太陽光利用型植物工場「Veggie」による水耕栽培の実証実験がスタート

合同会社DMM.comとIoTを活用した農業を推進するグリーンリバーホールディングス株式会社は、埼玉県深谷市に設置が予定されている「移動可能な水耕栽培装置の実現性評価」を目的とした実証実験 「深谷PoC」の着工を2020年10月から開始した。

「深谷PoC」は、太陽光利用型の植物工場「Veggie」を活用した賃貸型の水耕栽培施設を指す。実証実験の期間は約2年間で「2021年1月からの本格稼働を目指す」という。

※「PoC(Proof of concept)」とは、「概念実証」を意味する言葉で、新たな概念やアイデアの実現可能性を示すための実証実験のことを指す。
<太陽光利用型植物工場「Veggie」>太陽光利用型植物工場「Veggie」

 

深谷市の「ディープバレーアグリテックアワード」を受賞


DMM.comは、動画配信やゲーム、 証券、 英会話、 アニメ、 プログラミングスクール、 3Dプリント、 エナジー、 フットボール、 オンラインサロンなど40を超える事業を展開する企業。

エナジー事業では、 自社ブランドの住宅用太陽光発電システムや住宅用蓄電池の販売ほか、太陽光発電関連部材の卸売業、 自社発電所(メガソーラー)の開発・運営、 太陽光発電所の保守など再生可能エネルギーを活用した事業を展開する。

 

一方、グリーンリバーホールディングスは、太陽光発電所の施工を行うグリーンリバー株式会社と独自開発の縦型水耕栽培装置(Bi-Grow)による次世代向けの農業事業を展開するグリーンラボ株式会社を傘下に置く企業グループ。

深谷市が2019年10月に開催した農業課題を解決する技術や事業プランを募るビジネスコンテスト「ディープバレーアグリテックアワード2019」では、プロダクト部門の最優秀賞に選出された。現在は、深谷市の農業課題を解決する「スマートシティ構想を見据えた新しい農業」の構築を進めている。

太陽光利用型の植物工場「Veggie」


「Veggie」は、グリーンリバーホールディングスが2016年に開発した移動型の農業用ハウス。
太陽光パネルのほか縦型水耕栽培装置(Bi-Grow)や養液管理装置、空調機等が搭載されている。20フィートの貨物コンテナとほぼ同じ大きさでトラック等での移動も可能なため、設置場所を選ぶことなく水耕栽培が行える。

深谷PoCが実証実験する5つの柱


「深谷PoC」では、以下の5つを柱に実証を展開していく予定という。

1.「賃貸型水耕栽培装置の可能性評価」

イニシャルコストが大きく、 導入が進まない水耕栽培装置や植物工場をサブスクリプション化することにより、 就農者増の可能性や副業モデルの可能性評価を行う。

2.「自家消費型再エネ利用の植物工場の実現性評価」

地産地消エネルギーを利用して 環境負荷の少ない持続可能な農業の実現性評価を行う。

3.「農福連携のスタートアップ支援」

農業を始めたい障がい者支援施設等を対象に、 大きな投資を必要としない新たな農福連携事業を開始するための評価を行う。

4.「狭小高効率の水耕栽培装置によるCo2削減量を計測して環境影響を評価」

センサーを設置することにより、Co2の消費量を計測して環境影響の評価を行う。

5.「その他」

継続性、 再現性の評価等を行う。

各評価の達成後には、「深谷PoCモデル」を全国の自治体に展開する方針で、 Agriculture(農業)」と「Work(労働)」と「Vacation(休暇)」を同時に実現する「アグリワーケーション」も推進したい考えを示している。


コロナ禍での新しい働き方や農業の副業化、 ワークライフバランス、 ダイバーシティの推進(ジェンダーレス・ 地方の優秀な人材・ 障がい者や特定求職者等の有効な活用)など、今後は「人的資源の流れが大都市から地方へと分散する」と言われている。

今回の実証実験は、グリーンリバーホールディングスが取り組むスマートシティ構想にDMM.comが賛同する形で実現したもの。「動産の保有など設備の管理についてはDMM.comが、栽培の実施についてはグリーンリバーホールディングス傘下の農業ベンチャーであるグリーンラボ株式会社ほか地元企業が担う」としている。


グリーンリバーホールディングス株式会社
https://www.greenriver-hd.co.jp/
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  1. 田牧一郎
    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
  2. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  3. 石坂晃
    石坂晃
    1970年生まれ。千葉大学園芸学部卒業後、九州某県の農業職公務員として野菜に関する普及指導活動や果樹に関する品種開発に従事する一方で、韓国語を独学で習得する(韓国語能力試験6級取得)。2023年に独立し、日本進出を志向する韓国企業・団体のコンサル等を行う一方、自身も韓国農業資材を輸入するビジネスを準備中。HP:https://sinkankokunogyo.blog/
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    川島礼二郎
    1973年神奈川県生まれ。筑波大学第二学群農林学類卒業。フリーラインスの編集ライターとして、テクノロジーをキーワードに、農業雑誌・自動車雑誌などで執筆・編集活動中。
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    堀口泰子
    栄養士、食アスリートシニアインストラクター、健康・食育シニアマスター。フィットネスクラブ専属栄養士を経て独立。アスリートの食事指導や栄養サポートの他、離乳食から介護予防まで食を通じて様々な食育活動を行う。料理家としても活動し、レシピ提案、商品開発も担う。食事は楽しく、気負わず継続できる食生活を伝えることを信条とする。スポーツの現場ではジュニアの育成、競技に向き合うための心と体の成長に注力している。HP:https://eiyoushiyakko.jimdofree.com/
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