からない! 視野を広げ、選択肢を広げよう! 」ということで、JA以外に視野を広げることで経営の選択肢を増やそうというお話でした。

さて、今回は自分で作った作物の「やりがい」をもっと感じよう! というお話です。

イラスト:よこいしょうこ

なぜ、あなたはその作物を栽培していますか?


読者のみなさんも、現在育てている作物がありますよね。どうして、その作物を栽培しているのでしょうか。たとえば……

  • JAの推奨作物だから
  • 代々作ってきている作物だから
  • 新規参入しやすかったから
  • 地域の気候に合っている作物だから
  • ここでしか作れない伝統的な作物だから
  • 儲かりそう・手間がかからないから
  • その作物が好きだから

さまざまな理由がありそうですね。ここで一度、考えてみてください……。


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では、私なりの答えをお伝えします。

JAに勤めていた頃、儲かっている農家さんに同じように聞いてみたことがあります。その時返ってきたのは、「待っている人がいるから」という答え。当時は「そうなんだ~」くらいにしか思わなかったのですが、販売部門を担当するようになって、深い意味を持つ言葉であることに気づきました。

この農家さんがおっしゃっている「待っている人」とは、その作物に対して“思い入れがある人”のこと。作物の市場における課題や良いところを知っていて、ここの産地なら心配がない・満足できる……そう考えている人のことです。

同じ産地で農家を続けていると意外と気がつかないかもしれませんが、実はその産地では当たり前にしていることが、他産地では環境や条件の違いで再現できない、ということも珍しくありません。

ある作物を待っている消費者は、他の産地と比較した上で「この産地の作物にしよう」と決めることがあります。そうやって、他の産地と比べて特別であることを知っている人に出会えることで、「生産者も儲かる・販売業者も儲かる・消費者も満足する」、誰かが損をすることがない、まさに“三方良し”の関係が生まれるのです。


「ただ作っているだけの農家」と「売り先とつながっている農家」



JAで販売部門を担当した際に気づいたのは、「自分が作っている作物がどのように流通されて、販売されるのか。消費者にどのように届いて、評価はどうなのか」を、気にする農家さんと気にしない農家さんがいるということでした。

この両者が出す品物には、必ず何かしらの違いがありました。

出荷した作物を気にする農家さんは、市場あいさつに率先して参加し、セリ人と情報交換をしたり、仲卸・バイヤーと直接会って話をしたりと、見る景色・見るポイントが違うように感じます。そしてそれは、品物にも表れます。

生産者同士のつながりだけでは、どうしても偏った考えになりがちです。少し景色を変えて、流通・販売に目を向けるだけで、いろんな人たちが支えてくれていることに気づきます。

ご存じのように、JAは生産物の受託拒否はできません。だからといってなんでもかんでも出荷してくる農家さんには、成長の兆しは見られません。

たとえば……

  • 出来上がった品物の品質は問題ないか?
  • 規格選別はしっかりとできているか?
  • 出荷する時期はどうか?
  • 売りやすい品物になっているか?
  • 流通するときに荷痛みしないように箱詰めできているか?

少し考えてみるだけでも、気にするべきことはたくさん思い浮かびますよね。

その中でも、出荷する側として、販売先が苦労しないこと、消費者が満足できることを大切にしなくてはいけません。「あのバイヤーさんが言っていた問題はこれで解決できるだろうか? 」といった細かい配慮・こだわりが、「待っている人」をつくる作物になります。

バイヤー・消費者が困っていることは、生産現場で少し工夫をすれば解決できることも少なくありません。しかしそういった問題は、生産している農家さんがバイヤー・消費者とつながっていないと見つけ出せないことの方が多いのです。

この3者のつながりが信頼を構築し、その作物の課題を共有することで、日々の農作業の中に解決の糸口はないかを考えることにつながっていきます。


「自分の産地の作物の強みを知っている農家」



皆さんは、自分の作っている作物の強みをどれほど理解していますか?

