宇宙と農業をつなぐ土地評価システムを開発した「株式会社 天地人」が法人化

2019年6月19日に宇宙ベンチャー企業として株式会社 天地人(東京都港区 代表取締役 桜庭康人)が設立された。

同社は、2018年11月19日に開催された宇宙ビジネスアイデアコンテスト「S-Booster(エスブースター) 2018」の受賞を機に法人化。


創立メンバーはJAXA職員と農業IoT分野に知見のある開発者で構成されており、宇宙航空研究開発機構JAXAの知的財産や知見を利用して事業を進める「JAXAベンチャー」として認定された。

独自の土地評価システムを開発


同社が開発した土地評価システムは、顧客の課題に応じ複数の衛星データや地上データを組み合わせた、ひとつのソリューション(土地評価マップ)を提案するという。

例えば、S-Booster 2018でプレゼンをした「ポテンシャル名産地 発掘プロジェクト」もその取り組みのひとつだ。

衛星から得られる降雨や地表面温度などの気象情報と、地形の3Dマップに代表される地形情報を複合的に分析。最終的には該当エリアで伝統的に栽培されている作物より、生産性の高い作物を見つけることを目的としたプロジェクトだった。

天地人の土地評価エンジンは、農業や漁業などの一次産業だけでなく、不動産、エネルギー、流通、旅行といった幅広い分野での応用が可能。

客観的なデータに基づき、顧客のスピーディな意思決定をサポートする。

同社は「最適な場所でビジネスを営めれば世界中の無駄が無くなり、人に優しく、環境に優しく、最適に暮らせる」という信念をもとに、事業を通じて「人類の文明活動を最適化する」ことを目標に掲げている。

ビジネスコンテスト「S-Booster」とは?


S-Booster(エスブースター)とは、優れた宇宙ビジネスアイデアの発掘を目的として2017年にスタートしたコンテストだ。

同コンテストでは、優秀な宇宙ビジネスアイデアに対して賞金やメンタリングなどで事業支援を行う。

2018年は、内閣府、JAXA(国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構)、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)、ANAホールディングス、大林組、スカパーJSAT、日本航空、ポーラ・オルビスホールディングス、ローソン、が実行委員会として名を連ねた。

天地人は同年、審査委員特別賞、ANAホールディングス賞、JAL賞の史上初となるトリプル受賞を果たしている。

「株式会社 天地人」概要


企業理念


宇宙は身近になった。人の目と同じ感覚で理解できる衛星写真は世界の姿を明らかにし、ビジネスの幅を広げた。しかし、もっともっと可能性がある。陸や海の温度、雨や雪の強さ、風や潮の流れ。人の目に見えない情報を衛星で知ることができる。もちろん、誰も住んでいない山奥でも良いし、地球の裏側でも良い。天地人は、これら「目に見えない情報」を独自開発の土地評価エンジンで解析することで、衛星のメリットを最大限活用しつつ、まだ誰も気付いていない土地の価値を明らかにする。価値を知れば、あらゆる活動を最適化できる。地球はもっと住みやすくなれる

会社概要

所在地:東京都港区芝公園1-1-1 住友不動産御成門タワー
代表者:代表取締役 桜庭康人
事業内容:衛星データを使った土地評価コンサル
HP:http://tenchijin.co.jp/

創立メンバー


百束(ひゃくそく)泰俊氏

JAXA主任研究開発員。GPM主衛星、いぶき2号衛星の全開発工程を経験。大規模システムのプロジェクトマネジメントとシステムズエンジニアリングを得意とする一方で、発明やビジネスアイデアを次々と生み出すデザイン思考型のエンジニア。株式会社天地人の設立メンバー。


繁田亮氏

元マイクロソフトプログラムマネージャー、現在、東京大学特任研究員。巧みなプログラミング技術と高度なフィールドワーク能力を融合させ、現場の課題を的確におさえた農業IoT技術研究を進める。S Booster2018では代表を務め、天地人ビジネスアイデアの礎を築く。株式会社天地人の設立メンバー。


高山泰一氏

衛星やドローンによるリモートセンシング画像の解析・分析が専門。現在は、東京大学空間情報科学研究センター研究員、および米国シリコンバレーのスタートアップに所属。三菱総合研究所で長年培った経験を生かしつつ、天地人サービスの開発を進める。株式会社天地人の設立メンバー。


河尻耕太郎氏

AIST主任研究員。機械学習(AI)と多入力多目的な複雑システムの最適化を専門とする。農業生産、エネルギー分野、環境問題等を複雑システムとしてとらえ、経済活動と持続可能な社会の構築の両立を目的とした研究を進める。株式会社天地人の設立メンバー。


桜庭康人氏

多様な人的ネットワークと、マインドスコープ株式会社、株式会社センスプラウト等の設立・事業拡大を通じて身につけた豊富な新規事業開発の経験を生かし、株式会社天地人の代表取締役を務める。農業IoTセンサーの開発経験もあり、ハードウェアからソフトウェアまでその知識は幅広く、天地人サービスをビジネス視点でデザインする。
SHARE

最新の記事をFacebook・メールで
簡単に読むことが出来ます。

RANKING

WRITER LIST

  1. 田牧一郎
    田牧一郎
    日本で15年間コメ作りに従事した後、アメリカに移り、精米事業、自分の名前をブランド化したコメを世界に販売。事業売却後、アメリカのコメ農家となる。同時に、種子会社・精米会社・流通業者に、生産・精米技術コンサルティングとして関わり、企業などの依頼で世界12カ国の良質米生産可能産地を訪問調査。現在は、「田牧ファームスジャパン」を設立し、直接播種やIoTを用いた稲作の実践や研究・開発を行っている。
  2. 福田浩一
    福田浩一
    東京農業大学農学部卒。博士(農業経済学)。大学卒業後、全国農業改良普及支援協会に在籍し、普及情報ネットワークの設計・運営、月刊誌「技術と普及」の編集などを担当(元情報部長)。2011年に株式会社日本農業サポート研究所を創業し、海外のICT利用の実証試験や農産物輸出などに関わった。主にスマート農業の実証試験やコンサルなどに携わっている。 HP:http://www.ijas.co.jp/
  3. 石坂晃
    石坂晃
    1970年生まれ。千葉大学園芸学部卒業後、九州某県の農業職公務員として野菜に関する普及指導活動や果樹に関する品種開発に従事する一方で、韓国語を独学で習得する(韓国語能力試験6級取得)。2023年に独立し、日本進出を志向する韓国企業・団体のコンサル等を行う一方、自身も韓国農業資材を輸入するビジネスを準備中。HP:https://sinkankokunogyo.blog/
  4. 川島礼二郎
    川島礼二郎
    1973年神奈川県生まれ。筑波大学第二学群農林学類卒業。フリーラインスの編集ライターとして、テクノロジーをキーワードに、農業雑誌・自動車雑誌などで執筆・編集活動中。
  5. 堀口泰子
    堀口泰子
    栄養士、食アスリートシニアインストラクター、健康・食育シニアマスター。フィットネスクラブ専属栄養士を経て独立。アスリートの食事指導や栄養サポートの他、離乳食から介護予防まで食を通じて様々な食育活動を行う。料理家としても活動し、レシピ提案、商品開発も担う。食事は楽しく、気負わず継続できる食生活を伝えることを信条とする。スポーツの現場ではジュニアの育成、競技に向き合うための心と体の成長に注力している。HP:https://eiyoushiyakko.jimdofree.com/
パックごはん定期便