地域の担い手として「農業で恩返し」を【コラム・沖貴雄の「PDCA農業で稼ぐ!」 第6回】

広島県北西部に位置する安芸太田町で、合同会社穴ファームOKIを経営している沖貴雄です。

新年が始まり早2カ月が過ぎてしまいました。寒も終わり暦の上では春になり、いよいよもう少しで農閑期から農繁期に突入ですね。

2014年に就農して、今年(2023年)で9年目になります。農業ではまだまだひよっこですが……、こうして今の自分があるのは多くの方々に支えられ協力していただいたおかげだと思っています。

決して自分の力だけで進んだわけではなく、農業のいろはを教えてくださった農家さんや就農するためにご尽力いただいた方、経営でぶち当たった課題に対応いただいた方などなど、思い起こせばたくさんの方のおかげで今があります。

そこで、第6回は「農業で恩返しを」というテーマで書いていこうと思います。

会社をさらに大きく! クラウドファンディングに挑戦


私は、会社を大きくすること、経営を発展させていくことは、今まで私に関わっていただいた方々にできる感謝・恩返しのひとつだと思っています。

そのために、2022年の新たな取り組みとして、広島県が実施しているアグリ・フードマネジメント講座「ひろしまファーマーズテーブル」を受講しました。この講座は、MBA教育を実践する県立広島大学大学院経営管理研究科(HBMS)が独自カリキュラムを開発し、広島県農林水産局と連携して実施するというものです。

そして、経営の現代の流れからマーケティングに至るまで深く学習し、2022年に取り組んだのがクラウドファンディングサービス「Makuake」への挑戦です。とうもろこしの新たな価値を生み出したいとの思いから、「スナックコーン」の応援購入を募ったところ、最終的にサポーターとして258人に参加いただき、目標金額20万円のところ101万6520円を集めることができました。

■Makuakeのプロジェクトページ
とうもろこしがおやつに大変身!その名も【スナックコーン】
https://www.makuake.com/project/anafarm-01/

1つの商品を通して、さまざまな視点から販売について考え、実践することができました。インターネットを活用した販売は初めてで戸惑う部分も大きかったですが、いい経験になりました。

こうしたことができたのも「ファーマーズテーブル」を受講する中でウェブサイト制作が得意な方に出会えたことや、敏腕講師陣のご指導のおかげであり、何よりサポートしてくださった方々のおかげです。

「Withコロナ」から「Afterコロナ」に変わろうとしている今、現代の流れにあった生産・販売方法を見つけていきたいと思います。



持続可能な農業への取り組みで、地域に「恩返し」を


会社と同じように、育ててもらった恩返しとして地域の農業も発展させていきたいと思っています。

これからの農業は国の進める「みどりの食料システム戦略」(以下、みどり戦略)にあるように、持続可能な農業に舵がとられています。地球規模での温室効果ガスの削減、気候変動の抑制のためにもとられるべき政策だと思いますし、昨今の資材や肥料の高騰、化学肥料や化学農薬の使用量低減の流れはとてもタイムリーであるなと感じます。持続可能な農業を実現するためにも、「みどり戦略」には農林水産業全体で取り組まなければなりません。

穴ファームOKIでは、2022年から鶏糞を利用しています。鶏糞と緑肥の利用により循環可能な耕畜連携で農業ができたらと思い、鶏糞を効率よく散布できるように散布機を購入しました。少しずつではありますが、環境負荷の少ない農業が展開できたらと考えています。

私どもの圃場があるのは中山間地域であり、高齢化・過疎化の進む地域は全国にも多くあり社会問題にもなっています。そんな中で奮闘している企業、組織、自治体は素晴らしいと思います。私がこの地にどれほど貢献できるかはわかりませんが、農業を通して今の風景をいつまでも守れたらなと思います。

さらに、安芸太田町では「特定地域づくり事業協同組合制度」が始まります。人口が急減している地域の事業者に、組合が雇用した職員を組合員へ派遣する制度です。穴ファームOKIも参画することで、町内の1つのギヤとして前に進んでいきたいです。


私が憧れて好きになった農業


振り返ってみると、祖父に連れられ小学生の頃からトラクターに乗り、家の農業に触れて畑で野菜作りを見てきました。その経験から農大、研修、先輩農家さんとの出会いを経て農業を仕事に選びましたが、経営しながら迷っていく中で、少しずつビジネスとしての農業になっていったように思います。

「努力した分だけ自分に返ってくる農業は魅力的で面白い!」という思いは、今でも持ち続けています。

穴ファームの「穴」の漢字を上下に分けると「ウ」「ハ」になります。農業を始めた時から持ち続けている“農業で恩返しをする”という精神を忘れず、農業でみんなを“ウハウハ”にできる会社にしていきます。

そして、これから就農していく人たちには、自分の経験を知ってもらい、同じような失敗をせずに地域の農業の担い手として各地で活躍していってもらえたらうれしいです。

最後に、一年にわたりこのコラムを読んでいただきありがとうございました。また、このような機会をいただくきっかけになった日本農業サポート研究所の福田浩一さん、SMART AGRIさんに感謝申し上げます。

またいつの日かお会いしましょう!



合同会社穴ファームOKI
https://anafarm.hp.peraichi.com/oki

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  1. 加藤拓
    加藤拓
    筑波大学大学院生命環境科学研究科にて博士課程を修了。在学時、火山噴火後に徐々に森が形成されていくにつれて土壌がどうやってできてくるのかについて研究し、修了後は茨城県農業総合センター農業研究所、帯広畜産大学での研究を経て、神戸大学、東京農業大学へ。農業を行う上で土壌をいかに科学的根拠に基づいて持続的に利用できるかに関心を持って研究を行っている。
  2. 槇 紗加
    槇 紗加
    1998年生まれ。日本女子大卒。レモン農家になるため、大学卒業直前に小田原に移住し修行を始める。在学中は、食べチョクなど数社でマーケティングや営業を経験。その経験を活かして、農園のHPを作ったりオンライン販売を強化したりしています。将来は、レモンサワー農園を開きたい。
  3. 沖貴雄
    沖貴雄
    1991年広島県安芸太田町生まれ。広島県立農業技術大学校卒業後、県内外の農家にて研修を受ける。2014年に安芸太田町で就農し2018年から合同会社穴ファームOKIを経営。ほうれんそうを主軸にスイートコーン、白菜、キャベツを生産。記録を分析し効率の良い経営を模索中。食卓にわくわくを地域にウハウハを目指し明るい農園をつくりたい。
  4. 田牧一郎
    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
  5. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
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