  • 気候を生かし、他産地が出荷できない時期に出荷できる
  • 特別な品種を栽培できる
  • 特別な栽培技術で品質を高くできる
  • 生産量が多く、スケールメリットが出せる
  • 産地の土質を生かした栽培ができる
  • 加工技術が優れている
  • 販売方法が独特でユーザーに寄り添っている

少なくとも2~3個は思いつくのではないでしょうか。

当時は、販売担当として生産者とバイヤーをつなぎ、ここでしかできない作物を作ることを目指していました。そしてさまざまな課題に直面し、それらを解決していくことで、生産から販売までの各過程で関係する人たちと「やりがい」を共有し、ブランド化することに成功した経験があります。

その中でも重要なのが、「作物の強みを理解しているか」ということでした。まず、作る農家さんがそれを理解していなければ、出来上がってくる作物に反映されることはありません。その次は販売手法ですが、こちらはセリ人・バイヤーと強みを共有し、エンドユーザーまで伝えないといけません。

他産地ではマネできない作物を作ることでその作物を「待っている人」を作れれば、「やりがい」にもつながります。そして、強みを生かした作物は「待っている人」が買い支えてくれて、相場に左右されない作物に成長するのです。


価格を自分で操作できる農家


私が出会ってきた一歩前を歩く農家さんたちは、自分の出す品物が適正な価格であるかどうかをいつも考えていました。

「生産者は良い作物を作るのが仕事」

それは間違いではありませんが、それだけでは儲かる農家にはなれません。なぜなら、生産者だけが儲かっても、販売業者が儲からなければ長続きはしないから。

適正価格を見つけ出し、その価格に見合うようにコストを抑えて儲けを生み出すことが、儲かる農家の手法です。どれだけ良いものを作っても、コストがかかりすぎては儲けが出なくなってしまいます。

これまでの経験上、
  • 作業を多くして人件費がかかりすぎる
  • 過剰包装で梱包費がかかりすぎる
  • 肥料を多くやりすぎる
  • 坪あたりの栽植密度を広く取りすぎてしまう
といった、良いものを作ろう・たくさん出荷しようとするあまりに、コスト度外視の経営で破綻する農家さんを見てきました。そういった農家さんは、やはり相場に左右されている人が多い傾向にあったように思います。

「ある年は他産地が潰れたので当たりの年だった。翌年はその儲けで規模を拡大したものの、今度は相場が下がって借金を返せない……」

これは、経営状態が悪くなる農家さんの“よくあるパターン”です。この悪いパターンに陥らないために、作物の強みを理解し、自ら価格を操作できる農家になる必要があります。


三方良しのビジネスモデルを理解することが儲かるための第一歩


農業というと、作物を作ることに目を向けがちですが、ビジネスの本質は“価値提供”にあります。

これは、あなたの作る作物が、手に取る人の課題・悩みを解決する、または、期待値以上に満足できる価値があるかどうかにかかっている、ということです。

「自分が作った作物はこんな強みがあるから、他とは違う価値を提供できる」

強みを理解することで効率よく価値を提供・伝えることができ、最終的に関わるすべての人が良くなることが“三方良しのビジネスモデル”です。

待ってくれる人に出会う

やりがいを生む

強みを理解できる

価格を操作できる


この連鎖こそ、農家が目指すべきビジョンではないでしょうか。ただ作ってJAに販売をまかせるのではなく、やりがいを生む人たちとつながってみませんか。

次回は、「小さな失敗をしない農家は儲けが遠のく? 」というお話をしたいと思います。

【連載】元JA職員が語る「JAとの付き合い方」
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WRITER LIST

  1. 槇 紗加
    1998年生まれ。日本女子大卒。レモン農家になるため、大学卒業直前に小田原に移住し修行を始める。在学中は、食べチョクなど数社でマーケティングや営業を経験。その経験を活かして、農園のHPを作ったりオンライン販売を強化したりしています。将来は、レモンサワー農園を開きたい。
  2. 田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
  3. さわちん
    2児の父。あるきっかけにより農業のイメージを変えたいと考え、16年間のサラリーマン生活にピリオドを打つことを決意。2020年春、家族で田舎に移住し、新規就農を目指す。自身が「移住×就農のモデルケース」となるために、いろんな方面へ向けて奮闘中。
  4. 福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  5. 窪田新之助
    農業ジャーナリスト。福岡県生まれ。日本経済新聞社が主催する農業とテクノロジーをテーマにしたグローバルイベント「AG/SUM(アグサム)」プロジェクトアドバイザー、ロボットビジネスを支援するNPO法人Robizyアドバイザー。著書に『日本発「ロボットAI農業」の凄い未来』『GDP 4%の日本農業は自動車産業を超える』(いずれも講談社)など。